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三年間のあらまし

 ――異世界の扉を開ける――


 そんな夢物語はファンタジー映画や小説に任せておけばよろしい。

 わたしはその事を十五歳で悟った。それまでの人生で日本……いや地球からある日突然放り出されるなんて想像してもみなかったんだけど。

 

 それこそ映画や小説のフィクションだったら、異世界へ行ってしまった主人公には数奇な運命が待ち構えていたりするものだ。

 世界を救う伝説の勇者になってみたり、王様になってくれって頼まれてみたり、実はこっちの世界の産まれだったんだけどとある事情で地球に飛ばされててなんやかんや。

 つまり、異世界に飛ばされる理由が明確にあるものだと思う。

 

 だけどわたしには無かったんだ残念な事に。

 いや別に異世界に行きたいなんて思った事一度たりとも無かったから残念でもなんでもないんだけど。

 

 あれは高校に入学して間もない頃。学校から帰宅途中に道を普通に歩いていたらいきなり周囲が見覚えのない景色に早変わりした。

 「はえ?」なんてぽかーんと口を開けて呆然としていると、通行人の皆様がざわめきたつ。

 石畳の通路、煉瓦や土壁で造られた建物、所々に露店が立ち並ぶ。異国の雰囲気漂う街並みにセーラー服のわたしはとても浮いていた。

 それだけが原因ではないのだけど、一目でこの街の、この世界の住人ではないと見抜かれる外見をわたしはしていた。

 

 何が起こったのか分らなかったわたしがオロオロとしている間に誰かが通報したらしく、すぐに警邏隊が走って駆けつけてくる事態に発展した。

 警棒を提げた数名がわたし目掛けて走ってくるのに驚いてパニックを起こし、大絶叫しながら一目散に逃げた。

 

 人生で一番一生懸命走って逃げた先は、これまた運の悪い事に治安が最悪のスラム街で。

 わたしはすぐにスラム街のガラの悪いのにとっ捕まった。

 そいつ等はブローカーという裏社会に生きる奴等で、わたしは首輪と足枷をされてケージに入れられた。

 

 気分的には保健所に入れられた野良犬だ。

 たまに様子を見に来る奴等が怖くてケージの端っこでずっと縮こまっていた。

 

 なにやら闇オークションの商品にされていたらしいわたしは暴力は振るわれなかったものの、平気で食事は抜かれるわ乱暴に扱われるわ服は破かれるわで、正直この時のことは思い出したくない。

 この先に待ち受ける未来なんて、どう転んだって生き地獄しか予想できなかった。死んでしまいたいのに舌を噛み切る勇気も無くて、ただただ絶望するだけの日々だった。

 

 オークションの目玉商品として出されたわたしを競り落としたのは、多数の国の王族も御用達の商人だった。

 

 彼はわたしを屋敷に連れて帰ると、風呂に放り込んで侍女たちを使いつるっつるに隅から隅までわたしを綺麗にして、食事を与えた。

 

 そこからは怒涛の毎日。数日療養して体力の戻った私に商人がさせたのは言葉の勉強。この異世界では当然だろうけど日本語は通じない。

 英語さえも覚えられなくて悪戦苦闘するわたしに、まるっきり初めて聞く外国語を覚えるというのは拷問のようだったけど、人間これをしなければ生きていけないという極限状態に立たされれば、大抵のことは何となくこなせるように出来ているらしい。

 

 少しずつ言葉を覚えながら、礼儀作法も教えられ、ついでに侍女さん達に混じって仕事もした。

 その合間にこの世界がどういった所なのかという事も勉強した。

 

 はい、というわけでわたしが教えてもらったこの世界の常識非常識を披露しようか。

 

 この世界では、異世界人が現れるというのはお年寄りから子供まで知っている、知っていなきゃもぐりだろうという常識らしい。

 といってもその数は非常に少なく、全世界で何年に一度来るか来ないかくらいのものらしい。


 基本的に異世界人は保護され、この世界に馴染むまで国が援助をして自活出来るようにサポートしてくれるらしい。

 最初、この世界に来てすぐに追いかけてきた警邏隊は、わたしを逮捕するのが目的じゃなくて保護しようとしてたんだろうって今なら分かる。

 

 迷子で困った時はお巡りさんを頼るべし。これ日本の常識。

 だから警邏隊を見て逃げるなんて行動を取るのがそもそもおかしかったのだけど、あれは仕方なかったと弁解したい。

 

 だって、怖かったんだ。何がって見た目が。警邏隊もそうだし町の人もみんな怖い。

 人って言ってるけど厳密に言って人じゃないからな。過去に異世界――地球――からやって来た人はこの世界の住人を「獣人」と呼んだらしい。


 そう。架空のファンタジーでお馴染みのあれだな。

 わたしがやって来た国は、爬虫類だか両生類だかしらないけど、みんなツルッとしたでも堅そうな鱗に覆われた皮膚にキョロっとした黒目で口はぱっくり割れて中からギザギザの歯と長い真っ赤な舌がちろちろしてる……。でも二足歩行。しかもデカいときた。

 逃げるだろうこれ。怖かろうよ。小さい頃読んだ図鑑の恐竜思い出したっつーの。

 

 わたしを買った商人も、その屋敷で働いてる人達もみんなそう。だから暫く世話になって人間と同じで悪い人もいれば良い人もいるんだなって分かったので今はそれほど恐怖心は無い。

 未だに身体がおっきくってビックリはするけど。蜥蜴だか井守だか家守だか、蛇だかコモドオオトカゲだかしらないけど、体の大きさは個体差が激しい。あれ蜥蜴二回言った? まあいいか。

 ちなみにわたしの世話係をしてくれている女性は蛙さん。小柄なのと歳が近いと言う理由で抜擢されたらしい。

 

 基本的に人間の女性と同じような感性を持った蛙さんだったけど、蝿を目の敵にして仕留めるあれはやっぱ地球の蛙と同じだった。

 

 この世界にはこのように、言語を有した獣達が生きている世界であって逆に人間という種族は存在しない。

 異世界から流れ着いてきた人しかいない。だから稀少価値があり、闇取引で高値がつくのだとか。

 

 そうこうしているうちに三年の月日が経った。毎日覚える事がいっぱいで、てんてこ舞いしている間に三年も経った。

 

 商人さんはそこそこ気さくでいいご主人様だったけど、やっぱ根っからの商売人だった。わたしを高額で競り落としたのも、教育してこの世界の事を叩き込んだのもどこかに売る為だったらしい。

 ある日連れて行かれたのは、お城だった。

 

 三年間暮らしていた爬虫類の国じゃなくて、全然違う国にわたしは売られた。生贄される為に。

 

 うえぇぇ、い、い、生贄!?

 聞いてないよ! 詐欺だ! と喚き散らしたわたしを「うるさい」の一言で昏倒させた商人さんがその後どういったやり取りをしたのか知らない。



短くまとめるつもりです。すぐ終わらせる、つもりです!

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