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第5話 心に住み着いた天使

 初めて出会った日から2日が経った。今日も朝5時40分にスマホの目覚ましが鳴り、現業公務員である俺は地獄のごみ収集作業をしに行かなくてはならない。


 「安月給でいくら頑張っても年数で給料が上がるなんて馬鹿げてやがる。さっさと辞めてぇなぁ」


 生活の為に仕方なく仕事をしているのは少なからず俺だけではないはず。無論、日本の人口2%の富裕層及び支配者層の奴ら以外は大抵働きたくないと思っているだろうに。


 新人職員であるが故、月収は役15万円。祝日手当、ボーナス年2回、それらを含めたとしても一人暮らしは厳しいものだ。結婚して子供を産むことすら難しいまである。



 「税金、税金を無くせ。頼むから。いただきます」



 髪はボサボサのまま、茶碗一杯の白米と卵2個で作ったオムレツにケチャップとマヨネーズを少しかけて、ブツブツ文句を言いながら朝飯を食す。毎朝これを食べて最寄駅に向かうのがルーティーンである俺だが、たまには朝からA5ランクの肉を食べてみたいものだ。でも、ケチャップマヨで食べるオムレツはかなり美味いんだよなぁ。


 朝食を済ませたらすぐにジーパンを履き、適当な無地の紺色の長袖を着る。革ジャンに手を通し、換気扇で今日初めてのセブンスターをじっくり吸い、歯を磨いてから玄関の前に立つ。


 「さて、行きたくねぇけど、行きますか」


 ため息混じりのやる気のない低い声で一言呟き、ニット帽を被ったら玄関を開けて外に出る。外は相変わらず寒かった。凍りつく程ではないが、職場ストレスと過去ストレスを抱えた俺を今日も慰めてくれるのかと、厨二病まがいなことを考えながら自転車に跨って最寄駅に向かった。



    ――――――――――――――――



 職場は40分あれば着く場所にある。俺は座れる時間を把握しているので立たなくて済む電車に乗り、音楽を聴きながら地獄へ向かう。眠くはないが、目を瞑っていれば自然と眠りに入る。


 気がつけば職場の最寄り駅に着き、バカとアホとクズしかいない事務所に足を運んだ。今日はいつもよりもやる気がなく、生きる気力すら無かったので励ましの曲を聴くよりかは残酷で冷徹な曲を聴きたかった。

 しかし、そんな曲を知る訳もなく、いつものようにアニメ恋愛ソングをランダムに流しながら歩く。


 駅から徒歩2分で着く職場である以上、音楽を選択してイヤホンから曲を流すまでの間に事務所は見えてしまった。それでも敢えて曲を聴く。現実逃避がしたいからだ。すぐそこに見えている地獄から逃げたくて仕方がないのだ。あと電車の中でイヤホンつけるのを忘れたからだ。


 「色々疲れてんだなぁ」


 得意の独り言をかまして、事務所に入り、挨拶を適当にかましてタイムカードをタッチパネルに適当にかまし、三階まで上がってから俺の名前が書いてある札をかます。じゃなくて返す。


 「おい阿智村、随分疲れてるじゃねぇか、どうしたんだ?」


 「お前職場で言うことかねぇから疲れるんだよ」


 「怪我ばっかして職場に迷惑かけてばっかなんだから早く辞めちまえよ」



 若者にきつい現場を任せて一度も現場に出ないバカ連中が踏ん反り返って俺に声をかける。

 『どうしたもこうしたもねぇ、踏ん反り返ってねぇで貴様は現場に出ろやこのクズども!』

とでも言ってやりたいが、もはやバカを相手にする程の気力も残っておらず。適当な言葉を考える暇もなかったのであしらうことにした。


 「酒の飲み過ぎですよ。今日も頑張りますわ」


 愛想笑いもせず、俺は威嚇するような口調でそこに悪巧みするような笑みを浮かべて言ってやった。


 「んじゃ今日も現場頼むぞ。工事もきてるから、あとで確認しとけー」


 話しかけてきた3人だけではないが、紛れもなくこの職場は屑の塊しかいない。なんだよ辞めちまえって。辞めたくても辞めらんねぇのよ生活があるから。


 今日のことではないが、怪我をして病欠をとってしばらくして職場に出てくればさらに辞めちまえと言ってくる理解不能な50代ゴミが1人、親の七光で何もかも人生が楽しくて仕方がなくて人を支配しようとして俺に返り討ちにあって職場に泣きついたわがまま坊ちゃん40代ゴミ1人。まぁそんな奴らがゴロゴロいるのさ。


 ちなみにこの職場では俺が1番最年少。のくせに威圧と暴言でしばき倒した先輩職員の数は約3人。まぁやってられないってことだ。


 あーこいつらぶっ殺して仕事辞めたーいと思いながら始まった仕事の1日でした笑



   ―――――――――――――――――

 


 俺はいつも通り清掃車に乗り、相方と共に見慣れた景色を地図通りにゴミを取っていく。あぁ、このゴミがバカ共ならいくらでも積んでやるのにと苛立ちを沸かせつつも作業を難なくこなしていく。


 「んでさぁ、普通そういうこと言うかね?言いたいことバンバン口に出して人間舐めてるやつってマジで殺したくなりますよねー」


 「はぃ〜、そ、そうですよねぇ」


 『はい〜』しか言わない相方45歳に愚痴をこぼしつつも、午前午後共に作業は終了した。そんな時にあの女性を思い出す。

 そういえば凪ちゃんは41歳、相方はほとんど白髪の45歳。見た目で年齢はわからないものだと、顎髭をちまちまと捻りながら考える。

 

 この仕事は役所側からは人の為に働けと、寧ろ住民がいるから私たちがいるなどと良くわからない御託を並べられ、試験の面接の時まで自分を偽らなくてはならない。


 でも、自分の本性を曝け出し、自由に生きるのは職場では難しいものだ。まぁかなり自由にやってはいるが、だから俺は問題児とかバカどもに言われるのだろうか。


 何一つ偽ることなく、自分の本性を曝け出し、本来の姿を見せたのは初めて会った凪だけである。作業中にもちらちらと心に顔を覗かせていた凪は、俺の心に住み着いた天使なのかもしれない。


 「凪ちゃんに連絡しよ」


 仕事を終えて拘束時間が溶け、タイムカードをタッチして事務所を出ようとした時にスマホの電源画面を押して画面が開く。すると、凪からメッセージが来ていた。


    ―――――――――――――――


つづく




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