⭕ 顔見知りになろう 2-2
???
「 ──居ないわね。
何処に行っちゃったのかしら?
さっき迄は確かに居たのに…… 」
女性は辺りを見回して人を探していた。
探しているのは神父だ。
キョロキョロと辺りを見回している女性の前に1体のスライムが現れた。
光を反射させているのか、虹色に見える珍しいスライムだ。
スライムは女性に近付く。
神父アスベイル・キャロメンドが教会へ避難し易くなる様に、女性に背中を向けさせ様と考えて動いている。
女性は虹色に見えるスライムに見惚れている。
スライムは女性の注意を引く為にジャンプをしたり、クルクルと回ったり、様々なアクションを起こしている。
何かをしているスライムを珍しがって、女性の周りに村人が集まり始めていた。
救世主:スドゥ
「( ニュイちゃん、優秀ぅ~~。
こんなにも人が集まって来てたら、アスベイル神父も教会に避難し易いね! )」
アタシは女性に声を掛ける事にした。
アスベイル神父をストーカーしてる相手が女性だから、修道士の姿で良かったかも。
修道女の姿をしてたら刃物で刺されていたかも知れないしぃ~~。
救世主:スドゥ
「 ねぇねぇ、お姉さん、この辺にスライムが来なかった? 」
お姉さん
「 えっ?
スライム?? 」
救世主:スドゥ
「 うん。
光を吸収して虹色に見えるスライムなんだけど──。
僕のテムモンなんだ 」
お姉さん
「 それなら、さっき見たわよ。
人集りが出来てるでしょ?
──あの中に居ると思うわよ 」
救世主:スドゥ
「 そうなんだ?
見付かって良かった~~。
そう言えば、お姉さんも何かを探してたの? 」
お姉さん
「 ………………もう良いの。
居なさそうだし……。
今日は帰るわ 」
アスベイル神父のストーカー(?)は諦めたのか帰る事にしたみたい。
救世主:スドゥ
「 ──あの、これ、クッキーを作ったんです。
良かったら、味見をして感想を聞かせてくれませんか? 」
お姉さん
「 クッキー?
有り難う。
私、クッキーには少し煩いわよ?
それでも良いかしら? 」
救世主:スドゥ
「 はい!
アドバイスしてもらえたら嬉しいです! 」
お姉さん
「 良いわよ。
味見させてもらうわ 」
アタシはアスベイル神父のストーカー(?)にクッキーを包んだ布を手渡した。
ストーカー(?)もとい、巻き毛のお姉さんと一緒に近くに設置されているベンチに腰を下ろして座る。
お姉さんの名前は “ ミクシャル ” って言うらしい。
ミクシャルさんはアタシが作ったクッキーを食べると、かなり辛口なアドバイスをしてくれた。
クッキーに煩いのは本当みたいね。
救世主:スドゥ
「 ──ミクシャルさんは、教会が開催するバザーでクッキーを提供されてるんですね。
ミクシャルさんの作ったクッキー、食べてみたいです! 」
ミクシャル
「 そう?
じゃあ、今度、作ったクッキーを持って来るわね 」
救世主:スドゥ
「 有り難う御座います!
楽しみにしてます。
他にもスイーツを作られるんですか? 」
ミクシャル
「 ケーキとかジャムとか作るわね。
料理は昔から得意なの 」
救世主:スドゥ
「 ミクシャルさんって家庭的なんですね。
手料理も食べてみたいかも~~ 」
ミクシャル
「 からかわないで(////)」
もしかして、照れてる??
満更でもないかも~~??
救世主:スドゥ
「 あの──、初めて出逢ったのに図々しい事を言っちゃって御免なさい……。
迷惑でしたよね……(////)」
ミクシャル
「 迷惑だなんて──。
そんな顔しないで?
貴方は修道士見習いの子よね?
新しく入って来たのかしら? 」
救世主:スドゥ
「 あ……はい、そうなんです。
…………僕……昔から人見知りで…………人と上手く接する事ができなくて……(////)
………………兄貴に入れられちゃいました。
ショック療法って言うらしいです 」
ミクシャル
「 まぁ?!
お兄さんに…… 」
救世主:スドゥ
「 はい……。
教会に入れば職業上、嫌でも人と関わる事になるらしいので──。
人見知りも克服し易いだろう──って言われて……。
仕方無い……ですよね?
当時の兄貴は結婚したばかりで…………新婚さんだったから…………。
幾ら身内だからって、弟が一緒に暮らしてたらね?
ほら……お嫁さんも気にするだろうし??
色々と── 」
ミクシャル
「 ──ふふっ(////)
そうね──、新婚さんだものね(////)
君は家族を思いやれる優しい子なのね。
誰かを思いやれる自己犠牲は簡単に出来る事ではない難しい事よ。
その気持ちを忘れなければ、きっと良い神父様になれると思うわ 」
救世主:スドゥ
「 有り難う御座います(////)
先ずは修道士になる為の試験に合格しないとですけど…… 」
ミクシャル
「 ふふふっ。
神父様への道は険しいものね 」
身の上話をしたお蔭なのか、アタシはミクシャルさんと大分打ち解ける事が出来たみたい。
身の上話はアスベイル神父と一緒に考えた設定で、嘘っぱちなんだけどね。
ミクシャルさんとは知り合いになれたかな??
ミクシャルさんとアタシは日が暮れるまで話した。
ミクシャルさんは裁縫も得意だし、編み物も得意らしい。
家庭的な女性って何か良いよね!
同性だけど、憧れちゃうな~~(////)
話してる感じでは至って普通……の人なんだよねぇ。
神父をストーカーするくらいだから、何かヤバい部分が有るんだろうけど……。
普通に良いお姉さんのなんだよねぇ……。
話してても楽しいしなぁ~~。
ミクシャルさんは子供の頃、一時的だったけど、孤児院で暮らしていた事が有ったらしい。
孤児で暮らしていた時に通いで来てくれていた修道女から掃除の仕方,裁縫の仕方,料理の仕方を教わったみたい。
孤児院では、誰かに頼る前に自分の身の回りの事は自分で出来る様にしないといけなかったらしくて、自立性を高める為に教えられたみたい。
通いで来てくれていた修道女は曜日毎に違っていて、教えてくれる内容も違っていてたみたい。
≪ 街 ≫とか≪ 都 ≫とか≪ 王都 ≫になると、神殿が孤児院を経営していたり、神殿の一部が孤児院になっていたりして、孤児を修道士見習い,修道女見習いにする為に無償で読み書き,算術を学習させているみたい。
無償って言うより、出世払いさせる気満々だよね?
孤児の中に優秀で有能になる可能性を持つ原石が紛れ込んでる事も無いとは言えないし、孤児院は人材の宝庫かも知れない。
仮に修道士見習い,修道女見習いになれなくたって、読み書き,算術が出来るなら働き口なんて幾らでも見付かると思うし、
何等かの形で神殿や教会と関わった仕事に就けるかも知れないよね?
行く当ての無い孤児からしても神殿側にとってもwin-winな関係なんじゃないかな??
≪ 町 ≫には教会だけじゃなくて神殿も在るらしいから、教会が孤児院を兼任してる所もあるみたい。
≪ 集落 ≫で出た身寄りの無い子供は、教会経由で孤児院の在る≪ 村 ≫や≪ 町 ≫へ連れて行かれるみたい。
ミクシャルさんは一時的に孤児院に預けられていただけだから、修道女見習いには志願しなかったみたい。
ミクシャルさん本人は志願しても良かったらしいんだけど、両親が反対して許してくれなかったそう。
結婚して、家庭を持って、子供を産んで、親になって──、そんな当たり前の生き方をしてほしかったらしい。
世界は違っても両親の子供への思いってのは似てるみたい。
アタシの故郷では完全に世間体を重視しての事だったけどね!
ミクシャル
「 ──あらやだ!
すっかり話し込んじゃったわね(////)
私ったら、お喋りのし過ぎね(////)」
救世主:スドゥ
「 そんな事ないです。
為になる事を教えてもらえて勉強になりました 」
ミクシャル
「 そうかしら?
役に立てたのなら良かったわ 」
アタシはミクシャルさんとバイバイして、ベンチで分かれた。
結局、ミクシャルさんが何でアスベイル神父をストーカーしてるのかは謎に終わっちゃった。
ニュイ
「 にゅ~~にゅ 」
救世主:スドゥ
「 ニュイちゃん!
日も暮れちゃうから教会に戻ろっか? 」
ニュイ
「 にゅ~~ 」
そんな訳で、ベンチから腰を浮かせて立ち上がったアタシは、ニュイちゃんを抱っこして教会へ歩いた。
遅くなったアタシとニュイちゃんは、アスベイル神父から心配された。
夕食前にアスベイル神父から、きっつぅ~~~~い御説教されちゃった。




