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人は外見で判断したらダメ絶対





 「お、お前……………………」


 体を起こして、戸口のところで仁王立ちする少女を見た。未だに赤い泣き腫らした目元が、彼女は俺が助けた少女だという何よりの証拠だった。

 その隣にはそいつの父っぽいやつが立っていた。


 「こ、これは、アンドレアスさん、娘さんは見つかったのですね〜」


 その男に、校長室から職員室を覗き込んでいたバーコードハゲ、もとい校長が手でごまを擦りながら内股で擦り寄ってきた。

 もう色々と気持ち悪い。

 でも、擦り寄られた男はまるで嫌な顔もせずに応対する。

 てか、海外の俳優のようなナイスミドルで、どこから見ても欠点のつけようがないイケメンだった。


 「ハイ。オカゲサマデKatharina(キャサリーナ)ハブジミツカリマシタ」


 ただ、日本語がかなりカタコトで、英語のところだけはすごい流暢だった。


 「それは、それは、私達も喜悦とするところですぅ〜」

 「パパっ、それはどうでもいいのっ‼︎ あの人が私を助けてくれたのっ、聞こえなかった‼︎」


 自分の言葉を無視して、気持ち悪いおっさんと話し出した父の袖を引っ張った金髪少女が俺を指差しながら言った。


 「マダイッテイルノカイ、Katharina。truck(トラック)二ヒカレテ、no injury(無傷)ノハズガナイジャナイカ」

 「でも、そうなのっ‼︎ あの人が私を救ってくれたのっ‼︎」


 なんだか平行線を辿りそうな口論が始まり、その場にいた教員たちはどうしようもなく所在なさげにその結末を眺めることしかできなかった。

 それには俺に掴みかかっている花柳も含まれていて、俺の刑の執行はその結論が出るまで保留されたらしい。


 「信じてくれなきゃ、パパ嫌いになるよっ‼︎」


 何度か言い合ってついに業を煮やした少女が必殺技っぽいセリフを吐いた。


 「Ohっ‼︎‼︎ ワカッタッ‼︎ Katharinaっ‼︎ ワタシガワルカッタッ‼︎」


 効果抜群のようだった。

 いい年したナイスミドルといい年した美少女の口論とは到底思えなかったが、それでも絵になるのだから神のもとの平等を説くどこかの宗教を弾圧したくなる。


 「ということですから、その人を離してくださいっ」


 勝利した少女が俺に馬乗りになったまま呆然とする花柳────ん、なんか字面から犯罪の匂いがするぞ?────に、ズビシッ、と指を指して言った。


 「お、おう」


 生徒(?)に指図されているにもかかわらず、ジェットコースターのような展開に振り回されて混乱しているようである花柳は素直に俺の上からどいた。


 「そして、彼に謝ってください。彼は私を命をとして救ってくれました。そんな褒め称えられるべき行動をした彼が嘘をついていると決めつけた上に暴力まで振るおうとしました。それが、果たして子供を教える立場にある人の行為でしょうか」


 そしたら、さっき娘の強権を使って正論を言っていた父を負かしたことなど忘れたように美少女、キャサリーナ、が理路整然と畳み掛けた。


 「わ、わかった。な、なんか、すまんな」

 「い、いや、別に、構いませんよ。き、気にしてませんし、俺も悪かったですから」


 しかし、なぜかよくわからないがそれに従って花柳と俺はお互いに決まり悪く謝りあった。


 「うんっ、じゃあ、パパも謝るっ」 


 それに満足してように頷くと、今度は父に謝ることを促した。

 いや、もうやめて。

 気まずいから。


 「ワ、ワカッタヨ。Boy(ボーイ)、ウタガッテワルカッタ。ナカナオリノhug(ハグ)ヲシヨウ」

 「え、いや、結構ですよ。その気持ちだけで十分です」


 娘の命により、キラキラとした白い歯を見せながら笑うイケメンの放つフツメンやブサメンにしか効かない不可視の光線にやられた俺は及び腰で断るが、


 「NoNo,boy! シナイト、ワタシガKatharinaにキラワレテシマウ」


 と言って、ずいずい寄ってくる。

 普通に怖いんだけど。

 てか、教員どもも我関せずみたいに突っ立ってないでなんかしてくれ。

 これだから閉鎖的な日本人はっ。


 「チョットダケダカラ」

 「わ、わかりました。ちょっとだけですよ」


 提示されたよくわからない条件を飲むと、ダンディさん(仮称)が腕を広げた。

 ………………………………うん?

 俺から行けと?

 ハグ初心者だぞ。

 だけど、ダンディさんがずっと向けてくる笑顔が怖くて結局おずおずとハグをする。

 すると、なんだか力を込めて抱きしめられた。

 痛くはないんだが、少し強いんじゃないのかと思うぐらいだ。

 が、その訳もすぐにわかった。


 「?」

 「テメェ、眉間に風穴開けられたくなかったら、キャサリーナに手を出すんじゃねえぞ」

 「っ‼︎‼︎」


 ええええええええええええええええええええ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎

 ちょっと待てっ‼︎‼︎‼︎ 今の何だよ‼︎‼︎‼︎

 すげえ別人だったぞっ‼︎‼︎‼︎

 すっげえ流暢だったぞっ‼︎‼︎‼︎


 「コレデイイデスカ」


 と、カタコトで言いながら、ダンディさんは何事もなかったように俺から離れるとキャサリーナに近寄っていった。

 お前普通に日本語話せるだろっ‼︎‼︎

 変貌ぶりが怖すぎるんだよっ‼︎‼︎


 「うん。じゃあ……………………そういえばここに何しに来たんでしたっけ」


 しかし、俺はキャサリーナが言った言葉にずっこけざるを得なかった。

 キャサリーナの発言と同時に、一時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。


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