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第1話 全ての始まり

久々に小説書きたくなりましたので。


しかしながら、汗水垂らして働いて外で酒を飲んでも全く生きてる気がしないのはなぜだろうか笑


目を通してもらえればこっちも気分が良くなるので、まぁ見てください笑


 12月下旬、土曜日。東京、下町の中の下町は今日も欲の塊どもが寒さと共に荒れていた。

 ロータリーの側道では愛情たっぷり育ったであろう若者ブス集団が、明らかに低レベルだとわかるような見た目をしたブスを引き連れて風を切って歩いているのが帰りの電車の中から見えた。


 「あーいう奴らって絶対にストレスないんだろうなぁ」

 

 数秒で降りる駅に着くというのに、電車の扉に体を預け、腕を組みながら日頃のストレスと傷ついた過去を数えているのは何も俺だけじゃないだろう。でも、今日だけはせめて俺だけがそうであって欲しい。今日だけは特別でいたい。じゃないと俺には生きる意味が見出せない。

 心の中で自分を虐めながら足を動かしていると、気がつけば改札を出ていた。


 「だいぶ、寒いね。寒いよなぁ」


 灰色ニット帽を眉毛の下まで深く被り、革ジャンに顎を埋めながら両手につけた茶色い手袋を擦り合わせると、瞬く間に冷たい風という名の暴力が今日も頬を貫いてくる。 夜になれば灯りは目立ち、飲み屋街と呼ぶには少し店舗が少ないだろと必ず呟きたくなる場所に俺は寒さに震えながらポツリと立ち、独り言を呟いていた。


 「さて、あそこ行ってまったり酒飲みますかぁ」

 

 次の日が休みである場合の仕事終わり、帰宅途中の電車の中でどこに飲みに行こうかなどと考えていた訳でもないが、自然と行きつけの飲み屋に足を運んでしまう日常が堪らなく幸せである。

     


     ――――――――――――――



 「いらっしゃいませぇー、ご注文はお決まりですか?」


 「瓶ビール1本とピーマンチーズ串1つ」


 いつもの居酒屋に足を踏み入れ、カウンターの1番左端に座り、注文を終わらせてからニット帽と革ジャンを脱いで椅子にかける。その動作をしているうちに瓶ビールは運ばれてくる。

 目の前に置かれたキンキンに冷えたビールをコップに注ぎ、一気に疲れた体に流し込む。


 「あ゛ぁぁ〜うめぇ〜」


 『美味すぎる、美味すぎるのだ』と心の中で何度も連呼し、最初の1杯で得られる幸福が口に残っているうちにポケットからタバコとジッポを出し、カウンターテーブルの若干奥に置いてあった灰皿を手前に引いてからタバコを咥えて火を点ける。

 タバコの葉っぱと火が抱きしめ合うことで焼けていく、焚き火を連想させるような音と、土曜日なのに静まり返っている店の中の空気の音が、ジッポの高い金属音と共にセブンスターの味をさらに引き出してくれる。ビールとセブンスター、堪らないね。


 でも、生きてる実感が湧かないんだよなぁ。



     ―――――――――――――――


 店にきてから1時間30分が経った。12本目のタバコを口に加えて火をつけようとすると、男の従業員から混雑してきたからラストオーダーだと言われた。

 勿論、1人飲みである以上、長居するのも飽きるわけで、ちょうどいい頃合いだった。


 「んじゃ、お愛想で」


 指をバッテンにして店員に伝えると、すかさず伝票を取りに小走りで入口の方へ向かって行った。


 「そろそろマスターのとこ行くっかな」


 俺はスマホを取り出して電話帳を開き、マスターと記載された番号に電話をかけ、改めてタバコに火をつけて煙を天井に吹きかける。

 電話をかけているプルプル音が右耳を振動させ、俺の心臓にまで届いた時にマスターが電話に出た。


 「もしもし?大和?」


 「おーマスター元気かー?」


 「元気かって、一昨日も来たろー?てか早くこいよぉ」


 「わーった、今からすぐいくよ。今日も1人?」


 「当たり前だよぉ、でもよ、今日は会わせたい人いんだよぉ」


 相変わらず渋くて元気な声だったが、なんだか寂しさをも感じてしまった。とはいえ、電話だけでも楽しさも感じられる人間だ。俺はこの人に出会えて良かったと思っている。

 そう思える人間と出会うということが、俺の人生で中々に無縁な事だった。職場での付き合いで週3日で飲みに行っていた60歳に近い50代後半のイカレた爺さんの愚痴を聞きながら飲む酒よりも、自分の人生を慰めてやりながら1人で飲む酒よりも、出会えて良かったと思える人間と飲む酒の方が格別に美味いと知ったのはちょうど1週間前だ。


つづく

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