「僕達急行」
映画のことばっかり書いていたら、夢野映画日記とかタイトルを改めるべきかもしれないが、春休みのことをまとめられそうになってきたので、逆に映画のことも安心して書ける。
洋画はアカデミー賞がらみのもの、邦画も厳選した秀作をいくつか観たが何本か書いていきたい。
映画好きな方ならご存知だろうが昨年の末ごろ、森田芳光監督が亡くなられた。
ほとんどの新聞、テレビなどは代表作として伝説的スター松田優作と組んだ「家族ゲーム」や、社会現象になった「失楽園」を挙げていたが、私が大学ぐらいから今に至るまで日本の歴史に残る傑作をたくさん制作なさっていた。
「阿修羅のごとく」の21世紀版。
日本映画最高のミステリー映画「39」
伊東美咲主演の「海猫」
そして私とごはんライス先生が共に高く評価した「武士の家計簿」
女優を美しく撮る天才だった。
その森田芳光監督が決して遺作などと肩に力を入れず残した最後の作品「僕達急行」これが天下一品だった。
こんなこと今さら断るまでもないが、私は何か論評する時は自分の感受性のおもむくままに自由に発言している。
だから世間的な通説とは違うこともズバズバ言う。
例えば「武士の家計簿」は貧困がテーマみたいに言う映画評論家がいたが、あの一家はかなり高い地位で年収は現代のお金に換算すると二千万円ぐらいである。
貧しさなど描いていない。
描きたかったのは数学の魅力にとりつかれた不器用な青年の青春である。
そういう意味で堺雅人さんがその青年をやっているが正常と変の境界線を美事に体現していた。
そして「僕達急行」も何かにとりつかれた人間が主人公であり、その何かは今回は鉄道だったのである。
それでだんだん本論に入ってくるのだが、江戸の堺雅人さんから現代東京の松山ケンイチと瑛太に主役はバトンタッチするのだが、素晴らしい作品に仕上がった。
ダブル主演の松山ケンイチと瑛太だが、瑛太はどうしたのか?
去年、一流監督の傑作三本に出演して、かなり進境を見せたが、この「僕達急行」には仰天させられた。
今回の作品ではいわゆる鉄道オタクという存在中心に楽しいエンターテインメントに仕上げているのだが、瑛太の役への徹底ぶりが半端でなかった(-_-;)
モテない、暗い、ダサいなど負のアウラを完全に体現していた。服装や、ちょっとした仕草などかなりの徹底ぶりで、お洒落、カッコいいなどのイメージをかなぐり捨てるすごい演技だった。
ワンランク上の演技派に認定!
実は瑛太は今年はかなり期待出来る新作が待機しており、楽しみである。
さてダブル主演の二人が素晴らしいのだが、内容も不思議に面白く、会社や社会のディテールを丁寧に描きつつ、全体的におとぎ話のような面白さがある。
そうどんでん返しとかある映画ではないですが、ちょっと結末にふれますので、ネタバレ御免の方はここまでで。
松山ケンイチは表面的にはエリートサラリーマンで、瑛太と協力しつつ、鉄道の知識などを武器に仕事は成功する。(大企業の社長役の松坂慶子さんが絶品)
しかし、その趣味へののめりこみのため女の子には相手にされず、孤独な二人がそっと寄り添うというエレガントな終わり方に涙(ToT)
最後、頑張っている二人が報われるみたいな甘い終わり方でないリアルだが不思議な味わいでよかった。
リアリティと不思議さ、幸福感と切なさのブレンド具合が絶妙。
こういう傑作をまだ十本でも二十本でも撮れる天才監督だった。
孤独で切ない天才たちは監督のセルフポートレートだったのかも。
本当に素晴らしい映画をありがとう。




