✒ 返してもらいたい 1-1
──*──*──*── 4日後
アタシが≪ コビダエニカ大陸 ≫に迷惑千万な転移召喚をされた日から10日が経った。
1日目は気付いたら空の上に居て、何故だか問答無用で恐怖のスカイダイビングを体験していた。
肝が冷えたし、寿命も縮んだ気がする。
森に落下しそうだったアタシはニュイちゃんに助けられて、森の中に見付けた≪ 村 ≫を目指したんだよね。
2日目は≪ アルベス村 ≫に到着して、聖職者のカテーナさんと出逢ったんだよね。
言葉が通じなかったアタシにカテーナさんは魔法を掛けてくれて、コビダエニカ大陸語を分かる様にしてくれた親切な聖職者さんだった。
3日目は≪ アルベス村 ≫を出発して、筏に乗って川を下って森を抜けたんだよね。
ニュイちゃんのお蔭で、夜通し移動が出来て、徒歩で5日も掛かる≪ 村落 ≫へは翌日に到着する事が出来た。
4日目は到着した≪ 村落 ≫の教会に行って、親切なアスベイル神父と出逢って、教会で御世話になる事になった。
5日目からは修道士見習いの法衣を借りて、修道士見習いとして、アスベイル神父と一緒に教会へ来る村人達に顔を覚えてもらえる様に挨拶を頑張った。
6日目にはロレンダ君とミクシャルさんと出逢って、顔見知りになれた。
アスベイル神父に御説教されちゃったけどね~~。
7日目にはロレンダ君の友達と顔見知りになって、一緒に1日中遊んだ。
アタシが知ってる遊びを幾つか教えたら、盛り上がって楽しかったな~~♪♪♪
8日目と9日目は生憎の雨だったから、教会の中で色々して過ごしたんだよね。
そして、10日目の今日に至る訳で──、アタシは教会の敷地内に作られている花壇の花に水をあげていた。
ニュイ
「 にゅにゅ、にゅ~ 」
救世主:スドゥ
「 ニュイちゃん?
どうしたの? 」
ニュイ
「 にゅい~~にゅ! 」
救世主:スドゥ
「 えっ?
ロレンダ君が来てるの?
元気がない? 」
ニュイ
「 にゅにゅ 」
救世主:スドゥ
「 何か遭ったのかな?
心配だね、声掛けてみよっか? 」
ニュイ
「 にゅ~~にゅ 」
アタシは花壇の水やりを中断して、教会の中へ入る事にした。
──*──*──*── 教会
──*──*──*── 聖堂
聖堂に入るとロレンダ君を見付けた。
ニュイちゃんの言う通り、何だか元気が無さそう。
ニュイちゃんが一足先にロレンダ君の元へ移動する。
アタシはニュイちゃんを追い掛ける様にロレンダ君に近付いた。
救世主:スドゥ
「 ロレンダ──、こんにちは。
3日ぶりだね? 」
ロレンダ
「 スドゥさん……。
こんにちは! 」
救世主:スドゥ
「 元気なさそうだね 」
ロレンダ
「 え…… 」
救世主:スドゥ
「 ニュイちゃんが教えてくれたんだ 」
ロレンダ
「 ニュイちゃんが……。
ニュイちゃんは凄いね…… 」
救世主:スドゥ
「 ロレンダ、何が遭ったの?
話くらいなら聞くよ 」
ロレンダ
「 ………………スドゥさん…… 」
救世主:スドゥ
「 場所を変えようか?
裏庭は、どうかな? 」
ロレンダ
「 う、うん…… 」
一寸強引だったかな?
ロレンダ君には迷惑だったかも知れない。
コミュニケーション能力の乏しいアタシには、悩み事を抱えてる人に対する接し方なんて分かんないのよぉ~~~~。
──*──*──*── 裏庭
アタシはロレンダ君と一緒に設置されているベンチに腰を下ろして座る。
ロレンダ君は元気が無い。
ニュイちゃんがロレンダ君の膝の上にジャンプして乗った。
もしかして、ニュイちゃんはロレンダ君の気を紛らわせようとしてくれてるのかも知れない。
アタシが頼まなくても動いてくれるなんて、ニュイちゃんって有能過ぎるぅ~~。
ロレンダ君は俯いて黙ったままだね。
アタシから誘った訳だし、アタシから話を聞き出さないとだよね?
クッキーの味見の感想は前に聞いちゃったし……。
話題が無いって困るね!
救世主:スドゥ
「 …………ロレンダが悩んでる事に、僕は力になれるかな? 」
ロレンダ
「 …………………… 」
何て言えば良いんだろうね??
アタシが悩んでる時、誰からも声を掛けられた事が無いから、どんな言葉を掛けたら良いのか分からないのよねぇ~~。
親身になって相談してもらえたり、慰められた事が無いと、こういう時に困っちゃうね!
救世主:スドゥ
「 ………………御免ね……余計な事しちゃったよね?
誰にも構われたく無い時だって有るよね?
抱えてる悩みを1人で悶々と悩み抜きたい時だって有るもんね……。
僕…………お節介だったね………… 」
はぁ~~~~、こういう時、“ ゆっこ ” と “ もなこ ” は悩める子供に対して、どんな風に接するんだろうね~~??
想像も付かないし、御手上げだよぅ~~~~。
アタシにはハードルが高過ぎたみたいね。
ロレンダ
「 ………………スドゥさん…………“ ゆっこ ” と “ もなこ ” って何?? 」
救世主:スドゥ
「 へ?
“ ゆっこ ” と “ もなこ ” ??
あれ──、聞こえちゃってた?? 」
ロレンダ
「 うん…………。
お菓子の名前?
それとも新しい遊びの名前? 」
救世主:スドゥ
「 あはは~~~……“ ゆっこ ” と “ もなこ ” は僕の友達だよ。
故郷のね 」
ロレンダ
「 友達なの?
………………どんな友達だったの? 」
救世主:スドゥ
「 う~~ん、明るくて元気だったね。
何時もニコニコしてる癒し系が “ もなこ ” だね。
“ ゆっこ ” は辛口で毒舌なのが偶に傷だけど、コミュ力が高くて、知り合いが多かったね 」
ロレンダ
「 こみゅりょく……って何?? 」
救世主:スドゥ
「 人と仲良くなれる能力かな。
社交性に長けてる人の事だね 」
ロレンダ
「 辛口で毒舌なのに知り合いが多いの? 」
救世主:スドゥ
「 “ ゆっこ ” は容姿が良くて可愛かったからね~~。
彼氏なんて日替わりで違ってたんだよ。
凄くモテる子だったんだよね 」
男子の方から喜んで貢いでたからな~~。
ファンタジーじゃないけど、魅了の能力でも持ってたんじゃないのぉ~~。
“ ゆっこ ” と “ もなこ ” は、どうしてるのかな??
アタシみたいに≪ コビダエニカ大陸 ≫に転移召喚されちゃってるのかな??
だけど、アタシの近くに “ ゆっこ ” と “ もなこ ” は居なかった。
アタシとスカイダイビングをしてなかった。
“ ゆっこ ” と “ もなこ ” はアタシみたいに≪ コビダエニカ大陸 ≫に転移召喚されてないのかも知れない。
故郷の日本に居て、コンビニから出て家に帰ってるかも知れない。
今のアタシと違って、最後の夏休みを2人で満喫してるのかも知れない……。
一寸悔しいぃ~~~~ ・゜・(≧口≦)・゜・
ロレンダ
「 スドゥさんは…………友達に会えなくなって寂しい? 」
救世主:スドゥ
「 う~~ん…………そうだね。
懐かしむ時も有るし、寂しいんだと思うよ。
2人は僕より確りしてるから、僕に会えなくなっても気にしてないかも知れないかな 」
ロレンダ
「 友達なんでしょ?
何で気にしないの? 」
救世主:スドゥ
「 僕達の進む進路が違うからかな? 」
通う高校は別々だもんねぇ。
“ ゆっこ ” は家族揃って海外へ引っ越すし、“ もなこ ” は県外の高校を受けて、寮通いする──って言ってたし。
暫くは連絡を取り合うだろうけど、高校生になったら新しい環境に慣れる必要が有ったり、新しい友達と楽しく過ごす様になるから、中学校の友達との連絡なんて簡単に音信不通になっちゃうと思う。
海外へ引っ越した “ ゆっこ ” とは国際電話になっちゃうから、連絡を取り合うなんて無理だしぃ~~。
ロレンダ
「 しんろ?? 」
救世主:スドゥ
「 うん……。
僕は新婚ホヤホヤの兄貴に教会へ放り込まれた口だけど──。
“ ゆっこ ” の場合は、“ ゆっこ ” が成人したら家族で≪ 村 ≫を出て、≪ 王都 ≫を目指すって言ってたね。
“ もなこ ” の場合は、成人したら “ もなこ ” 自身が商人と一緒に≪ 村 ≫ を出て、≪ 街 ≫を目指して旅をするって言ってたよ。
僕は成人前に教会へポイされたからね、“ ゆっこ ” と “ もなこ ” が≪ 村 ≫から出てるのか分からないんだ 」
ロレンダ
「 ………………スドゥさんは……お兄さんに捨てられちゃったの? 」
救世主:スドゥ
「 あはは、違うよ。
僕は昔から酷い人見知りだったんだ。
それで兄貴が嫌でも人と接しないといけない教会へ預けたんだよ。
謂わば、克服させる為のショック療法だよね。
今は……人見知りも少しは改善されてるかな? 」
ロレンダ
「 ………………ロレンダさんも大変だったんだね…… 」
救世主:スドゥ
「 あはは……。
まぁ……教会に入って修道士や修道女を目指す人には、訳ありの人が多いみたいだよ。
孤児からエリート神父になる人も居るみたいだし。
アスベイル神父から教えてもらったんだけど、司教や大司教も身寄りの無い孤児から実力でエリート出世した猛者らしいよ。
若い時は冒険者と一緒に怪物退治とかバリバリこなしてたらしいんだよ。
戦える聖職者って、凄いよね!!
拳で怪物を倒してたらしいからさ! 」
ロレンダ
「 そ…そうだね……。
戦える神父様が居てくれるから≪ 村落 ≫も安全なんだよね…… 」
救世主:スドゥ
「 流石に孤児から大出世しても教皇にはなれないみたいだけどね 」
ロレンダ
「 教皇さまは王族の血縁者から選ばれるんだもんね 」
救世主:スドゥ
「 そうそう!
初代国王と初代聖女との間に産まれて且つ、聖女の能力を受け継いでる血縁者じゃないと教皇の資格が無いんだよね。
聖女の子孫が代々教皇をしてるのも歴史があって凄いよね。
教皇には性別は関係無いみたいだから、男性の教皇だったり、女性の教皇だったり──、時代に依って違うみたいだし 」
ロレンダ
「 スドゥさんも司教様や大司教様を目指してるの? 」
救世主:スドゥ
「 う~~ん、僕は神父で良いかな~~。
あんまり出世すると面倒そうだし……。
修道士試験に受かれなくても、教会には色んな役職が有るし、裏方で仲間を支える聖職者として働けれたら良いかな~~。
神父試験に合格して、神父見習いになったら、巡回神父として鬼ハードな激務をこなさないといけないみたいだから、出世を目指すべきか進路に悩むよ…… 」
はいっ──、ぜぇ~~んぶアスベイル神父と考えた嘘っぱちの設定でっす★
アタシは “ 救世主 ” で女の子だから、神父にはなれないんだよねぇ~~。
ロレンダ
「 ………………普通は教会に通ったり、信者として御祈りしたり、バザーに参加して楽しむ事には反対されないけど──、教会に入団して聖職者を目指す事は反対されちゃうもんね…… 」
救世主:スドゥ
「 ははは……。
親は心配するだろうね。
教会に入団したら、自分の身を守れるくらい強くなれるけど、“ 聖職者 ” になっちゃうからね。
洗礼を受けて〈 大陸神コビダエニカ様 〉に心身を捧げる誓いを立てるから、結婚して家族を持つ事を禁止されちゃうし。
親ってさ子供には結婚して、夫婦で授かった子供を育てながら家族で幸せに暮らしてほしい──って願っちゃうから、反対されるのは仕方無いよ。
僕みたいな例外な家庭もあるけどね★ 」
ロレンダ
「 うん…… 」
救世主:スドゥ
「 ロレンダは──僕みたいに修道士見習いになりたいの?? 」
ロレンダ
「 えっ?
ち…違うよぉ~~!!
『 聖職者になりたい 』なんて言ったら、お父さんから逆さ吊りされて、お尻ペンペンされちゃうよぉ~~ 」
救世主:スドゥ
「 そ…そうなんだ……。
逆さ吊りにされるのは嫌だね…… 」
ロレンダ
「 お尻ペンペンも痛いから嫌だよ! 」
救世主:スドゥ
「 だよね~~ 」
確かに、お尻ペンペンは痛そうだから嫌かも。
長い竹定規でベシベシ叩かれるのかな??
そう言えば、小学生の時に、長い竹定規で机をバシバシと叩いてた先生が居たな~~。




