✒ セオセチマの街を目指して
──*──*──*── フィールド
アタシはアスベイル神父と≪ 村落 ≫を出て、≪ セオセチマの街 ≫を目指して歩いている。
ニュイちゃんが乗せてくれると早いんだけど、アスベイル神父が仲間になってくれてからは乗せてくれなくなった。
未だ拗ねてるのかな??
どうやら機嫌が直ったのは一時的だったみたい。
馬車にでも乗れたらな~~。
救世主:スドゥ
「 そう言えば──、アベルは何で旅行用のトランクなの?
魔法の鞄は持ってないの? 」
神父:キャロメンド
「 勿論、持っています。
このトランクはフェイクです 」
救世主:スドゥ
「 フェイクって? 」
神父:キャロメンド
「 旅をしているのに旅行用の鞄やトランクを持ち歩かないのは不自然でしょう? 」
救世主:スドゥ
「 あ……そっか!
そう言われてみればそうだよね 」
神父:キャロメンド
「 他の人から見れば、私達は2人組の “ 巡回神父 ” に見えています。
彼此の教会を巡回する神父が手荷物を1つも持たずに歩いたりはしません 」
救世主:スドゥ
「 そっか、巡回神父に見えてるんだ… 」
神父:キャロメンド
「 救世主として旅をするよりは安全の筈です。
聖職者を襲う罰当たりな盗賊は先ず居ませんよ 」
救世主:スドゥ
「 えっ、盗賊?
フィールドに出るのは怪物や魔物だけじゃないの?
何で盗賊は聖職者を襲わないの? 」
神父:キャロメンド
「 聖職者に返り討ちにされるからです。
聖職者は常に単独で行動します。
異動先や派遣先,巡回中に起こるイレギュラーな非常時や緊急事態に備えて厳しい戦闘訓練も受けます。
身を守る為に様々な武器の扱い方や暗殺術も学びます。
魔法も使えますし、最低でも1人で100人の盗賊を相手にしても生き残れる程の戦闘センスを身に付けれなければ、神父になる事は出来ません。
サバイバル術も学びますから狩りも釣りも出来ます。
狩り終わった動物の解体も出来ます 」
救世主:スドゥ
「 神父って凄いんだ……。
暗殺技術も学んだって事は、いざとなったら暗殺者にも転職が出来る──って事?? 」
神父:キャロメンド
「 流石に暗殺者にはなれません。
生き残る為に暗殺術を学ぶだけですから、戦闘が多少なりとも優位になるくらいです。
本職には到底敵いませんし、足元にも及びません 」
救世主:スドゥ
「 ははは………… 」
アスベイル神父を怒らせたらヤバいかもぉ~~。
生き残る為とはいえ、聖職者が暗殺術を学ぶなんて初耳ぃ~~。
やっぱり怪物や魔物とか存在する物騒な世界だからかな?
救世主:スドゥ
「 ──大分≪ 村落 ≫から離れたけど、怪物や魔物と遭遇しないよね?
此処等辺は遭遇率が低いのかな? 」
神父:キャロメンド
「 違いますよ、スドゥ。
魔物は夜行性ですから日が暮れないと出没しません。
悪魔,魔族,魔神は≪ 魔王領 ≫付近のフィールドに出没します。
此処いら一体に生息する怪物のLVは弱いので、ニュイさんの強さに怯えて近付いて来ないだけです 」
救世主:スドゥ
「 ニュイちゃんは強いんですか? 」
神父:キャロメンド
「 ニュイさんのLVは40を超えています 」
救世主:スドゥ
「 え゛っ!?
LV40超えですか??
ニュイちゃん、凄いね! 」
ニュイ
「 にゅ? 」
救世主:スドゥ
「 でも、どうしてニュイちゃんのLVが分かるんですか? 」
神父:キャロメンド
「 鑑定の能力です。
実は──、この眼鏡は伊達ですけど、鑑定の出来る魔法が掛けられている魔法具なので── 」
救世主:スドゥ
「 えっ?!
魔法具ですか?!
そんなファンタジー道具が有るんですね!
凄いです!! 」
神父:キャロメンド
「 スドゥ──、敬語に戻っていますよ 」
救世主:スドゥ
「 あっ──(////)
驚いたら、つい…… 」
神父:キャロメンド
「 この鑑定眼鏡は持ち主である私以外には唯の伊達眼鏡となります 」
救世主:スドゥ
「 へぇ?
じゃあ、アベル専用の魔法具なんだ。
良いなぁ~~魔法具ぅ~~ 」
神父:キャロメンド
「 魔法具は高価な代物なので、≪ 都 ≫や≪ 王都 ≫でしか買えません。
魔法具をオーダーメイドするとなれば≪ 王都 ≫に在る魔法具専門のオーダーメイド店ですね 」
救世主:スドゥ
「 えっ?!
魔法具ってオーダーメイドで作れるんですか? 」
神父:キャロメンド
「 実は、そうなんです。
物にも依りますけど、私の鑑定眼鏡もオーダーメイドです 」
救世主:スドゥ
「 鑑定って便利な能力なんですね。
誰でも使える能力なんですか? 」
神父:キャロメンド
「 いいえ、鑑定には限られた素質を持つ者しか使えません。
全ての鑑定能力者は≪ 王都 ≫へ集められ、鑑定能力を測定されます。
測定後には “ 鑑定士 ” として≪ 王都 ≫で就職します。
鑑定士は能力のランクで異動先が決定し、≪ 都 ≫へ異動させられます。
異動先の≪ 都 ≫から≪ 街 ≫へ派遣され、派遣先の≪ 街 ≫から更に≪ 町 ≫へ派遣されます。
鑑定士は神父の様に巡回はしません 」
救世主:スドゥ
「 じゃあ、鑑定が出来る人は≪ 王都 ≫で管理される事になるんだ…。
でもでも、鑑定の出来る魔法具が作れるなら鑑定士じゃなくても鑑定が出来る様になっちゃうよね?
それって≪ 王都 ≫的には良いの? 」
神父:キャロメンド
「 良くないですね。
ですから、オーダーメイドで作り、秘密にしています 」
救世主:スドゥ
「 そうなんだ……。
一寸残念かも…… 」
ニュイ
「 にゅ~~ 」
神父:キャロメンド
「 折角ですし、フィールドに出現する怪物と魔物について教えましょう 」
救世主:スドゥ
「 聞きたいです! 」
ニュイ
「 にゅ… 」
神父:キャロメンド
「 フィールドに出現する怪物や魔物は地域別,地形別に1種族 ~ 3種族は出現する様になっています。
時間帯に依って遭遇する怪物,魔物の種類が変わります。
日が暮れるにつれて怪物のLVは上がりますが、完全に日が暮れてしまうと怪物と入れ替わる様に夜行性の魔物が出現する様になります。
夜は魔物との遭遇率も上がります。
季節が変われば、フィールドに出現する怪物,魔物の種族も変わります 」
救世主:スドゥ
「 本当に詳しい…… 」
神父:キャロメンド
「 聖職者ですから。
怪物や魔物の動向を知る為の術も必要となる為、深く学ぶ事になります 」
救世主:スドゥ
「 学ぶ事も覚える事もてんこ盛りなんだね…。
神父になるのって大変なんだ…… 」
修道士や神父になる努力なんて何もしてないのに、アスベイル神父と御揃いの神父服を着せてもらってるなんて、罰が当たらないかな……。
修道士や神父になりたくてもなれない人も居るだろうに──、アタシはアスベイル神父が拝借してくれた神父服を着て神父のコスプレを楽しんでる……。
最低な救世主だよねぇ……。
ニュイ
「 にゅ~~い 」
救世主:スドゥ
「 えっ?
アベルのLV??
そっか、怪物にも魔物にもLVがあるんだもんね!
神父様にもLVって有るの? 」
神父:キャロメンド
「 勿論、有ります。
私のLVは現在73です 」
救世主:スドゥ
「 へ?
LV73~~~~~!?
めちゃくちゃ高いじゃないですか! 」
戦える神父様って強~~~~!!
すっごく頼りになるじゃない!!
神父:キャロメンド
「 巡回神父をしている時には、怪物や魔物と戦闘する機会が多かったですからね。
巡回神父は意外と命懸けなので── 」
救世主:スドゥ
「 そ、そうなんだ…… 」
神父になれてからもハードモード漬けだったなんて、アタシじゃ耐えられなくて途中で逃げ出してるかも~~。
救世主:スドゥ
「 巡回神父中に挫折した神父様って居たりするの? 」
神父:キャロメンド
「 勿論、居ますね。
神父になれても巡回神父は神父見習いの立場です。
厳しい巡回神父の期間を終えないと正式な神父にはなれませんから 」
救世主:スドゥ
「 巡回神父って見習いなんだ……。
巡回神父の苦難を乗り越えないと正式な神父になれないなんて……。
とてつもなく狭き門なんだ……。
神父って超絶エリートな役職じゃないですか!! 」
神父:キャロメンド
「 そうですね 」
ニュイ
「 にゅい~~ 」
救世主:スドゥ
「 ニュイちゃん、どうしたの?
お腹空いたの? 」
ニュイ
「 にゅにゅい!
にゅ~~にゅ 」
神父:キャロメンド
「 どうやら怪物に襲われている馬車が在るそうです 」
救世主:スドゥ
「 えっ?
馬車が怪物に襲われてるの?!
ど…どうしよう、ニュイちゃん。
助けないと~! 」
ニュイ
「 にゅにゅ 」
ニュイちゃんはアタシの腕の中から飛び出すと体を大きくした。
ニュイ
「 にゅ! 」
救世主:スドゥ
「 ニュイちゃん、良いの?
アベル──、ニュイちゃんが乗せてくれるって! 」
神父:キャロメンド
「 私も良いのですか? 」
アタシとアスベイル神父と一緒にニュイちゃんに乗った。
ニュイちゃんは素早く動いてくれる。
流石はニュイちゃん、馬車よりも速いっ!!
これなら10日も掛からないで≪ セオセチマの街 ≫へ着けるね!!
軽自動車並みに速いニュイちゃんだけど、何で馬車が怪物に襲われてるのか分かったのかな??
虹色スライムって謎だらけね……。




