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暗黒街のヒーロー -A Tear shines in the Darkness city.-  作者: 三葉エイジ
第六節 - 太陽は闇に輝く -
84/126

078 すべてはこの日のために:12


EPISODE 078 「死神は処刑台に舞う ACT:5」




 ローズベリーの放った薙ぎ払いは、ファイアストームと違って殺害を目的としてはいない一撃だった。それでも神々の知恵と生命の実の二つを口にした少女の繰り出す蔓のムチの一撃と、その先端についたジェラルミンシールドの質量は非常に強烈で、一撃で祈り手三人が骨を折られ、ノックアウトされた。

 死神の一撃と比較して慈悲が多く残されていたが、それでもあまり加減はできなかったし、殺したくはなくとも、特別加減をしたい気分でもあまりなかった。



 同時に、ファイアストームの左腕マグナム機構から必殺の.454カスール弾が放たれた。ミートメイカーが大鉈で受け止めるも、バケットヘルムのホーリーサークルで弱体状態を中和されたカスール砲の威力の威力は凄まじく、到底、ローズベリーとの殴り合いで消耗したミートメイカー如きの受け止め切れる代物ではなかった。


 多くの少女の命……いいや、尊厳を踏みにじった忌まわしき大鉈が圧し折れた。更にミートメイカーの体表を膜のように覆うエーテルフィールドを割り砕き、彼女の右乳房をズタズタに引き裂き、その奥にある肺に突き刺さり……そこでようやく弾丸は止まった。


「智里くん!?」

 ベルゼロスの残虐な瞳に僅かな狼狽が生まれた。雷光はローズベリーを追った。


 空中に在ったミートメイカーは壁に激突し、受け身さえもとれないままグシャリと転落した。着地に失敗して彼女の手の指の骨が折れた。

 ファイアストームはカスール砲を格納し、ザウエルピストルを向けた。息の根を完全に止めるために。


 ベルゼロスが飛びかかりのパンチを放った。ファイアストームは首を動かして拳を躱し、そこに腕を落として敵の右肘の破壊を狙う。ベルゼロスは膝蹴りと同時に左手を差し込む。死神の振り下ろしを防ぎながら、自身の右腕を引き抜く。


 ファイアストームも膝蹴りで応え、着地したベルゼロスの脇腹を狙う。ベルゼロスがついに死神の攻撃を受けた。ウグイス色のエーテルフィールドが膝蹴りを受け止める。

 ファイアストームは続けて右の中段突きを放つ。命中し下がらせる。間髪入れず左手に持ったザウエルピストルを連射! ベルゼロスは湾曲する被弾予測光の数々を見る。


 ベルゼロスは音速で飛来するエーテル弾を避け、ステップで後退しながら掴み、あるいは素手で側面から弾いて逸らす! パリィ! パリィ! パリィ! ザウエル連射に織り交ぜた左腕カスール砲もブリッジ回避! ……強敵! だが右のザウエルも引き抜き弾幕は更に激しさを増す! 回避、パリィ、回避……受け止め切れない! ファイアストームが左ザウエルの弾丸を撃ち尽すまでに四発ほどの被弾を許してしまった。


 腿を浅く裂きながらも、ベルゼロスは飛びこみ前転からの超低空ジャンピングミドルキックを放つ。死神のボディーアーマー越しにも衝撃が伝わり、ダメージによって下がる。そこでようやく死神の猛攻は一時途切れた。




 ステージ上ではローズベリーと雷光が戦う。死神に左腕を破壊されても尚、雷光は死に物狂いの形相で攻める。

 必殺、雷光放射! 日本刀を触媒にして放たれる拡散電撃がローズベリーを襲う! 彼女は腕をクロスさせ、白色のエーテルフィールドによって耐える! 蔓のバンテージが焦げ付く。ローズベリーは背中から蔓を伸ばして反撃! 蔓に巻き付かせたシールドで直接殴りに行く。


「うらぁッ!」

 雷光はヤクザ・フロントキックでシールドを跳ね返す! 雷光は片手で刃を振るう、刃から雷の斬撃波が発生し、飛翔する。雷撃波がシールドを掴んでいた背中の蔓を捉え切り落とす。ローズベリーはシールドを諦め、前方回転で斬撃波と刃を潜り抜る。肉薄!


(今!)

 ローズベリーの髪が超常の力によって白銀に染まってゆく、そして放つ右上段突き! ローズベリーが吼えた。拳は雷光の左顎に突き刺さり……今度は彼のエーテルフィールドを貫き、その拳を届かせた! 雷光が吹き飛ばされる。


「グウウッ……」

 雷光が刀をステージに突き刺しながら立ち上がる。息は荒く満身創痍。ローズベリーは残心を決め、弧を描くようにしてじりじりと歩み寄る。彼女の拳に巻いた蔓のボクシング・バンテージは、電撃によって負ったダメージを修復再生。手の甲には野茨の花が咲き、白い超常の花びらが幻想的に舞う――。


 出血とダメージで調子を落としてゆく雷光に対し、ローズベリーの調子はどんどん上がっている。既に彼女が優勢の状況だった。




 ローズベリーら二人を苦戦させた敵の祈り手部隊は全滅。呪歌による弱体は中断。魔術結界分の弱体化もバケットヘルムの使用するホーリーサークルの恩恵によって中和。ミートメイカーは戦闘不能、雷光も満身創痍でいつ倒れてもおかしくはない。ベルゼロスと包囲部隊が死神に挑むも、包囲部隊は一人、また一人とその命を無慈悲に刈り取られ、数はもう多くない。



――☘


「ハアッ!」

 ヒートウェイブが人差し指と親指を立て、両手を突き出すと刃のような火炎衝撃波が飛んでゆく。バケットヘルムはその装備からは想像もつかぬ跳躍力を見せ、警備兵の頭を踏み台にして更に跳躍! 攻撃を躱しながら真っすぐ三基目、最後の機銃へと走り、ロングソードの刃を叩きこむ!


 目を凝らして透明化ヘリの所在を探り、機銃を放っていたガンナー警備兵ごと、機銃を破壊! 防空用の機銃、全滅!


 ヒートウェイブはバケットヘルムを追う! 手から火炎波を放つも、バケットヘルムは盾でガード! そのまま突進! 体当たりでヒートウェイブの身体を弾き、背負った消火器のホースを手に取る。

 (アンチ) 発火能力(パイロキネシス)超能力者(サイキッカー) 鎮圧用特殊消火剤、噴射!!!


「ぬおおッ!?」

 ヒートウェイブが悶える。白い消火剤にまみれると、彼は肉体に脱力と力の減退を覚えた。効果アリ!

「コイツの性能は年明けに上司が実証済みでな!」



 ――無論、ハンムラビ科学チームお手製の特殊消火剤といえども、超能力者(サイキッカー)の力を完全に抑えるほどのものではない。


 だが消火剤を吹き付けられるという事は、それ自体が火を操る発火能力者に対するいわば精神的な征服行為(マウンティング)であり、その心理的影響は彼らのサイキックの出力に想像以上の悪影響を及ぼす。


 精神的な優位に立つ事は、超能力者(サイキッカー)同士が行う魔術戦においてその勝敗と生死を分かつ重要な要素なのだ。




「……貰った!」

 バケットヘルムが自身の武器であるロングソードで敵を突いた。数センチ剣先が刺さるもエーテルフィールドが機能し、まだ敵の心臓を突き破らない。


 ヒートウェイブが至近距離から火炎攻撃を放つ! バケットヘルムを火に包むものの、エーテルフィールドの防御、何より呪いの力の込められた消火剤の悪影響で威力も落ち、下がらせる事ができない!


 バケットヘルムは燃えたままロングソードを袈裟に振るう! 今度は深い! エーテルフィールドを突き破ってヒートウェイブの胴体を刃が裂いた。


 後退し片膝と片手を地に付けるヒートウェイブ。バケットヘルムは炎を払うようにムーンサルト跳躍すると、残心を決めながら消火剤を自身に噴射し鎮火させる。

 相手こそ限定するものの、発火能力者の弱体と、彼らから受ける発火ダメージを抑える優れものだ。




 屋上での戦いはもう、決着が近かった。世界最強の魔術結社サン・ハンムラビ・ソサエティの保有する超能力者(サイキッカー)戦力は、魔術知識も訓練も不十分な、この程度の犯罪者崩れには敗れない。



『制空権確保。エーテル濃度の低下も確認。ハニービー1、ハニービー2、攻撃せよ。ハニービー3突入のための血路を開け』

『ハニービー1了解』『ハニービー2了解』


 ミラ8号が号令を放つと、二機の攻撃ヘリが透明化を解除し、その姿を東京の夜空に露わにした。ヘリの一機は建物側面へと降下、もう一機はヘリポート向けてチェーンガンの火を噴いた。


 ヒートウェイブの身体を白い被弾予測光の風が貫こうとしているのがわかった。彼は全身の力を振り絞って、立ち上がった。

 アパッチヘリが腹に抱えるM230チェーンガンの、毎分600発以上吐きだされる30ミリ機関砲の威力と速度がどうしたものか。生命の樹の実を喰らい、人間の限界を越えた超越者(オーバーマン)の身体能力と異常発達した六感のすべてを駆使すればその程度、避けられない代物ではない。



 チェーンガンの殺人弾丸の暴風が向かってくる。魔術結界と共鳴する魔女の呪いが薄い紫色の膜となって、弾丸の速度を緩める。何発かは虚空へと消える。だが――祈り手が(たお)れ、結界を強める者が不在となった状況で、ホテルに張られた結界の能力では完全に死の雨を阻止できない。



 ヒートウェイブが走り出す。走り出したその時、彼の眼前に赤い物体が目に入った。

「なんで消火器にホースがついてるか知ってるか?」

 消火器がヒートウェイブの顔面に激突。足が止まった――――。

「振り回して、殴りつけて、あとは火元に向かって投げつけるためだって、俺は訓練で教わったぜ」



 そして、バケットヘルムは死にゆく戦士に短い別れを送った。

「じゃあな」

「しまっ――」

 アパッチのチェーンガンがヒートウェイブの身体を捉えた。破滅的な30ミリ機関砲が、神々の力を手にする半神の五体を破断し、貫き、その座から引きずり下ろした――――。





EPISODE「死神は処刑台に舞う ACT:6」へ続く。

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