六枚め
「…つっ、つまり…?」
ジークは青ざめた。それはちょっとヤバイっすよエリィ様。
エリィはつまらなさそうに紅茶をスプーンでかき混ぜた。
「だーかーら、リディの父親は現国王アルフォンスで、母親はある…貴族令嬢。反逆罪で国外追放並び処刑されたベルシャン家の親戚筋の娘。ま、フツーに考えてリディエンヌ=ソフィーはありえない出身だよね。王様もなに考えてんだか」
つまりエリィとはいとこ同士となる。
「あ…あの、リディは」
「当然その事は知らないよ?ちなみにその令嬢はリディを生んで3ヶ月後に自害。それで王様はウチにリディを預けた。私の父にはとある良家の娘だけど身寄りがない可哀想な娘だって嘘ついて。それで王様の頼みを無視できない父はリディを私の侍女としてつけたの。私も事実を知ったのは最近だよ。王様直々に教えてもらった。あ、何故かトラヴィスも一緒に」
……。
幼なじみのまさかの出生の秘密に唖然とするジークにエリィは追い討ちをかけるように微笑んだ。
「ちなみに、それがバレたら証拠隠滅のため確実にリディは殺される」
「だっ!……で、俺は何をすれば…?」
ヘーイ。
そう言ってエリィは楽しそうに手を叩いた。
「あんたはこの屋敷で私の秘密を知ってる唯一の人間であり侍従だよね?んで私とリディの幼なじみ」
「は……はい」
エリィは空色の瞳を細めた。
「じゃ、私とリディの将来の為に、協力してくれるね?」
タラーー…と冷たい汗が頬をつたるのを感じながらも、ジークはコクリと頷いた。
素直な侍従を少し憐れに思ったエリィはジークにとってあまり嬉しくないだろう情報を教えた。
「…たぶん、あんたのながーい片想いの悲しい結末を早める仕事になると思うけど、大丈夫?」
ジークは思わず咳払いした。エリィ様にバレていたのか…。
「え…大丈夫じゃないですけど、それがリディの為になるのなら、やります」
「そっ、かー…」
エリィは微笑んだ。
結局、リディを手放したくないという自分勝手な気持を持っているのは自分だけかも知れないな。
じゃ、とエリィはクイッと紅茶を飲んだ。
「概要、説明するよ」