✒ 旅立ち 2
アタシは契約の仕方を知らないから、アスベイル神父に任せる事にした。
ニュイちゃんは一寸御機嫌斜めみたいで、不貞腐れちゃってる。
神父:キャロメンド
「 ──救世主スドゥ様、信頼と忠誠の契約が無事に終わりました。
これで私は救世主スドゥ様の眷属となれました 」
救世主:スドゥ
「 特に何も起きませんでしたね? 」
神父:キャロメンド
「 そんな事はありません。
左手の薬指を見てください。
契約の証である契約紋が現れています 」
救世主:スドゥ
「 左手の薬指……ですか?? 」
アスベイル神父に言われてアタシは自分の左手の薬指を確認した。
確かにアタシの左手の薬指には指輪みたいな印が現れていた。
薬指を近付けて見てみると、確かに何かの文字みたいに見えなくもない。
これが紋章ってヤツなのかな??
………………左手の薬指って、婚約指輪や結婚指輪なんかを嵌める為の指じゃなかったかな??
異世界の≪ コビダエニカ大陸 ≫では違うのかも知れない??
救世主:スドゥ
「 本当ですね。
遠ざけて見ると何となく指輪と見間違えてしまいそうですけど──。
これでアスベイル神父が使える魔法を僕も使う事が出来る様になったんですね?
やったぁ!! 」
折角ファンタジーな世界に来たんだもん!
魔法が使えないと実感が湧かないよね!!
神父:キャロメンド
「( ──君が本当に彼を託すに相応しい相手であるかを旅の中で見定めさせてもらうとしよう。
我が旧友に害を及ぼす救世主であったならば、君には相棒共々始末させてもらう事になるだろう。
精々、私と彼を失望させないでくれたまえよ、救世主スドゥ──いや、救世主洲導彩榎よ── )」
救世主:スドゥ
「 ニュイちゃん、頼りになる神父様が仲間になってくれたよ!
良かったね♪ 」
ニュイ
「 に゛ゅ~~にゅい゛! 」
あぁ~~……ニュイちゃんったら御立腹みたい。
どうしたら機嫌を直してくれるのかしらね?
神父:キャロメンド
「 ニュイ先輩──、不束な後輩ですが、これから宜しくお願いします 」
ニュイ
「 にゅ?
にゅ~にゅ? 」
神父:キャロメンド
「 はい♪
私はニュイ先輩の後輩です 」
ニュイ
「 にゅ~~(////)
にゅにゅ~~い! 」
神父:キャロメンド
「{ ニュイさんの機嫌、直ったみたいですね }」
救世主:スドゥ
「 えっ?
アスベイル神父──、ニュイちゃんの言葉が分かるんですか? 」
神父:キャロメンド
「 救世主スドゥ様の眷属となれた恩惠ですよ 」
救世主:スドゥ
「 そうなんですね。
ニュイちゃんの言葉が分かる人が増えて嬉しいです♪
良かったね、ニュイちゃん 」
ニュイ
「 にゅい~~ 」
神父:キャロメンド
「 救世主スドゥ様、そろそろ出発しますか? 」
救世主:スドゥ
「 はい!
此処から10日歩いたら≪ セオセチマの街 ≫に着くんですよね 」
神父:キャロメンド
「 ≪ セオセチマの街 ≫へ立ち寄るのは何故ですか? 」
救世主:スドゥ
「 あっ、そうですよね。
神殿に行ったら地図を貰えるってカテーナさんに教えてもらったので── 」
神父:キャロメンド
「 ≪ コビダエニカ大陸 ≫の地図なら私、持っていますよ。
旅の必需品ですからアースメイヤ本部から支給されるんです。
今まで私に支給された地図なら手元に有りますよ 」
救世主:スドゥ
「 えぇっ、そうなんですか?!
異動したり派遣されたりする神父様が神殿本部から地図を貰えるなんて、凄いですね! 」
神父:キャロメンド
「 巡回神父だった時にも地図は支給されていました。
何処へでも行けますよ 」
救世主:スドゥ
「 ──目的地の≪ 魔王領 ≫を目指しながら≪ 集落 ≫と≪ 村落 ≫に寄りたいです。
教会の在る≪ 町 ≫にも──。
先ずは本格的にちゃんとした長旅の準備をしたいので≪ セオセチマの街 ≫には寄りたいです。
問題は≪ セオセチマの街 ≫から何処に向かうか──なんですよね…… 」
神父:キャロメンド
「 それでは≪ 魔王領 ≫から逆算して考えましょうか 」
救世主:スドゥ
「 あの~~、アスベイル神父。
僕を呼ぶ時に “ 救世主 ” って付けるの止めませんか?
これからは一緒に旅をする仲間なんですから、普通に “ スドゥ ” で良いです。
敬称も付けないでくれた方が旅仲間っぽいと思います。
アスベイル神父の方が僕よりもお兄さんですし── 」
神父:キャロメンド
「 そうですか?
それでは──私の事は愛称で呼んでください 」
救世主:スドゥ
「 愛称……ですか? 」
神父:キャロメンド
「 はい。
今は亡き両親が呼んでくれていた愛称です 」
救世主:スドゥ
「 アスベイル神父の御両親が──。
分かりました。
何て呼べば良いですか? 」
神父:キャロメンド
「 アベル──と呼んでください。
後、私に敬語も使わないでください 」
救世主:スドゥ
「 えぇっ?!
敬語を止めるんですか?
だって──、アスベイル神父は歳上なのに── 」
神父:キャロメンド
「 スドゥ──、私は貴女の眷属になりました。
主人は眷属に敬語を使わないものです。
それに、敬語を使わない方が旅仲間らしいのではないですか? 」
救世主:スドゥ
「 ………………分かりました。
でもでも、素で敬語が出ちゃう時も有りますからね!
其処は大目に見てくださいよ?
ア──アベル(////)」
神父:キャロメンド
「 分かりました。
なるべく大目に見る様にします、スドゥ── 」
アスベイル神父は何だか嬉しそう。
まさか旅の仲間にエリート神父様が加わるなんて思ってもみなかったから吃驚ぃ~~。
アタシみたいな赤の他人が、御両親から呼ばれていた大事な愛称を呼んじゃっても良いのかな?
妹さんに怒られちゃいそうかもぉ~~~~。
でもでも、毎日タダで美丈夫なハンサム神父を目の保養に出来るんだよね!
眼福だよねぇ~~♥️
人間の話し相手が居てくれる旅も楽しいかも知れないよね?
これからも悩める相手に “ 質の高い勇気 ” を “ 御裾分け ” する為にはアスベイル神父の協力が必要不可欠かも知れないし!
旅の先輩でもあるアスベイル神父には色々と教えてもらおっと★
先ずは初心者のアタシにも出来るレベルの簡単な受け身から教えてもらわないとだよねぇ~~。
ニュイちゃんを抱っこしたアタシは、〈 大陸神コビダエニカの御遣い様 〉の像にペコリと頭を下げてから聖堂の出口へ向かって歩く。
アスベイル神父がアタシの右隣を歩く。
アスベイル神父は旅行用の革製のトランクを持っている。
エリート神父様でも魔法の鞄は持ってないのかな??
トランクを持って歩くなんて大変そう……。




