⭕ 旅立ち
──*──*──*── 村の入り口
朝食を教会で御馳走になった後、数人のシスターさん達に囲まれながら村の入り口に到着した。
村人が総出でアタシとニュイちゃんの見送りをしてくれるみたい。
幾ら何でも大袈裟じゃない??
村人達から声を掛けられたり、握手を求められたりしている。
まるでアイドルになったみたいな気分になる。
教会から遅れてカテーナさんが神父さん達と一緒に歩いて来る。
聖職者:カテーナ
「 ──救世主アミカ様、此方を御持ちください。
旅に必要となる一式を揃えて入れてあります 」
洲導彩榎
「 有り難う御座います 」
聖職者:カテーナ
「 日持ちする食料も入っていますのでお食べください。
後は此方を──。
雨風を凌ぐマントです。
魔除けの魔法も掛けてますので、怪物に見付かり難くなっています 」
洲導彩榎
「 わぁ、マント!
有り難う御座います!
制服が汚れなくて済みます 」
聖職者:カテーナ
「 ≪ セオセチマの街 ≫へは川を下ってください。
川を下り、森を出てから5日程歩けば≪ 村落 ≫が在ります。
其処で再度、旅の準備を整えてください。
≪ 村落 ≫から徒歩で10日程歩けば≪ セオセチマの街 ≫に着けます 」
洲導彩榎
「 歩くんですね…… 」
村長
「 救世主アミカ様、此方を御持ちください。
砂金を硬貨に替えさせて頂きました。
残りの砂金は≪ セオセチマの街 ≫で換金してもらえます 」
洲導彩榎
「 あの……返して頂けるんですか?
どうして…… 」
村長
「 我々には不要な物ですので── 」
洲導彩榎
「 そ、そうなんですね…… 」
良く分からないけど、アタシは砂金の入った布袋と硬貨の入った布袋を受け取ってカバンの中へ入れた。
洲導彩榎
「 このカバン、凄いですね。
荷物が入ってるのに重くないです 」
聖職者:カテーナ
「 魔法の鞄ですから。
旅の必需品です 」
洲導彩榎
「 貴重なカバンを有り難う御座います(////)
村の皆さん、2日間だけですけど、御世話になりました 」
ニュイ
「 にゅにゅ! 」
聖職者:カテーナ
「 いいえ、此方こそ有り難う御座いました。
救世主アミカ様が良い救世主様で安心致しました 」
洲導彩榎
「 良い救世主??
悪い救世主も居るって事ですか? 」
聖職者:カテーナ
「 明るい内に川を下ってください。
筏を用意してありますので使ってください 」
洲導彩榎
「 筏!?
筏で川を下るぅ~~??
ハードルが高過ぎるんですけどぉ!! 」
聖職者:カテーナ
「 ふふふ(////)
救世主アミカ様に〈 大陸神コビダエニカ様 〉の□□□□□があらんことを── 」
うん??
今なんて言ったのかな??
上手く聞き取れなかった気がするんだけど……。
アタシは見送りをしてくれている村の皆さんに御礼を言って、手を振りながら村を離れた。
──*──*──*── 森の中
洲導彩榎
「 親切で良い人達で良かったね、ニュイちゃん 」
ニュイ
「 にゅにゅにゅ 」
洲導彩榎
「 えぇと──確か筏を用意してもらえてたんだよね。
筏なんて初めて乗るんだけど、上手く川下りなんて出来るのかな?
ゲームのミニゲームじゃあるまいし~~ 」
ニュイ
「 にゅ~?
にゅにゅ!
にゅにゅにゅ、にゅ~~にゅ! 」
洲導彩榎
「 えっ?!
ニュイちゃんが筏を操縦してくれるの??
ニュイちゃんはスライムだよね?
スライムって筏の操縦まで出来ちゃうの? 」
ニュイ
「 にゅ~~い! 」
洲導彩榎
「 マジかぁ~~!!
ぱないよ、ニュイちゃん!!
有能過ぎるぅ~~ 」
ニュイ
「 にゅにゅ(////)」
なんか良く分からないけど、≪ コビダエニカ大陸 ≫のスライムは筏の操縦が出来るらしい。
異世界──凄過ぎるでしょう~~~~。
筏初乗りのアタシには助かる嬉しい誤算だよ♥️
──*──*──*── 船着き場
洲導彩榎
「 まさか10分も歩くとはね……。
此処が村人達が利用してる無人の船着き場かぁ……。
──あっ、筏ってアレかな? 」
船着き場の奥に作り立てみたいに新品の筏が置かれている。
THE’s手作りって感じがする。
洲導彩榎
「 何から何まで有り難いね、ニュイちゃん 」
ニュイ
「 にゅ~~ 」
ニュイちゃんはアタシの腕からピョンとジャンプして筏の上に飛び降りる。
スライムが軽過ぎるのか筏はピクリとも揺れなかった。
ニュイちゃんに続いてアタシも筏の上に乗る。
バランスを崩して一寸揺れたけど、筏の上で転ばないで済んだ。
ニュイちゃんの体が大きくなって、筏を漕ぐ為のオール── みたいなの?? ──の持ち手がニュイちゃんの体の中へ入った。
ニュイちゃんが器用にオール── みたいなの ──を動かして筏を発進させた。
ニュイちゃんは手慣れた感じで筏を巧妙に操作してくれる。
アタシは安心して筏をニュイちゃんに丸投げ──じゃなくて、お任せする事にした。
初めて乗る筏で初めての川下りは──、やっぱりハードルが高いんじゃ無いかと思うんですけどぉ!!
帰宅部の女子中学生には無理ですぅ!!
順調に川を下っていると森を抜けた。
森を抜けた先に船着き場が見えるけど、やっぱり無人みたい。
川を下るのに使った筏って、どうするんだろう??
川を上るのに使うのかな??
──*──*──*── 船着き場
ニュイちゃんが筏を船着き場に停めてくれる。
もぉう~~~~ニュイちゃんってば有能過ぎぃ~~~~。
アタシを先に筏から降ろしてくれる紳士っぷりまで発揮してくれちゃって感動しかない。
洲導彩榎
「 有り難ね、ニュイちゃん!
後は徒歩で5日くらい歩くんだったよね? 」
ニュイ
「 にゅにゅ 」
洲導彩榎
「 歩くのか…………。
頑張ろっかぁ、ニュイちゃん 」
ニュイ
「 にゅに!
にゅ~~にゅにゅ 」
洲導彩榎
「 うん?
ニュイちゃんの上に乗るの?
ニュイちゃんがアタシを乗せて移動してくれるって事?? 」
ニュイ
「 にゅ~~ 」
洲導彩榎
「 歩くより早く着けるって? 」
ニュイ
「 にゅ~~ 」
そんな訳で、またまたアタシはニュイちゃんの厚意に敏捷する事にした。
ニュイちゃんが「 乗って♥️ 」って甘えてくるんだから、ニュイちゃんの思いをちゃんと汲んであげないとだよね!
ニュイちゃんはアタシが乗り易い様にと頭を凹ませてくれる。
アタシがニュイちゃんの上に乗ったのを確認したかの様にニュイちゃんは動き出した。
アタシを乗せたニュイちゃんは結構な速度で動く。
これなら5日も掛からないで≪ 村落 ≫に着けるかも知れない。
ニュイちゃんは疲れ知らずなのか休む事なく移動している。
途中で怪物らしき生物を見掛けるけど、襲われたりはしない。
何でかって?
それは────、ニュイちゃんが体内から謎の液体を飛ばして怪物を倒してくれているからです!
地面に倒れた怪物をニュイちゃんが次々に呑み込んで行くから、ニュイちゃんの体内ではずっと透明の泡が動いているし、体内に取り込んだ怪物がシュワシュワと溶けているの。
うん、ニュイちゃんの体内に何の液体が入ってるのかは考えない事にしようと思う。
アタシには害の無い液体だと信じたい。
怪物と戦う事も無く、怪我をする事も無く、ニュイちゃんの上に座って楽チン移動が出来るなんて思ってなかったから有り難い。
ニュイちゃんの上で、貰った包み紙を開けて、昼食を済ませる。
ニュイちゃんは何も食べなくても良いみたい。
馬とニュイちゃんならどっちが速く走るんだろう??
やっぱり馬かな?
夕食を食べる時も睡眠をする時もアタシはニュイちゃんの上に鎮座したままで、夜通し動いてもニュイちゃんは疲れないみたい。
虹色スライムって逞しいんだね!