✒ 勇気の魔法
──*──*──*── 応接室
応接室へ入ったらソファーに腰を下ろして座る。
テーブルの上には、さっきとは別の茶菓子と紅茶が出されている。
さっきの茶菓子、未だ食べたかったのに…………。
聖職者:カテーナ
「 勇気の魔法について御話させて頂きます。
不浄を浄化する事が可能な魔法は、現状では “ 聖女の魔法 ” のみとなっております。
従いまして、“ 勇気の魔法 ” では不浄を浄化する事は不可能となります 」
洲導彩榎
「 そう……なんですね…… 」
聖職者:カテーナ
「 “ 勇気の魔法 ” は誰にでも与えられる魔法ではありません。
誰にでも使える能力でもありません。
〈 大陸神コビダエニカの御遣い様 〉に見初められた特別な救世主様だけが授かる事の出来る稀少な魔法であると伝えられております 」
洲導彩榎
「 そうなんですか?
…………どうして私が〈 大陸神コビダエニカの御遣い様 〉に見初められたのかな?
見初められる様な事なんて何もしてないんだけど…… 」
聖職者:カテーナ
「 そちらに関してはワタクシ共にも分かりません。
〈 大陸神コビダエニカの御遣い様 〉の御考えは計り知れませんので……。
ですが──、虹色スライムを仲間に出来た救世主様です。
虹色スライムがとても懐いていますので、見初められたのかも知れません 」
洲導彩榎
「 そっか!
ニュイちゃんの御手柄って可能性もあるのね!
ニュイちゃん、凄いね! 」
ニュイ
「 にゅ~(////)」
聖職者:カテーナ
「 “ 勇気の魔法 ” は──、勇気を失い俯いたり、項垂れたり、立ち止まったり、希望を捨ててしまっている人達,絶望に苛まれ苦しんでいる迷える人達に対して、苦しみを乗り越え、笑顔で生きていける様に──、再び希望を胸に前へ踏み出せる様に──、勇気を与えて元気にし、背中を押して励ます事の出来る能力と聞いております 」
洲導彩榎
「 戦闘には不向きな魔法って事は分かりました…… 」
聖職者:カテーナ
「 そうですね。
勇気の魔法を使った後、心のこもった感謝の気持ち『 ありがとう 』が集まると “ 勇気の魔法 ” の能力が強まるとも聞いております 」
洲導彩榎
「 そうなんですね……。
心のこもった感謝の気持ち…………難しそうだね、ニュイちゃん 」
ニュイ
「 にゅにゅ~~ 」
聖職者:カテーナ
「 御神託では『 超魔王に囚われている〈 皇 〉を解放せよ 』との仰せですので、救世主アミカ様の目的地は≪ 魔王領 ≫になるかと思います 」
洲導彩榎
「 ≪ 魔王領 ≫ですか? 」
聖職者:カテーナ
「 はい。
≪ 魔王領 ≫は北方の極寒地に在ります 」
洲導彩榎
「 極寒地ぃ~~?
死ぬ程寒いって事ですか??
嫌なんですけどぉ~~~~ 」
聖職者:カテーナ
「 救世主アミカ様宛に此方の手紙が届いておりました。
差出人は不明ですが、“ 救世主アミカ様 ” と御名前が書かれていました 」
洲導彩榎
「 私宛?
手紙を貰う程の知り合いなんて居ないんですけど……。
開けて読んでみようか? 」
ニュイ
「 にゅにゅ! 」
洲導彩榎
「 そうだよね。
カテーナさん、手紙を読んでみます 」
聖職者:カテーナ
「 どうぞ、お読みください 」
アタシは封筒を開けて中に入っている便箋を広げる。
洲導彩榎
「 やだ──、日本語で書いてある!!
どゆこと?? 」
便箋に書かれている文字はアタシが知ってるまさかの日本語。
これって完全にアタシ宛じゃないの?
だって≪ コビダエニカ大陸 ≫で日本語が読める人間なんて、アタシしか居ないんだもんね!
アタシより170年も先輩の救世主様がアタシと同じ日本人とは限らない訳だし──。
という訳で、アタシは声に出して便箋に書かれた内容を読む事にした。
─・─・─・─・─・─
拝啓、異世界である日本より転移召喚されし、救世主・洲導彩榎殿。
貴殿の目的地は北方に在る極寒地に聳え立つ魔王城なり。
≪ 魔王領 ≫を目指して旅をするべし。
≪ 魔王領 ≫へ目指す際には、≪ コビダエニカ大陸 ≫に在る貧しい教会を訪問しせり。
〈 大陸神コビダエニカの御遣い様 〉の石像に “ 勇気の魔法 ” を込めよ。
石化が解けし〈 大陸神コビダエニカの御遣い様 〉より貴殿へ〈 大陸神コビダエニカ様 〉の祝福を与えん。
因みに〈 大陸神コビダエニカの御遣い様 〉の石像は108体あるから頑張れ!
残り107体・だ・ぞ★
追伸──。
“ 勇気の魔法 ” を使う時には、必ず『 勇気りんりん♥️プリズムパワー 』と唱えるべし。
唱えないで “ 勇気の魔法 ” を使うと寿命が削られちゃうぞ★
対価として寿命が支払われる事になる故、短命になるのだ。
何時も心に〈 大陸神コビダエニカ様 〉を!!
─・─・─・─・─・─
洲導彩榎
「 ……………………何これ??
ふざけてない?? 」
ニュイ
「 にゅ~~? 」
洲導彩榎
「 だって、ニュイちゃん!
『 勇気りんりん♥️プリズムパワー 』って何なの!?
唱えないと寿命が縮むって酷くない??
〈 大陸神コビダエニカの御遣い様 〉の石像に “ 勇気の魔法 ” を込めろって何!?
107体も有るの??
幾らなんでも多過ぎない??
無理ゲーじゃないのぉ~~ 」
ニュイ
「 にゅにゅ~ 」
聖職者:カテーナ
「 ワタクシも107体もの〈 大陸神コビダエニカの御遣い様 〉の石像が有るとは初めて知りました。
大変な旅になりそうですね…… 」
洲導彩榎
「 気が重いかもぉ~~。
カテーナさん、貧しい教会って結構在るんですか? 」
聖職者:カテーナ
「 そうですね。
≪ 集落 ≫≪ 村落 ≫に在る教会は比較的に貧しいと思われます。
≪ 街 ≫≪ 都 ≫≪ 王都 ≫に在るのは教会ではなく立派な神殿が建っています。
≪ 町 ≫では教会の場合や神殿の場合があります 」
洲導彩榎
「 それじゃあ、教会を探すなら≪ 集落 ≫と≪ 村落 ≫と≪ 町 ≫を巡れば良いって事ですね!
多少なりとも絞れて良かったね、ニュイちゃん 」
ニュイ
「 にゅにゅ!
にゅ~~にゅ 」
洲導彩榎
「 えっ、地図?
あの~~、カテーナさん。
≪ コビダエニカ大陸 ≫の地図は何処で買えますか? 」
聖職者:カテーナ
「 地図でしたら神殿で買う事が出来ます 」
洲導彩榎
「 神殿ですか?
地図って道具屋や地図専門店とかで買えないんですか? 」
聖職者:カテーナ
「 いいえ。
地図は高価な物ですから神殿が管理されているのです。
この≪ 村落 ≫から近いのは≪ セオセチマの街 ≫になります。
≪ 街 ≫には道具屋,装備屋等様々な店舗が在ります。
長旅に必要な道具や装備の一式を揃えるなら≪ 街 ≫がお勧めです。
≪ セオセチマの街 ≫へ行く迄に必要となる道具一式は此方で一通り揃えさせて頂きます 」
洲導彩榎
「 あの──、良いんですか?
旅に必要な物を用意して頂いても── 」
聖職者:カテーナ
「 勿論です。
救世主アミカ様、遠慮なさらず、ワタクシ達の厚意を受け取ってくださいませ 」
洲導彩榎
「 有り難う御座います、カテーナさん。
凄く助かります!
私……何も知らなくて── 」
聖職者:カテーナ
「 これから知って頂ければ良いです。
神殿には図書室が在ります。
救世主アミカ様ならば図書室への出入りは自由に出来ると思います。
≪ コビダエニカ大陸 ≫の事を学ぶ事が出来ます 」
洲導彩榎
「 図書室かぁ……。
有り難う御座います 」
とは言っても≪ コビダエニカ大陸 ≫の文字は読めないんだから、本だって見ても意味無いかも……。
会話は出来る様になったんだから、コミュニケーションは何とかなりそうだけど──、文字の読み書きは自力でしないと駄目なのかな……。
救世主として異世界に召喚された訳だし、せめて読み書きぐらいは出来る様にしてほしかったな~~。
スライムのニュイちゃんに読み書きを教えてもらう訳にもいかないし……。
困ったな~~。
聖職者:カテーナ
「 救世主アミカ様、今夜は教会に御泊まりくださいませ。
此方で部屋を御用意させて頂きます 」
洲導彩榎
「 何から何まで有り難う御座います。
お世話になってばかりですね…… 」
聖職者:カテーナ
「 気になされないでくださいませ。
救世主様の御世話をさせて頂ける事は、ワタクシ達の喜びなのです 」
洲導彩榎
「 は…はい…… 」
聖職者:カテーナ
「 今夜は村の皆さんが救世主アミカ様を讃えて宴を開いてくださいます。
テムモンと共に楽しんでくださいませ 」
洲導彩榎
「 はい(////)」
──*──*──*── 宿泊室
夕方に村人達が開いてくれ宴は本当に盛大で楽しいものだった。
皆が救世主のアタシと救世主の相棒のニュイちゃんに良くしてくれた。
作られた祭壇の上にはニュイちゃんが体内から吐き出した砂金に見えない砂金が置かれていた。
凄い量の砂金を出してたんだね、ニュイちゃん!
本当に何時の間にゲットしてたんだろうね?
宴が終わった後は、カテーナさんが用意してくれた温水で湯網をした。
≪ コビダエニカ大陸 ≫には、お風呂が無いみたい。
温水で身体を濡らして拭くのが一般的で、お風呂に入れるのは富裕層の平民や貴族,王族だけみたいなんだよね。
温水を沢山使うお風呂って贅沢なんだね~~。
うぅ……日本が恋しい……。
洲導彩榎
「 明日には村を出るんだね。
≪ セオセチマの街 ≫か……。
森の中を進まないといけないなんて大変だよね 」
ニュイ
「 にゅにゅ~ 」
洲導彩榎
「 道でも在れば良いんだけど……。
森の中を歩くって事はだよ、動物とか猛獣とかと出会す可能性が有るじゃない?
アタシ、戦えないんですけど!!
どうすりゃ良いの?? 」
明日からの事を考えると不安しかない。
生憎とアタシは体術も武術も使えないんだよね。
護身術でも習っとくんだったよね?
まぁ……自分がこんな目に遭うなんて想像もしてなかったから仕方無いけど……。
洲導彩榎
「 ニュイちゃん、村を出る前に武器になりそうなのを貰った方が良いかな? 」
ニュイ
「 にゅにゅ~。
にゅ! 」
洲導彩榎
「 要らないの? 」
ニュイ
「 にゅい 」
洲導彩榎
「 …………ニュイちゃんが言うなら信じるよ 」
………………とは言ったものの、スライムの言葉を素直に信じて良いのかな?
言葉って……。
ニュイちゃんは「 にゅいにゅい 」言ってるだけなんだけどねぇ……。
テイムしたから相棒が伝えたい事が何となく分かるって事かな??
洲導彩榎
「 武器は兎も角、防具は揃えたいよね。
流石に制服じゃねぇ……。
制服の上からでも身に付けられる簡単な防具とか無いかな?
せめて制服が汚れない程度にマントかローブが欲しいよね…… 」
ニュイ
「 にゅ~~ 」
洲導彩榎
「 明日は早いし、そろそろ寝よっか? 」
ニュイ
「 にゅにゅ~~ 」
アタシはベッドの中に潜る。
柔らかくて寝易い自分のベッドが恋しい~~~~ぃ!!
持ってた学生鞄も無いし、最悪だよ!
手持ちはポケットに入ってるポケットティッシュとポケットティッシュの下に入れてる絆創膏3枚とハンカチだけ。
どうすりゃ良いの、マジで!!
ガチで不安しかない。