⭕ 村を目指して
──*──*──*── 森の中
ニュイ
「 にゅっにゅ~~♪
にゅっにゅ~~♪
にゅ~~にゅ♪ 」
ニュイちゃんは歌を歌いながら道案内してくれている。
スライムでも歌を歌うんだ~~。
あはは~~~~リズムに乗って歌うニュイちゃん可愛いぃぃぃぃ~~♥️♥️
洲導彩榎
「 ニュイちゃん、日が暮れる前に村へ着けるかな? 」
ニュイ
「 にゅ?
にゅ~~にゅ!
にゅい! 」
サッカーボール程のサイズだったニュイちゃんの体を大きくなる。
ニュイちゃん、急にどうしたのかな?
洲導彩榎
「 もしかして、乗れって事? 」
ニュイ
「 にゅ! 」
ニュイちゃんはアタシが乗り易い様に体の一部を凹ませてくれている。
アタシがニュイちゃんの体の上に乗ると、ニュイちゃんが動き出す。
飛び跳ねるんじゃなくて地面を這う様に動いてくれる。
洲導彩榎
「 あっ──、川が見えた!
ニュイちゃん、川だよ、川ぁ~~~~!!
この川を下った先に村が在るんだっけ?? 」
ニュイ
「 にゅ~にゅ。
にゅにゅ! 」
ニュイちゃんはアタシを乗せたまま川の中へ飛び込んだ。
ニュイちゃんは川を下るんじゃなくて登って行く。
鯉の滝登り──じゃなくて、スライムの滝登りね。
村は川の上流側に在るって事かな?
ニュイちゃんは意外にも泳ぎが上手。
川の流れに逆らって、スイスイと泳いでいる。
岩とか枝とかの障害物が有るけど、ニュイちゃんは上手く避けている。
ニュイちゃんはアクションゲームとか得意そう。
ニュイちゃんはアタシが水に濡れない様に包んでくれている。
“ 包む ” って言うより、どっちかって言うと──、ニュイちゃんの体の中に入れられてるって感じ??
スライムの中に入ったら全身を消化されちゃうんじゃ──って思ったけど、大丈夫みたい??
川の水は綺麗じゃなくて、泥水って感じで汚ない。
大雨でも降った後なのかな??
流木とか多いし、増水してるみたいだから──。
ニュイ
「 にゅ~~い 」
ニュイちゃんが川から上がると森の中に入る。
止まる事なくニュイちゃんは、どんどん前に進んで行く。
洲導彩榎
「 スライムって、こんなに早く動けるんだ。
すっごぉ~~!
ニュイちゃん、すっごぉ~~~~!!
さっすが~~、私の恩人さん!! 」
森の中を抜けると村が見えて来た!
洲導彩榎
「 村ぁ!
ニュイちゃん、村だね!
日が暮れる前に着けたよ、ニュイちゃん!
凄いよ、ニュイちゃん!
有り難う!! 」
ニュイ
「 にゅ!
にゅにゅ~~(////)」
ニュイちゃんは体の中からアタシを出してくれる。
アタシを包んでくれていた大きさからサッカーボールのサイズに縮小したニュイちゃんは自慢気に揺れている。
可愛いな~~♥️♥️♥️
アタシはニュイちゃんに両手を伸ばして抱っこする。
柔らかくてぷにぷにしていて、抜け落ちた鳥の羽根みたいに軽い。
ニュイちゃんの体の中に小さな泡がプクプクと動いて見えてるけど何だろう??
まぁ、いっか。
洲導彩榎
「 それよりも、今は村に向かってレッツゴーだよね! 」
ニュイ
「 にゅ! 」
アタシはニュイちゃんを抱っこしたまま、村を目指して歩き始めた。
5分くらい歩いたかな?
目的地──村が見えて来た!
……………………スライムと一緒だけど、村に入れてもらえるよね??
村から追い出されて野宿──何て事にはならないよね??
洲導彩榎
「 ニュイちゃん……。
村に入れてもらえるかな?
村で寝泊まりさせてもらえるかなぁ…… 」
ニュイ
「 にゅ~~?
にゅにゅ! 」
洲導彩榎
「 大丈夫なの?
ニュイちゃんに任せたら良いの? 」
ニュイ
「 にゅい! 」
洲導彩榎
「 うん。
じゃあ、ニュイちゃんに任せるね! 」
何と無くだけど、ニュイちゃんに「 任せろ! 」って言われた気がした。
ニュイちゃんと会話が出来る訳でもないし、意思の疎通が出来る訳じゃないけど、雰囲気的に分かるのが不思議。
何でかな??
──*──*──*── 村
当たり前だけど、村の中には村人達が居た。
アタシが村の中へ入ると村人達が一斉にアタシに注目した。
余所者には煩いのかも??
村人
「 ㌧㌶㍗㌫㌘㌃ 」
洲導彩榎
「 えっ?? 」
村人
「 ㌻㌣㍊㌦㌫㌣㌍ 」
洲導彩榎
「 は?? 」
村人
「 ㌣㌍㌃㌔㌻㌍ 」
洲導彩榎
「 な……何語ですかぁぁぁぁぁ!!!!
何を言ってるのか全っ然、意味不明で分からないんですけどぉぉぉぉぉ!!!! 」
日本語じゃないし、アタシが聞いた事のある外国語ですらない。
言葉が分からないって事は、日本じゃ無いんだ??
日本の何処かですらないのぉぉぉぉ!!!!
洲導彩榎
「 ニュ…ニュイちゃん──。
この人達が何を言ってるのか分かる?? 」
ニュイ
「 にゅい!
にゅにゅ 」
村人
「 ㍍㌫㌔㌣㌘㍊ 」
ニュイ
「 にゅ! 」
ニュイちゃんは体の中から何かを出し始めた。
何が出て来たのかと言うと────、川魚と砂金──さ、砂金っ??
何であんな小汚ない川から砂金が出て来るの??
洲導彩榎
「 小石みたいにデカい砂金が沢山──。
ニュイちゃんったら何時の間に砂金なんて回収してたの??
──って言うか、砂金ってレベルじゃないよねぇ!!
だって砂じゃないもん!! 」
ニュイ
「 にゅにゅ! 」
ニュイちゃんは何処か自慢気に見える。
村人達は大漁の川魚と大量の砂金を前にして目の色を変えた。
村人
「 ㌘㌃㌣㍑㌻ 」
村人
「 ㌔㍍㌢㌦㌣ 」
村人
「 ㌶㌃㌧ 」
村人の1人が走って何処かへ行ってしまった。
村人
「 ㌍㌣㌫ 」
洲導彩榎
「 えっ?? 」
村人
「 ㌔㍍㌘㍉㍊ 」
洲導彩榎
「 えぇっ?? 」
ニュイ
「 にゅ~~い。
にゅい 」
洲導彩榎
「 ニュイちゃん……。
あの人の後に付いて行けば良いの? 」
ニュイ
「 にゅにゅい 」
アタシはニュイちゃんを信じて村人に付いて行く事にした。
何処に案内されるのか不安過ぎるぅぅぅぅ~~。
──*──*──*── 民家
村人の家なのかな?
案内されてた民家の中に通されると、年配の男性と女性に出迎えをされた。
夫婦かな??
相変わらず何を話してるのか分からないけど、にこやかな笑顔で頭を下げてくれる。
アタシも頭を下げて挨拶をした。
仕草で椅子に座る様に促されたから、椅子に座らせてもらう。
言葉が通じないって辛い。
何を話してるのか全く分からないから不安だし、一寸怖いんだよね……。
アタシは笑顔を絶やさないで言葉の分からない話を聞くぐらいしか出来ない。
どうすりゃ良いのよ。
ニュイ
「 にゅ~~い 」
ニュイちゃんが体の中から何かを出した。
洲導彩榎
「 紙とペン??
ニュイちゃん、何で紙とペンを持ってるの?? 」
ニュイ
「 にゅ~~ 」
ニュイちゃんは器用にペンを動かすと文字を書き始めた。
洲導彩榎
「 ニュ…ニュイちゃん!?
スライムなのに字が書けるのぉ~~??
凄いんですけどぉ!! 」
ニュイ
「 にゅ! 」
年配の夫婦はニュイちゃんが紙に書いた文字を見て驚いた顔をしながら感心している。
文字を書くスライムって非常に珍しいのかも??
年配の夫婦とアタシを民家に案内してくれた若者はニュイが紙に書いている文字を熱心に読んでいる。
年配の夫婦が若者と何かを話しているけどアタシには内容が分からない。
若者が民家から出て行った。
年配の夫婦の奥さんが立ち上がって奥の部屋へ行ってしまう。
残されたのは年配の男性とニュイちゃんとアタシだ。
どうしたら良いの??
ニュイちゃんは相変わらず、紙に文字をスラスラと書いている。
見た事の無い文字。
何処の世界の文字だよ、マジでぇ!!
30分くらい経ってから、若者が民家へ戻って来た。
1人で出て行ったのに、戻って来たのは2人で、知らない女性を連れて来たみたい。
年配の男性が立ち上がって見知らぬ女性を出迎える。
女性も年配者だね。
う~~ん……、格好からして聖職者ぽいかも??
やっぱり何を話してるのか分からない。
聖職者風の年配女性がアタシの前に歩いて来る。
アタシを見て嬉しそうに微笑んでくれる。
涙ぐんでいるのは何で??
聖職者風の年配女性は手を髪に伸ばす。
髪留めを摘んで、引き抜いた髪留めをアタシの方に向けて来た。
髪留めは【 ハリーポッターシリーズ 】で、お馴染みの魔法の杖みたい。
短い魔法の杖って感じ。
その魔法の杖の先端をアタシの方に向けた聖職者風の年配女性は、何か短い言葉を唱えた。
聖職者
「 これで此方の世界の言葉が分かる様になられた筈です 」
洲導彩榎
「 えっ??
あっ──本当だ!!
何を言ってるのか分かる!! 」
ニュイ
「 にゅ~~ 」
洲導彩榎
「 何で急に?? 」
聖職者
「 魔法を掛けさせて頂きました 」
洲導彩榎
「 魔法……??
えっ魔法!?
この世界には魔法が有るんですか!? 」
聖職者
「 はい。
この世界には魔法が存在しております。
この世界の事をワタクシに御話させてください 」
洲導彩榎
「 この世界の事──。
お願いします!!
私の名前は洲── 」
ニュイ
「 にゅにゅい! 」
洲導彩榎
「 ニュイちゃん?
どうしたの?? 」
聖職者
「 流石は相棒様ですね。
聡明であり賢明な判断です 」
洲導彩榎
「 え??
あのぉ~~何がですか?? 」
聖職者
「 この世界では御自分の名前──本名を名乗らぬ様に気を付けてください 」
洲導彩榎
「 えぇ??
名前を名乗ったら駄目なんですか?
どうして── 」
聖職者
「 はい。
ことに異世界から転移召喚されました救世主様は特にです 」
洲導彩榎
「 はい??
異世界から転移召喚??
救世主様ぁ??
……………………私がですかぁぁぁぁぁ!!?? 」
聖職者
「 はい。
貴女様は≪ コビダエニカ大陸 ≫より異なる世界から転移召喚されました救世主様で御座います 」
洲導彩榎
「 ………………………………はいぃぃぃぃぃぃ~~~~????
どゆことですかぁぁぁぁ!! 」
ニュイ
「 にゅ~~い 」
アタシが転移召喚された救世主様って──、一体どういう事なの!?
まるでライトノベルや漫画,アニメで定番且つお馴染みの転移召喚モノみたいな展開なんですけどぉ!!