一枚め
肥沃な大地、沢山の鉱山を持つフィリシャン王国。
春には花が咲き乱れる美しい都は近隣諸国から毎年羨望の眼差しを向けられる。
天才芸術家や有能な学者も多く輩出するこの国で、神の仕業と最も有名なのは、なんといってもその麗人の多さだろう。
男女性別関係無く、フィリシャン国民には美の遺伝子が組み込まれているのだろうと他国に言わしめるほど美人ばかりの国だった。
国民的にもそれはかなりの誇りらしい。
例を上げると、現国王のアルフォンス王。アルフォンスには上に三人の兄がいた。
フィリシャンでは直系の長子が王位を継ぐこととなっているのだが、その奇跡としか言いようがない麗しの容姿で国民・貴族から圧倒的な支持を受け、法を曲げてまでして即位した。
とはいっても、民の間では外見による格差や差別は全くと言って良いほどないのだが、やはり今でも貴族社会ではその名残が残っている。
例えば、現国王の弟の娘、エリィ・ハルフィールド。
彼女は王族の特徴である細い金髪で、澄み渡った空のような青色の瞳が特徴的な超美少女だ。
当然、貴族の社交場でもかなり目立つ。
今年16になる彼女には当然、わらわらと男が群がってくる。
当然、彼女は絵本に出てくるプリンセスのような性格…。
ではない。
悪いが、私の主人であるエリィ様に内面で期待をしてはいけない。
…私も最初は、己の目を疑ったが。