試写会「麒麟の翼」
雑誌社リバブックさんのご招待でコメントを言うため、東野圭吾氏原作「麒麟の翼」試写会うかがった。
ちょっと本格ミステリの真犯人、トリック、動機などについて言及しつつ、論評するので、予備知識を避けたい方は読まないで下さい。
結論として原作者、監督の意気込みは高く評価出来るが、ちょっと勇み足、空回りだったのではないか?
おそらく欧米の有名ミステリ、多分フロスト刑事シリーズのように一つの中心となる事件があり、そこにいろんな事件がからんで来るのを目標としていたのだろうが、話が複雑すぎて、一つ一つのエピソードがかえって底の浅さやあざとさが目立ってしまっている。
観客をそんな醒めた気持ちにさせるのは失敗と言わざるを得ないだろう。
だいたい東野圭吾氏は新本格ミステリというジャンルを出発点としているため人間ドラマがちょっと下手である。
そういうのの全盛期は彼の中で「秘密」「白夜行」を書いたあたりで終わっている感がある。(その後、直木賞など取ったのは気の毒である。)
社会的なことを入れるのは松本清張への憧れなのだが清張ほど徹底した描き方、題材選びでなく小ぎれいにまとめようとしているので、ミステリや映画が本格的に分かる人間から見るとさかしげである。
例えば湊かなえ氏の「告白」は本格ミステリとして考えるとすごく粗が多いトリックだが、圧倒的なストーリーの面白さが粗に目を行かせない。
「麒麟の翼」にはそこまでの迫力がなかった。
またミステリの定義は多様だが、序盤に登場人物が出揃い、分かる人には分かるように伏線を張るフェアなミステリに比べて、この「麒麟の翼」では被害者(中井貴一)の息子(松坂桃李)が秘密を抱えていて、その関係者が犯人であり、ミステリとしてはアンフェアである。
そしてミステリでないと開き直るとしたら人間ドラマとしては冗長で無駄が多く、非合理だった。
比べては酷だが、ダルデンヌ兄弟やラース・フォン・トリアーなどに遠く及ばない。
ただ映画としてはギリギリの合格点はあげられる。
それは三浦貴大、松坂桃李、柄本時生ら若い男性キャストの演技が素晴らしかったからである。
この作品を松坂桃李と三浦貴大の人生のコントラストみたいに撮ったらかなり格が上がっただろう。
三浦貴大が初めて東京に来るシーンなど涙があふれた。
松坂桃李は加害者と被害者の二面を持つ難しい役をよくやっていた。
「アントキノイノチ」でも卑劣な悪人に徹していたが顔がキレイなので、あまり悲惨な感じにならないのである。
キネマ旬報でも最優秀新人賞をとったようだし、是非、松坂桃李中心の本格作品を製作して欲しい。
キャストが上手いのが映画としては何とか成り立たせているが、今回はかなり辛口評価




