8話
本日2話目!
少々短めかな。
モフモフ要員をルースが獲得してから数日後、いよいよバルスト村から離れて、このグレイモ王国の育成機関とやらにルースたちが向かう当日となった。
この日、村には大きな馬車が停車し、それに乗って今回の叡智の儀式によって魔導書を手に入れた者たちは育成機関へと向かう。
「正式名称はグリモワール学園‥‥‥そのままだな」
「まぁ、単純明快なほうが分かりやすいらしいからね。ちょっとお父様に聞いてみたことがあったけれども、設立当時は200以上の候補名があったそうなのよ」
国の育成機関の正式名称を聞いたルースのつぶやきに、エルゼがちょっとした雑学を言った。
「でも、200以上のある候補で審査を重ねた結果、その学園名になったそうなのよね。最終的な決定理由としては、当時の初代学園長があみだくじで決めたそうよ」
(・・・・いいのかそんな決め方で)
そうルースは思ったが、口には出さなかった。
ちなみに、この時同じように話を聞いていた同乗者たちも同じ思いになったのであった。
この世界には、一応マジックアイテムと呼ばれる不思議な道具があるようで、その中には自動車に似たようなものもあるらしい。
ただ、非常に高価なものだそうで、一般的な移動手段は徒歩か馬のモンスターになるようだ。
中には、魔導書にある召喚魔法で呼びだしたモンスターに引かせるものもあるようで、今回ルースたちが乗っている大人数用の馬車もその一つらしい。
「‥‥‥にしても、大型馬車みたいなものなのに、牽引しているのが滅茶苦茶小さい鼠のモンスターなのは、すごい心が痛むな」
「『マッチョマウス』というモンスターらしいわよ。親指ほどのサイズなのに、力は1000馬力以上あるそうね」
‥‥‥人は見た目に寄らないという言葉があるけど、モンスターにも同様の言葉がありそうだ。
というか、あの小さな体のどこにそれだけの力があるのか気になる。どう考えてもブレーキをかける時とかに質量の問題とかが起きそうなものなのに、ものともせずに動けるのはすごいことではないだろうか。
しかし、馬車の揺れはどうにかならないものか…‥‥スプリングとか、工夫はできるんだろうけど現状試すことができないし、機会があればなぁ。
「すごいなあのマッチョマウス‥‥‥手に入れられればいろいろと役に立ちそうなものだけどなあ」
「無理無理、召喚するモンスターって当たり外れが大きいらしいよ?準備もかなりかかるらしいしさ」
「むしろ、魔法で移動するやつもあるそうだから、個人で利用するならそっちの方がお手軽そうだしね」
マッチョマウスを見て、同乗者たちの会話は召喚やら別の方法を模索する議論になってきているようだ。
ルースも混じりたいが、がっちりとエルゼが服をつかんでいるので体を動かせないだろう。
‥‥‥というか、ちょっと距離を取られているんだよね。
主にエルゼが放つ謎の威圧感に当てられておびえている人からね。‥‥‥エルゼって本当に公爵令嬢でもあるんだよね?
その疑問はあるのだが、口に出すのは恐ろしい。
ルースはとりあえず、その恐怖を消すためにたわいもない面白そうな会話をエルゼとするのであった。
‥‥‥ちょっと周囲から哀れみの視線を向けられているけど、同情されているのかな。
ガタゴトっと馬車は揺れて学園へ目指す。
魔導書の扱いがうまくなれば、もしかしたら移動用でいいものを使用できるようになるかもしれない。
そう考えると、なんとなくこれからが楽しみになるルースであった。
「‥‥‥どうせなら、二人だけの移動方法もあればいいのに」
ぽつりと聞こえたエルゼの声は聞かなかったことにしよう。内容としてはまともそうだけど、その中身を深く考えるとどうしてもろくでもないことしか考えられない‥‥‥
次回から、いよいよ学園へ!!