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105話

いつもこの前書きって何を書けば良いのか悩む。

あらすじ、近況報告、この話の内容のちょっとしたネタバレなど、毎回書いているけど中々安定しないなぁ。

「‥‥‥」


 休日、考え込みながらルースは都市内を歩いていた。


 魔導書(グリモワール)の言葉にあった、「人間」としての封印。



 それが無くなれば人間でなくなると、ほぼ断定して言われたようなものなのだが、どういうことなのか今一つ見当がつかなかったのだ。





 怪しいとすれば、ルースの両親が考えられた。


 父親不明、母はいるけど、収入源が村のバーの店長で成り立っているのが不思議であり、改めて考えてみれば結構とんでもない事である。



「‥‥‥というか、今まで真面目に考えなかったのも変な話だよなぁ」


 両親の過去の話とか、詳しい事を聞く機会はあったかもしれないのに、どれも行わず、自然とルースはその話題から目をそらしていた。


 だがしかし、今回の魔導書(グリモワール)の言葉によって、改めてその話題に向き合う必要性をルースは感じ取ったのである。


 手紙でのやり取りも可能だが、できることならば両親の口からはっきりと聞きたい。


 でも、どう考えても面倒事にしか思えないので、出来れば夏休みなどの時間がある時にでも聞きに行ってみようかと、ルースは思った。






…‥‥それはそうとして、今はもう一つ、別の問題があった。


「わざわざ休日なのに、私の買い物につき合わせてしまい本当にすいません、ルース先輩!」

「いや、別に良いよ。聞く限り、まだこの都市メルドランには不慣れなようだし、出来る限り協力はするって」


 目の前で買い物袋をいくつか手に持ったミルに対して、ルースはそう返答をした。



 実は本日、ミルがどうやらこの都市内で衣服などの買い物をしたかったようだが、未だに不慣れだったので誰かを誘っていこうと考えたそうだが、生憎悲しいことに、休日に誘えるような友達はルースたち以外にはまだできていなかったそうである。



 こういう時は、同じ女子のエルゼやレリアが先輩として一緒に行ってくれそうなものだが、どうも生憎彼女たちにも何か用事があったらしい。


 ついでにスアーンも聞いてみたが、同じく用事があったようで、結果として誘えるような相手としてはルースしかおらず、特に用もなかったので都市の案内も兼ねて買い物に付き合っているのだが‥‥


「デートじゃないけど、さっきから周囲の視線が痛いな‥‥‥」




 考えてみてほしい。


 休日、可愛い後輩と共に居る男子学生。


 買い物を楽しんでいるようで、何処か仲良さげな光景って‥‥‥‥確実に独身男性の方々に嫉妬されそうである。


 ちなみに、バトは今日はエルモア先生の元へ遊びに行った。


 なんでも、妖精に関しての詳しいことを話す代わりに、妖精のあこがれである精霊に関しての文献などを読み聞かせているそうなのだ。


 


 その為、本日はミルと二人っきりなのだが…‥視線が痛い。



「いや本当に、目力ってあるんだろうか‥‥‥」

「え?何か言いましたかルース先輩?」

「いや、何でもないよ」


 ミルが首をかしげて聞いてきたけど、彼女が原因で嫉妬の視線を当てられているとは言いたくはない。


 なんか気にしそうだし、先輩たるもの後輩に対しては堂々としておきたいからね。


…‥‥でも、後で魔法によって視線をごまかせるようなものがないか調べておこう。水や光魔法で屈折させて幻を見せることは可能だから、視線をごまかすぐらいできそうなものである。










 その背後の方で、一人のストーカー及び予備軍、ツッコミ兼ストッパー兼憂さ晴らし道具がいたことに、ルースは全く気が付かなかった。


「ぬぐぐぐ‥‥‥やはり、特訓中に感じていたことが当たっていそうよね」

「あのミルという後輩‥‥‥ルースに気がありそうだとは思っていたが、今のところは何とか無事か」

「あのー、俺っち帰ってい良いですかね?」

「「ダメ」」

「あ、はい」


 約一名が諦めつつ、彼女達はルースたちの背後を隠れてついていった。











「先輩、これでやっと目的の物が全部買えました!」


 満面の笑みで、買い物袋を掲げるミルに、ルースは少し笑った。


「ああ、ようやく全部そろったのか?」

「はい。‥‥‥まぁ、でもまさかお気に入りの筆記用具がこんなへんてこな店にあるとは思いませんでしたが‥‥」

「一応、前に見たことがあるから案内できたけど‥‥‥この店は日ごとに場所を変えるから、次からは自分で探したほうが良いぞ」

「え!?コツとかってありませんか!!」

「東西南北、時刻、天気から計算すれば見つけやすいそうだが‥‥‥まぁ、難しいそうだ」



 ミルの質問に、ルースはそう答えた。


 本日、彼女が購入した筆記用具の中に、都市内でもなかなか珍しい店にしかない物があったのである。


 その為、その店を探すのに時間をかけてしまい、時刻は昼近くになっていた。


「別のを使用する手段もありましたけど、お気に入りって手放したくないですからね。先輩も分かりませんか?」

「うーん、なんとなくは分かるかな」


 枕とか、扱いやすい筆記用具とかは確かに気に入ったもののほうが良いだろう、


 気持ちがわからないわけでもないので、ルースは同意した。



「っと、そういえばもうお昼時か。‥‥‥なぁ、よかったら適当な昼食をどこかの喫茶店で食べないか?」

「え?先輩のおごりですか?」

「‥‥‥図々しいところがあるけど、まあいいだろう」

「ルース先輩・・・・・割とはっきり言いますね」



 苦笑いをされつつ、ルースたちは適当な喫茶店に入った。


「ふぅ、歩き続けるとやっぱり疲れるなぁ」

「でも、あの学園長の特訓に比べれば楽ちんです」

「そうだよなぁ」


 なんとなくというか、ルースはミルと話があって、同意できることが多かった。



 感覚的には、レリアともふもふ会話が一致した時の用だろうか?



 運ばれてきたメニューを食しつつ、ふとミルが思いついたようにルースに顔を向けてきた。


「そういえば先輩」

「ん?なんだ?」

「前から聞きたかったことですけど、ルース先輩ってエルゼ先輩やレリア先輩と付き合っていたりするんでしょうか?」

「ぶっつ!!」


 その質問に対して、思わずルースは飲んでいたものを吹き出した。


「げほっ、ごほっ…‥‥い、いや全然付き合っていないな。友人以上、恋人未満って評価が正解と言えるかもしれないけどね」

「ふーん、なんか意外ですね。てっきり先輩のどちらかが付き合っているかと思ってましたよ」

「そんな風に見えるのかよ‥‥‥」

「ええ、ルース先輩って一応それなりに表立たず裏で持ててますからね」

「え?」


 それは初耳というか、ルースは知らなかった。


「そうなっているのか?」

「ええ、でもどうやらちょっと話しかけようとしたら、『絶対零度の視線がどこからか飛んできた』や、『物凄い軍勢に囲まれているような威圧が来る』などと言われているようですけどね」



‥‥‥どうしよう、なんか心当たりがあるんだが。


「ちなみに、スアーン先輩は対象外ですよ。一部の何やら腐った方々には人気のようですが‥‥」

「そうなのか‥‥‥なんかスアーンが哀れに思えたな」


 心の底から、何処か同情したくなった。



「でも、いきなり何でそんな質問をミルはしてきたんだ?」

「いえ、単に先輩方がどういう関係なのか、ちょっと知りたいなーって思っただけです。‥‥‥でも、そういうことなら、まぁ、うん」

「ん?どうしたんだ、ミル?」

「い、いえなんでもありません!」



 何かをつぶやき始めたので、ルースが尋ねると彼女は慌てて何もなかったようなしぐさを見せた。



「まぁ、聞きたいことは聞けたのでよかったです」


 そう言い、ミルは注文したスープを飲んだのであった。











 昼食も終わり、買い物も終わったので、一旦学園の寮へ帰還することにした。


「さてと、まだ半日はあるだろうけど、さっさと帰って昼寝したいなぁ」

「あははは、先輩って暇そうでしたけど、そういうのならば、なんか無理についてきてくれてしまったようで、すいませんでしたね」

「あ、いや、別に構わないってば。俺は単に親切でやってあげただけだからね」


 そう言いつつ、学園の敷地に入ろうとしたその時である。



「でも、そういう親切な先輩だからこそ、帰るときに油断するんですよ」

「‥‥‥え?」



 ミルがそうつぶやいたかと思うと、突然ルースは目の前が真っ暗になった。


「っ!?何だ!!」


 慌てて周囲をルースは見渡そうとして…‥‥何かがルースの口元に当てられた。


「もがっつ!?」


 少々柔らかいものを高等部に感じつつも、一気にルースの意識が失われていった。


「ぐっ…‥‥これは」

「先輩‥‥‥優しいですけど、甘いんですよ。…‥‥本当は、もう少し‥‥‥」



 最後にミルの声が聞こえ、ルースは気を失った。


 かくんと力なく倒れたルースを見て、ミルは‥‥‥いや、ミルだった人物はその体を軽々と肩に担いだ。




「…‥‥計画、最終段階へ遂行アル。次は‥‥‥」



 声も変わり、姿も変えるミル。


 それはルースたちより一学年下の後輩としての姿ではなく、成長し、頭に角が生えた本来の姿へ彼女は変貌した。



「‥‥‥ん?やはりいたアルね」


 ミルだった人物が振り向くと、向こうからすごい勢いで走ってきた二人が見えた。



「る、ルース君に何をしているのよぉぉぉぉぉぉ!!」

「姿を偽っていたのか!?いや、ルースに何をするんだお前はぁぁぁぁ!!」


 そうはっきりと叫んでいるのが聞き取れる。


 だが、ミルだった人物は口角を上げた。


「さようなら、エルゼ先輩、レリア先輩。後姿が見えないオマケの‥‥‥なんだっけ?名前を忘れた先輩。気が付くのが遅かったようでアル」


 エルゼたちがあと数メートルの距離にまで近づいてきたところで、ミルは懐からある道具を取り出した。


 それは、彼女の黒色の魔導書(グリモワール)に偽装していたもので、その黒いカバーを外すと、本来の何物ともいえない不気味な色になっていた。


「「なっ!?」」


 その道具に驚いたのか、エルゼたちに一瞬の隙が出たことを、彼女は逃さなかった。



「『ミニテレポート』」


 そう告げ、その魔導書(グリモワール)だったものが黒く輝いた次の瞬間、ルースごと彼女の姿はその場から消えた。



「「…‥‥!?」」


 驚愕し、素早くエルゼたちはルースやさっきの彼女の姿を探すが、周辺には見当たらない。



 まるで、煙のように、いや、影に溶け込むように、彼等は消えてしまったのであった‥‥‥‥







‥‥‥突如、牙を向けたミル。いや、ミルだった人物。

エルゼやレリアたちはルースの行方を捜すために、全力を尽くす。

一体、何が起きようとしているのか?

苦手なシリアスに入りつつ、次回に続く!!


いや本当に、シリアスって苦手。とっとといつもの日常へ帰りたいのに、中々帰らせてくれないのが辛い。でも、頑張ります。

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