✒ 顔見知りになろう 1
──*──*──*── 翌日
──*──*──*── 教会・前
子供
「 こんにちは、キャロメンド神父さま 」
神父:キャロメンド
「 こんにちは、ロレンダ君。
今日も御祈りに来てくれたんですね。
有り難う御座います 」
子供
「 うん…… 」
神父:キャロメンド
「 おやおや、顔色が良くないですね。
帰る前に医務室で休んで行くように── 」
ロレンダ
「 平気だよ~~ 」
神父:キャロメンド
「 無理をしてはいけません。
子供が神父の厚意に遠慮しては、〈 大陸神コビダエニカ様 〉も悲しまれます。
{ 実は焼き立てのクッキーがあるんです。
皆さんには内緒で味見をしてもらえませんか? } 」
ロレンダ
「 えっ?!
{ 神父さまがそんな事を言っちゃって良いの?? }」
神父:キャロメンド
「{〈 大陸神コビダエニカ様 〉からの御告げですから大丈夫ですよ }」
ロレンダ
「{ 聖女さまじゃないのに神父さまにも御告げが聞こえるの??}」
神父:キャロメンド
「{ 時々です。
内緒ですよ? }」
ロレンダ
「{ うん……。
御祈りしたら医務室へ行けば良いの? }」
神父:キャロメンド
「{ スライムが案内してくれます。
スライムを追い掛けてください }」
ロレンダ
「 スライム??
分かったよ、キャロメンド神父さま! 」
神父アスベイル・キャロメンドに笑顔を見せたロレンダは、教会の中へ入っていった。
──*──*──*── 教会
──*──*──*── 聖堂
聖堂の中央を歩き、〈 大陸神コビダエニカの御遣い様 〉の石像に対して、向かい合わせる様に立ったロレンダは、胸元で左右の指を組むと両目を閉じて静かに御祈りを捧げた。
両目を開けたロレンダの視界に1体のスライムが入る。
スライムはピョンピョンと飛び跳ねて体をプルプルと揺らしている。
ロレンダ
「( もしかして、あのスライムかな?? )」
ロレンダはスライムの後を追い掛ける事にした。
聖堂の左側へ向かって歩き、角を曲がるとスライムが待ってくれていた。
ロレンダは意を決してスライムを追い掛ける為に駆け出した。
教会の裏口を通ると、裏庭へ出る。
──*──*──*── 裏庭
教会には中庭も有るが、裏庭には菜園があり、修道士や修道女が当番制で世話をしている。
今は修道士や修道女は居ない様だ。
裏庭には木陰が有り、ひっそりとベンチが置かれている。
ベンチには誰かが座っていた。
神父とも修道士とも色違いの法衣を着ているのを見ると修道士見習いかも知れない。
ロレンダを案内してくれたスライムがベンチに向かってピョンピョン飛びながら移動している。
ロレンダ
「 あの人のスライムなのかな?? 」
ベンチに座っている修道士見習いの膝の上にスライムがジャンプして乗っかると、修道士見習いはスライムを右手で撫でている。
ロレンダ
「 …………あ、あの………… 」
ロレンダは思い切って修道士に声を描けてみた。
ロレンダの声に気付いたのか、修道士見習いは右手を上げて振ってくれる。
スライムも修道士見習いの膝の上でジャンプしている。
ロレンダはベンチに向かって歩く事にした。
救世主:スドゥ
「 こんにちは。
教会に御祈りに来てくれた子かな? 」
ロレンダ
「 う、うん。
キャロメンド神父さまに言われて──。
スライムの後を着いて行く様にって…… 」
救世主:スドゥ
「 もしかして、クッキーの味見を頼まれた子かな? 」
ロレンダ
「 う、うん…(////)」
救世主:スドゥ
「 じゃあ、此方に座って!
味見をしてほしいクッキーはコレだよ 」
アタシは立ってる男の子にベンチへ座る様に促した。
アタシの右隣に腰を下ろしてベンチに座った男の子に清潔な布で包んだクッキーを手渡す。
ロレンダ
「 わぁ~~!
美味しそうなクッキーだね! 」
救世主:スドゥ
「 そうかな?
アスベイル神父に必要な材料を用意してもらって作ってみたんだ(////)
見よう見真似だから美味しく出来てるか自信は無いけど……(////)」
ロレンダ
「 お兄ちゃんが作ったの? 」
救世主:スドゥ
「 そうだよ~~。
僕は修道士見習いのスドゥだよ。
アスベイル神父が担当者なんだ 」
ロレンダ
「 キャロメンド神父さまが担当なの?
凄いね!
僕はロレンダだよ 」
救世主:スドゥ
「 宜しくね、ロレンダ君。
味見してくれるかな 」
ロレンダ
「 うん!
このクッキーには何が入ってるの?? 」
救世主:スドゥ
「 微塵切りにした蜜柑の皮だよ。
実を入れると生地がベタベタになっちゃうからね。
コレにはジャムが入れてあるし、コレには── 」
アタシは1枚1枚、丁寧にクッキーの説明をする。
ロレンダ君はアタシが説明したクッキーを1枚ずつ食べてくれる。
明らかに変わった食材を使って作ったクッキーなのにロレンダ君は、味わってくれてるみたい。
救世主:スドゥ
「 ニュイちゃんも食べる? 」
ニュイ
「 にゅ~~(////)」
アタシはニュイちゃんにもクッキーをあげる。
ニュイちゃんの中にクッキーを入れると、ニュイちゃんの体内でクッキーがシュワワワワ~~~~って、綺麗に溶けちゃう。
ニュイ
「 にゅにゅ~~♪ 」
ニュイちゃんはクッキーを食べたいのかおねだりして来る。
救世主:スドゥ
「 次は何れを食べたい? 」
ロレンダ
「 スドゥさんのスライムなの? 」
救世主:スドゥ
「 そうだよ。
僕がテイムした僕だけのテムモンだよ。
ニュイちゃんはね、僕の恩人なんだ 」
ロレンダ
「 テイム……。
スドゥさんは修道士見習いなのに、テイマーなんだね!
凄いや!! 」
救世主:スドゥ
「 あはは……。
僕は怪物を1体しかテイムが出来ないんだ…… 」
ロレンダ
「 そうなんだ。
でもでも1体だけでもテイム出来るなんて凄いよ~~!!
ランクは幾つなの? 」
救世主:スドゥ
「 へ?
ランクって?? 」
ロレンダ
「 テイマーにはランクが有るんだよ。
スドゥさん、テイマーなのに知らないの?? 」
救世主:スドゥ
「 あははは……。
ロレンダ君は知ってるんだ?
良かったら僕に教えてくれないかな? 」
テイマーにランクが有るなんて初耳なんですけどぉ~~!!
アタシの知らない事が多過ぎるよね!
ロレンダ
「 うん、良いよ!
──スドゥさんは僕よりお兄さんだから、“ ロレンダ ” で良いよ(////)」
救世主:スドゥ
「 有り難う、ロレンダ! 」
ロレンダ
「 エヘヘ(〃⌒ー⌒〃)
──あのね、ランクは★の数で決められてるんだよ!
★は1 ~ 5まで有るよ。
★5のテイマーは、魔物使いになれる唯一のテイマーなんだよ。
★5のテイマーは1000人に1人の確率で、凄く珍しいんだよ 」
救世主:スドゥ
「 へぇ~~。
★5のテイマーって珍しいんだね。
魔物使いになれるなんて凄いね 」
ロレンダ
「 ★4のテイマーは500人に1人,★3のテイマーは100人に10人,★2のテイマーは100人に70人,殆んどのテイマーは★1なんだよ 」
救世主:スドゥ
「 へぇ~~。
★1のテイマーが多いんだね。
★が高いと何か違いがあるの? 」
ロレンダ
「 うん!
テイムを出来る数が違ったり、テイムの出来る怪物の種類も違うんだって。
★が高いと強い怪物をテイム出来るんだよ。
テイマーは自分と同じ★の怪物迄をテイム出来るんだ 」
救世主:スドゥ
「 自分と同じ★の怪物迄をテイムか……。
じゃあ、★1のテイマーは★1の怪物しかテイム出来ないって事かな? 」
ロレンダ
「 そうだよ 」
救世主:スドゥ
「 僕の★は幾つだろう?
ロレンダ、★を知れる方法とか場所って有るのかな? 」
ロレンダ
「 うんとねぇ──、神殿に行くと司教さまに調べてもらえるみたいだよ。
★の無いテイマーは、大司教さまから聖女さまや勇者さまになる為の儀式を受けるんだって 」
救世主:スドゥ
「 へ…へぇ~~。
★の無いテイマーは聖女様や勇者様になれちゃうなんて凄いね…… 」
ロレンダ
「 うん!
でもね、★の無いテイマーは1万に1人居るか居ないかなんだって。
★5のテイマーより珍しいんだよ 」
救世主:スドゥ
「 そう……なんだね~~ 」
ロレンダ
「 女の人だと聖女さまになって、男の人だと勇者さまなるんだよ 」
救世主:スドゥ
「 そうなんだ~~。
神殿に行かないと分からないんだね……。
ロレンダ、教えてくれて有り難ね 」
ロレンダ
「 良いよ~~!
クッキーの御礼だから!
珍しいクッキーだったけど、美味しかったよ♪ 」
救世主:スドゥ
「 そうなの?
良かったぁ~~。
大人の味覚と子供の味覚って違うんだね。
修道士見習いや修道女見習いにも味見してもらったんだけど、不評だったんだよね~~ 」
ロレンダ
「 そうなの?
ねぇ、余ってるなら貰っても良いかな?
友達にも味見してもらうよ? 」
救世主:スドゥ
「 良いの?
沢山作っちゃったから貰ってもらえると助かるな 」
アタシは清潔な布に包んでるクッキーをロレンダ君に手渡す。
ロレンダ君は嬉しそうに笑ってくれた。
ロレンダ
「 僕、そろそろ帰らないと!
スドゥさん、クッキー有り難う! 」
救世主:スドゥ
「 うん、僕の方こそ助かったよ。
ロレンダ、有り難ね。
クッキーの感想、聞かせてね 」
そんな訳で、アタシはロレンダ君とバイバイした。
ロレンダ君はクッキーを包んだ布を大事そうに抱えて教会の中へ入って行った。
裏庭から中庭へ移動するのも聖堂へ出るのも、一旦教会の中へ入らないといけないんだよね。
救世主:スドゥ
「 ニュイちゃん、アタシ達も中に入ろっか? 」
ニュイ
「 にゅにゅ! 」
アタシはニュイちゃんを抱っこして、ベンチから腰を浮かせて立つ。
救世主:スドゥ
「 アスベイル神父は教会の外だったよね?
行こっか 」
ニュイ
「 にゅい~~ 」
アタシが教会の中へ入ろうとしたら、入れ違いで修道士の5人が修道士見習い3人を連れて裏庭へ出て行った。
魔法の練習かな??
教会の決まりで魔法の練習は裏庭で行う事になってるんだよね~~。
熱心だよね。
アタシも簡単な生活魔法くらい使えたら良いのにぃ~~!!