101話
騒動の幕開けになりそうかな・・・・・
まぁ、最初は平和(?)にね。
春となり、周囲の気温がぽかぽかとして来てすごしやすくなってきたころ、学園の校庭でルースたちは学園長からの特訓を受けていた。
「『ライトランス』1000000本ノーック開始」
「「「絶対無理だよね!?」」」
しょっぱなというか、1年経過しても相変わらず地獄のような訓練を施してくるバルション学園長。
空にめがけて撃ちだされ、重力によって戻って来た大量の光の槍の雨からルースたちは必死に逃れていた。
「『アクアシールド』!!‥‥‥っ、屈折してきて余計によけにくいわね!!」
「『ファイヤボール』連弾で相殺!!って、これだけの数相手にできないなーーーーーー!!」
「『シャドーアクアガード』!!‥‥‥だめかっ!!闇と水の複合でも貫通してくるぞこれ!!」
‥‥‥正直言って、本気で鬼畜じみていた。
「こうなったら4属性複合!!水・闇・光・土で『フォースプロテクト』!!」
何とかバルション学園長が行った光の槍の群れを防ごうと、思い切ってルースは4属性の複合魔法に挑戦した。
今までは3属性までだったが、この春からようやく4属性の複合に挑戦できるようになったのである。
その為、今回はそれぞれの複合を活かし、新たな防御魔法をルースは生みだした。
水によって光を屈折させ、闇によって遮断し、光によって打ち消させ、土によって物理的にも防ぐ防御の魔法。
それぞれの魔法の属性を表す4色が混ざり合った防壁が顕現し、受け止め‥‥‥
バキィッツ!!
「って、無理かぁぁぁぁぁ!!」
‥‥‥無残に砕け散った。
まだまだ鍛錬が必要なようであり、経験不足ゆえに強度も不足していたのであろう。
砕かれた防壁の傍から、光の槍が押し寄せてくるのであった。
訓練終了後、ルースたちはまるでボロボロの雑巾のように地に伏せていた。
致命傷とか重傷はないものの、やはり無茶苦茶すぎる訓練ゆえに、満身創痍となったのである。
―――――皆、死体ミタイダヨ。
訓練を見ていたバトはそう感想を漏らしたが、ルースたちはぐったりと倒れたままである。
「ふぅ、中々成長はしーていーるけどまだまーだ甘いね。精進するべーきだよ」
汗をぬぐい、バルション学園長はそう告げたが‥‥‥これで甘いとなると、学園長はなんなんだとルースたちはツッコミを入れたくなった。
(こ、この学園長・・・・・いつか絶対倒す)
(というか、この人に勝てる日は来るかな?)
(どうしてこういう人が学園長なんてやっているんだ・・・・・しかもこれで自称「攻撃は苦手」なんだよな・・・・・)
何とか体力が回復し、ルースたちは立ち上がった。
「ほ、本気で死ぬかと思った‥‥」
「トラウマが追加されそうよね」
「いや、もう追加されたぞ。帝国に戻ったら兵士たちに炎バージョンでやってあげて、仲間を増やそうかな・・・・・」
「レリア、それはやってはいけないやつだ」
とにもかくにも、毎回これでは身が持たない。
いや、これでやっと1年は持っているのだから、むしろ良く持たせている方である。
「そもそもなぁ・・・・・何で訓練を受けていたんだっけ?」
「えっと、確かルース君が学園長に興味持たれたのがきっかけよね?あたしは途中で引き込まれていたのよね」
「私は自ら志願したのだが・・・・・そうか、ルースの場合は興味を持たれたからであって、自ら頼んだわけじゃないのか」
「そうだよ、ほぼムリヤリに強制的だったよ」
そもそもの話、この訓練を受けさせられたのは学園長に興味を持たれたからである。
入学当初の学園長の洗礼での自衛手段や、召喚魔法にて国滅ぼしのモンスター召喚を行い、そのせいで目を付けられ、こうして訓練を受けさせられたのだ。
「って、それじゃあ具体的な目標はないのか?私は自らを磨くためにだったが・・・・・」
「いや、あるようだ。俺の場合はこの力の制御ってところかな」
‥‥‥金色の魔導書は未だに未知の部分が多い。
ゆえに、その力を狙うような輩や、ルース自身が力に溺れぬように、あの学園長はルースに魔導書の扱い方などを叩き込んでいるのだ。
「それで、自衛手段を増やしたり、力の旨い使い方などを習っているようなものだけど‥‥‥効果があるから表立って文句も言えないんだよなぁ」
今まで様々な事件に遭遇し、生き残って来たのも、その訓練による成果である。
冷静な判断はもちろん、魔法発動の速度上昇や、身体能力の向上などプラスの面では大きく出ているのだ。
その代わり、毎回悲惨な訓練が当てられるのだが‥‥‥
「‥‥どうせなら、もう一人ぐらい生贄というか、分散役が欲しいよな」
「ああ、それは確かに言えているわね」
「一人なら二人、二人なら三人、三人なら四人のほうが、訓練の負担も分けられるからな・・・・・」
できれば今年の新入生で、誰かが学園長に目を付けられるか、もしくはレリアのように自らを鍛えるために志願する人が来て欲しいところである。
‥‥‥だがしかし、ルースたちは知らなかった。
その訓練の厳しさは噂で伝わっており、できるだけ関わらないように努力をしている新入生が多いということを。
友達とふざけ合っていても、目を付けられないように学園長が通りかかった瞬間、とっさに勉強会へ切り替えて話しかけられないようにしたり、もしくは鍛錬を自ら行って、学園長の手間はいらないとアピールするなど、様々な方法で裂けられていたのだ。
そのため、今年度は新たにこの学園長の訓練を受講する者はいないと思われていたのだが…‥‥どこにでも変わり者がいるのだと、ある日ルースたちは知った。
「すいません、先輩方」
「ん?」
ある放課後、訓練のために学園長の元へ向かう際、ルースたちは後方から声をかけられた。
ふりむけば、そこには一人の少女がいた。
やや褐色の肌で、明るい茶色の髪と中々可愛い顔立ちをしており、身長はエルゼたちよりもやや低めだが、レリア並みの胸部を保持しており、一瞬エルゼからものすごい嫉妬の闇の気配が出たようにルースは感じられた。
「ええっと・・・・・だれかな?」
「あ、すいません。私はこの春入学したての、黒色の魔導書を所持するミル=ウィンと申します」
ルースの問いかけに対して、礼儀正しくその少女は名乗った。
「黒色・・・・・確か、闇とか影とかの関係する力を与えるやつだっけか」
魔導書の中でも特殊な方であり、言ってみれば白色のと対をなすような存在でもある。
影の中に潜りこめたり、光を吸収したりなど、面白そうな力を持っているのだ。
「それで、何か用なのですか?」
エルゼがやや胸部に嫉妬している色を見せつつ、そう問いかける。
「実は、先輩方があの学園長の訓練を受けていると聞きまして、私も受けてみたいと思ったのですよ」
「本気か!?あの学園長の訓練は想像を絶するぞ!!」
その返答にレリアが思わず声を出し、ルースとレリアも同意して頷いた。
「ええ、構いません!!何やら楽しそうですし、面白そうですもん!!」
だが、そんなレリアの声にも関わらず、ミルという少女は目を輝かせてそう言い放った。
この時、ルースたちの脳内はそれぞれ計算され、そして同じ結果が導き出された。
(((・・・・・分散相手、見つけたかも)))
互いにアイコンタクトを取り、考えの一致を確かめ、この機会を逃さない方針へ切り替えた。
「そうか・・・・・ならばいっしょにやってみるか?」
「ええ、物は試しに体験してみるのもいい経験よね」
「先輩である私たちでできることなら、協力するからな」
「はい!お願いいたします!!」
ルースたちの言葉に目を輝かせてお礼を言うミル。
この後、学園長に話してみると、無事に体験させる許可を得ることができたのであった‥‥‥
ミルという少女が訓練に加わる。
ルースたちは自分たちの負担を分散できるチャンスと思い、歓迎した。
だがしかし、物事には何事も裏があって‥‥‥
次回に続く!!
‥‥‥口癖って、直そうとしてもなかなか難しいものである。そして、付けようとしても難しい。
ごまかすために、一体どれだけの努力が必要になるのだろうか?