表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/7

第6話 最上ありがとう、やっぱりお前って良い奴だな

 カフェを出た後俺達は桐生さんの希望でゲームセンターへと来ていた。放課後という事もあって制服姿の学生の姿がかなり目立っている。


「よし、とりあえずこれをやろうぜ」


「まさかのゲームセンターに来てする事がそれなのかよ。桐生さんって本当に女子なのか?」


「私はどこからどう見ても立派な女子だろ、ひょっとして最上の目は節穴か?」


「そう言うわけじゃないけど」


 普通の女子ならプリクラとかをやりそうなものだが桐生さんはパンチングマシンを選んだ。せっかく人生で初めて女子と一緒にゲームセンターへ来ているというのに全くと言って良いほど色気が感じられない。

 まるで同性の友達と来ているような気分だ。まあ、俺には同性の友達すらいないため本当にこんな気分になるのかどうかは分からないが。

 俺がそんな悲しい事を一人で考えているうちに桐生さんはパンチングマシンにお金を入れて手にグローブ装着し始めていた。そしてパンチングマシンの中央にあるサンドバッグ思いっきり殴りつける。


「うーん、久々なせいか今日はなんかイマイチだな」


「……いやいや凄まじいスコアじゃん」


 壁に張り出されていた平均を遥かに上回るハイスコアを叩き出しておりそんじょそこらの男子高校生では太刀打ち出来なさそうなパンチ力だった。


「せっかくだし最上もやってみろよ、日頃のストレス発散になるからさ」


「上手くできるかな……」


「何も考えずに思いっきり目の前にあるサンドバッグをぶん殴ればいいだけだから」


 桐生さんからグローブを受け取った俺はパンチングマシンにお金を入れてサンドバッグを殴る。


「……おいおい全然じゃんか」


「思ったよりも難しいなこれ」


 スコアは平均を大幅に下回っており画面には貧弱過ぎて情けないからもっと鍛えて出直して来いと表示されていた。

 パンチングマシンから煽られてイラッとした俺がこの機械どうやってぶち壊してやろうかなどと考えていると桐生さんが思いがけない行動に出る。


「パンチのフォームがめちゃくちゃだから全然ダメなんだ。特別に私が正しいフォームを教えてやるよ」


「ち、ちょっ!?」


 なんと桐生さんは後ろから俺に密着してきたのだ。そのまま桐生さんは俺の体を動かしながら説明を始めるが思いっきり胸が当たっているせいで全く集中できなかった。


「大体肩幅は大体こうで腕の構え方はこんな感じで、足幅はこれくらいで……っておい、ちゃんと聞いてるのか?」


「も、勿論聞いてるぞ」


 嘘だ、胸の感触が気になり過ぎて説明を聞くどころではない。言うまでもなくその後の説明に関しても全くと言って良いほど頭に入ってこなかった。


「よし、大体説明はこんなもんだろ。じゃあ早速今教えたフォームで殴ってみろ」


「あ、ああ」


 俺はやけくそな気持ちでパンチングマシンのサンドバッグに殴り掛かる。何一つ聞いていなかった桐生さんの説明だったがどうやら体は教えられたフォームをしっかりと覚えていたらしい。

 見事さっきよりも高いスコアを叩き出す事ができた。ちょっと腑に落ちない気分になった事は言うまでもないだろう。

 それから今度はUFOキャッチャーのエリアへと移動をし、獲りたい景品がないかを二人で探し始める。

 しばらくして桐生さんは欲しい景品を見つけたらしい。お金を入れてUFOキャッチャーをプレイし始める。だが何回やっても景品が取れそうな気配はない。


「……くそ、マジで取れないじゃんか。これ本当に取れるようになってるのかよ?」


「このタイプの景品を取るにはコツがいるんだよ、ちょっと俺に代わってくれ」


「最上なら取れるのか?」


「多分な」


 お金を入れるとさっそくアームを動かし始める。桐生さんは持ち上げて取ろうとしていたが、俺はアームを使って景品を少しずつ二本あるバーの上から少しずつずらす。

 そして景品がバーの間に半分落ちるような位置まで移動させてアームで上から押さえつける。それを数回繰り返してバーの間に押し込み続けて無事にフィニッシュだ。


「よっしゃ、取れた」


「なるほど、ただ持ち上げるんじゃ無くてアームを使って景品を少しずつバーの上からずらせば良かったのか」


 桐生さんは感心したような表情でそう口にした。俺は取り出し口から景品を取るとそのまま桐生さんに手渡す。


「ほら、俺は別にいらないから桐生さんにあげるぞ」


「えっ、いいのか?」


「俺は別にいらないからな」


 桐生さんが取ろうとしていた景品はエナジードリンクのロゴが入ったTシャツだったのだが俺は別に興味が無かった。だから欲しがっている桐生さんにあげるのが一番だろう。


「最上ありがとう、やっぱりお前って良い奴だな」


「き、急に抱きついてくるな!?」


 さっきのパンチングマシンの時もそうだったがモテない童貞男子の俺に突然不意打ちしてくるのは本当に辞めて欲しい。うっかり好きになるかもしれないだろ。

 まあ、どう考えても桐生さんと釣り合わない事は分かり切っているため叶わぬ恋になる事は初めから目に見えているが。

【読者の皆様へ】


お読みいただき、ありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、

『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!


評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なんかボッチ同士で楽しげ。同じような境遇だから無意識のうちに惹かれあうのかな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ