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106話

さてさて、シリアスに突入したいけど‥‥‥入るまで苦労する。

「‥‥‥っ」


 ルースは目を覚ました。


 辺りは薄暗く、ボヤっとする頭がはっきりしていくにつれて、周囲の状況を理解した。


 


 鍾乳洞なのか、水滴がしたたり落ちる音がして、あちこちの壁からは様々な石の突起が生えており、人工的に設置されたらしい蝋燭の明かりがあり、何処かの洞窟内のような事は分かる。


 手足は椅子に固定されているようで、全く動かすこともできない。



(‥‥‥なんで、こうなった?)




 思い出すのは、寮へ帰ろうとして学園前で‥‥‥


「‥‥‥そうか、あの時何か薬をかがされたのか?」


 古典的というか、今どきそんな方法で人を気絶させるとは、流石にルースも予想外だった。


 いや、以前レリアと騒動に巻き込まれた際に、道具によって発生した催眠ガスのようなものをかがされたことはあったので、一般的な誘拐方法としては成立しているのだろうか?




「いや、それは流石に一般的な誘拐方法ではないと思うアルよ?」

「?」



 と、なにやら心を読んだのか、呆れたような声が返ってきた。



 その声の主の方を見ると、そこには先ほどまで見ていた夢の中の少女が、成長した姿の女性が立っていた。


 角を生やし、その手に持つのは不気味な色合いをした、既になんども見たことがあるからこそ‥‥‥



「‥‥‥フェイカー製の道具か」

「おや?案外あっさりわかるのでアルか?」

「いや、そんな色合いをしたものってそこにしかないだろうしね‥‥‥それに、何でこんなことをしているんだよ、晩餐会でもあった‥‥‥いや、後輩のミル?」

「っ‥‥‥ばれたでアルか」


 ルースの言葉に、一瞬彼女はたじろいだ。


 ルースとしては、人を覚えるのは実はあまり得意ではないのだが、それでもなんとなく印象に残る相手ならば、覚えているのだ。



 当てられたことに動揺したようだが、すぐにミルは平然とした態度に戻った。




「やっぱりミルなのか…‥‥思った以上に年齢を偽装してい、」


ごっ!!

「ぐがっ!?」

「‥‥‥捉えた側が言うのもなんだけど、ルース先輩、いや、ルース=ラルフ、それ女性に対してかなりNGな発言でアル」



 ルースが良い終わる前に、ミルはその手に持っていたフェイカー製の道具を、魔導書(グリモワール)に偽装していた名残なのか形背表紙の部分で、ルースを殴打した。



「ふぅ、それはそうとして、案外落ち着いているでアルな。暴れたり、無駄な抵抗をするかと思っていたのでアルが‥‥‥」

「いや、こういう誘拐されたような状態は2回目だし、抵抗できないなら無駄に動かないようにしているからね」

「そういうことで‥‥‥2回目?」






 それはともかくとして、このままでは話が進まない。


「まぁ、そのあたりは少々気になるけれども‥‥‥単刀直入に問おうでアル。ルース先ぱ、こほん、ルース、なぜここにお前を連れてきたか、分かるか?」


 真剣な表情になって、じっとルースを見るミル。


 その顔は、あの後輩だったはずの面影はなく、ただ冷徹になって見ているようである。


「‥‥‥そのフェイカー製の道具を持っている辺り、邪魔になりそうな俺の始末を、ここで行うためか」



 ミルの手許にある道具を見て、ルースはそう判断した。


 今まで意図しなかったというか、巻き込まれた形が多かったとはいえ、フェイカー製のものを色々と破壊していたのは自覚していた。


 ならば、そのフェイカーから自身を邪魔者と認定し、排除しようとする輩が出てもおかしくないと分かっていたのだ。


 ルースの返答に、ニヤリとミルは口角を上げた。


「その通りでもあるが、また違う目的もアル」

「違う目的?」

「‥‥‥ルース=ラルフ、お前は金色の魔導書(グリモワール)とかいう、今までにないタイプの魔導書(グリモワール)を所持しているのは、確認済みでアル。それに、我が組織の開発担当部が多大な犠牲を払い、開発したキメラなどの生物兵器などを破壊できるだけの力を持っていることも調査済みでアル」

「キメラ?‥‥‥ああ、どれかはわからないけど、心当たりがあるな」


 キメラと言えば、何かの合成して出来上がった怪物と思われる。


 ゆえに、該当するものとすれば‥‥‥先日のタイタニア、もしくはルンブル王国にあった秘密兵器だった奴が、それに該当するのかもしれない。


 もしくは、あの人間が飲んで合体し、大きなドロドロのディゾルブゴーレムになったやつも、それにあたるのだろう。




「それだけの力、ただ消すだけでは色々と惜しい‥‥‥ゆえに、ここで我がフェイカーの幹部でもある私が直々に引き込みする交渉を設けたのでアル」

「つまり、邪魔者を消すのではなく、取り入れようってか‥‥‥」

「そういう事でアル」


 ルースの言葉がその通りだというように、ミルはにっこりと笑った。



「本来であれば、反魔導書(グリモワール)組織でもあるこのフェイカーに、魔導書(グリモワール)所持者を迎え入れるのは色々とアウトだが…‥‥それでも、その力は我が組織でこそ大いに活かせると理解できるのでアル。幹部たちも納得であり、今すぐにでも了承すれば、温かく迎え入れるでアル!」


 そう告げるミル。



 その顔は、もはやあの後輩としての顔ではなく‥‥‥れっきとした、フェイカー側の人物だということがルースには感じ取れた。



「さあ?どうするでアル?」

「‥‥‥一つ聞きたい」

「ん?良いでアル」

「フェイカーの目的は、なんだ?目的も知らないような組織に誰が所属するんだ?」

「‥‥‥それもそうでアル。うん、就職先が全くの目的不明なのは良くないことでアル」


 ルースの質問に、ミルは納得しつつ、説明した。


「単純明快に言えば、我がフェイカーの目的は主に3つでアル!」


――――――――

1:魔導書(グリモワール)持ちも関係なく、全ての人が魔法を扱えるように、もしくは魔法を使えないようにする。

2:グレイモ王国の転覆。

3:フェイカーによる統一国家樹立及び、世界中に対して宣戦布告、侵略、配下に置く。

――――――――



「‥‥‥ん?3があるなら2とあまり変わらないんじゃない?」

「それは違うでアル!!」


 ルースの疑問に対して、突如としてミルは不機嫌そうな顔になった。


「3があるから関係ない?どうせ配下に置くなら関係ない?…‥‥それは全くの間違いでアル!!」






 ミルはそう叫びながら、何故フェイカーがその目的を3と同様に扱わないようにしているのかを、話し始めた。


 それは、その組織が出来た経緯でもあり、そして明かされていなかった王国の負の部分でもあった‥‥‥‥


‥‥‥ミルの口から語られるその目的の詳細。

それは、グレイモ王国が公表していない負の記録でもあった。

フェイカ―が滅亡させられたとされた20年前よりもさらにさかのぼって、話しが始まる‥‥‥

次回に続く!!


‥‥‥シリアスというかは苦手。少々緩和させております。

というか、これ書いていて思ったが、ミルって実年齢いくつだこれ?

「相当若作りを・・・・・」

ごすっ!!

「だからそれはデリカシーがないでアル!!」

「ないのかあるのかどっちだよ!?」

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