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97話

前回からの続き

「‥‥‥ふぅ、ちょっとこれで安心できる位置かな」

―――――同意。



 少々修羅場に巻き込まれそうだったために、ルースとバトは少しエルゼたちから離れた場所に移動していた。


 自分が原因のような気がするけど、あの場に長く居座り続ける必要はあるのだろうか?いいや、ないだろう。



 誰だって命は惜しいし、厄介事は避けたいものである。


 気が付けば、どうもテラスに出ていたようであり、空を見上げれば満天の星空があった。



「うわぁ、こうやってまともに見るのは久し振りかもな‥‥‥」



 前世の地球の空とは正座も違うし、大気汚染などもないから物凄く綺麗な星空がはっきりと目に見える。



「バト、ほら空を見てごらんよ。結構綺麗で‥‥‥バト?」

―――――スヤァ・・・・・スピィ。



 いつのまにか、彼女はポケットの中で眠っていた。


 どうもこういう場で結構疲れたようであり、あの修羅場空間からの脱出で気が緩み、眠気に誘われたのだろう。


 そっと起こさないように気を使いつつ、ルースは空を見上げていた時であった。



「‥‥‥ほぅ、珍しい顔がいるアル」

「ん?」


 ふと気が付けば、誰かが同じようにテラスに立っていた。


 この晩餐会の出席者のようだが、どこの人かは皆目見当も付かない。


 

 チャイナドレスのような衣装を着ており、頭には何やら角のようなものがあり、ちょっと褐色肌である。


 その特徴を見て、ルースは目の前にいる人物が人間ではないことを理解した。


「なるほど、魔族か」



 この世界には人間、モンスター、そして魔族で大体成り立っている。


 目の前にいるのは少女らしいけど、どうも魔族の「鬼族」であろう。


――――――――――――

「鬼族」

魔族の中でもドワーフよりもさらに力が強いとされる種族。

モンスターにオーガというものがあるが、それとくくられるのを嫌っており、酒豪としても有名である。

褐色肌、赤みを帯びた肌、青白い肌、ヌルヌル肌と、様々な見た目に分かれるので、さらに細かな分類がある。

――――――――――――



「ふむ、その通りだが‥‥‥特に驚くようなそぶりを見せないアルな。大抵の初対面の奴らは一瞬ひるむものなのにアル」

「いやまぁ、それなりに驚く人生があったからね‥‥‥」


 金色の魔導書(グリモワール)がでたり、謎の液体事件だったり、国滅ぼしのモンスターなどと、ここまでに結構濃い日常だったので、驚こうにも驚けないのである。



 というか、知り合いに魔族がいるし、差別とかも特にないからそもそも驚きようがないんだけどね。


―――――

「へっくし!!」

【おや?エルモア風邪かのぅ?】

「いや、そんなはずはないと思うがな‥」

―――――


「くくく、そんなに驚く人生があるというとは、中々面白い奴でアル」


 ルースの返答のどこに壺があったのかわからないが、笑う鬼族の少女。


「ま、このままいても何やら修羅がやってきそうだし、ちょっと退散するでアル。もし覚えていたら、その時は名乗ろうでアル」


 そう言いながら、その鬼族の少女は晩餐会会場の中へ戻っていき、その姿は溶け込んだ。


・・・・・一体何者だったのかはわからないが、まぁ、そう気にすることではないだろう。



 そう思いながら、そろそろ修羅場が終わったかなとルースは会場内へ戻るのであった。














‥‥‥そして晩餐会が閉会となり、貴族たちが各地の領地へ戻る中、とある馬車の中ではルースが会った鬼族の少女が不敵な笑みをたたえていた。


「‥‥‥あれが、金色の魔導書(グリモワール)の持ち主でアルか」


 ルースの様子を思い出しながら、考える謎の少女。


「特に変わったところは無さそうだが、どうも妙な気配しか感じないでアル。あれはうかつに手を出せばまずいものであろうし‥‥‥暫くは我が組織の活動も控えさせようでアル」



 くっくっくと笑いつつ、その馬車は王城から離れた場所で姿を変える。


 一見普通の馬車だったはずだが、あるところを先にその外見が変貌し、言い現わしができないような不気味な色の馬車となり、そのまま陰に溶け込むように消えていった。



 ルースは知らなかった。


 その鬼族の少女は実は晩餐会会場に招待された貴族ではなく、警備の隙間をかいくぐっていつの間にか紛れ込んでいたにすぎない者だったことを。


 そして、自身がどの様な存在が見定めされ、今後の活動を考えるために少し探りを入れられていたことも。


「とはいえ、あれだけの力は逃すには惜しいアル。どうにかして、我が組織に取り込めないアルか・・・・・」



 その最後のつぶやきも消え、その場から馬車の姿は消え失せた。



 どうも、今回の事で目を完全に付けられたようだが、ルースがそれを知るのはしばらく後になるのであった…‥‥


・・・・・ようやくというか、明確な何かが現れたようだ。

今までは結果を見るだけに過ぎなかったが、その結果に影響を与える存在を無視できなくなったのだろうか。

少々不穏な雰囲気を残しつつも、次回に続く!!


‥‥‥というか、今まで組織名だけで幹部とかが特に出てきたわけじゃなかったからな。名前もない商人とかならあったけど、やはりようやくまともな悪役が出てきたようだ。

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