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第4話 ああ、実は付き合って欲しくてな

 今日の授業も終わり放課後になったため俺はリュックサックの中に教科書やノートを詰め始める。俺は部活に所属していない帰宅部のため後は家に帰るだけだ。

 今日は家に帰って何をしようか考えていると桐生さんが俺の前に立ち塞がり相変わらずの不機嫌顔で口を開く。


「最上、ちょっとツラ貸せ」


 その瞬間、周りにいたクラスメイト達は一斉に顔を歪めて俺に対して哀れみの視線を送り始める。

 多分周りは桐生さんがこれから俺をどこかに呼び出してボコるような想像をしているに違いない。せっかく頑張って体操服の恐喝疑惑を頑張って解いたって言うのにまたかよ。

 それから毎度お馴染みになっている屋上に移動をしたところで俺から桐生さんに話しかける。


「いきなりツラ貸せって呼び出し方をするのは今後辞めた方がいいと思うぞ」


「えっ、何でだ?」


「そんなのヤンキーに呼び出されていじめられるようにしか見えないからに決まってるだろ」


 俺の言葉を聞いてようやく気付いたらしく桐生さんはしまったと言いたげな顔になった。ただでさえ怖い見た目をしているのにその言葉遣いなのは本当にまずい。言葉遣いは早急に直した方が良いと思う。


「それで俺に何の用事があるんだ?」


「ああ、実は付き合って欲しくてな」


「……えっ!?」


 桐生さんは今俺に何て言った。付き合って欲しいと聞こえたような気がするのだが。


「そ、それはほらもう少しお互いを知ってからの方が良いと思うって言うか……」


「ん? 最上は一体何を言ってるんだ?」


 俺がしどろもどろになりながらそう口にしたのを聞いて桐生さんは困惑していた様子だったが、すぐにはっとした表情になった後顔を真っ赤に染める。


「ば、馬鹿野郎。そう言う意味じゃなくてこれから買い物に付き合えって意味で言ったんだよ」


「……あっ、そういう意味だったのか」


「そうに決まってるだろ」


 どうやら俺はとんでもない勘違いをしてしまっていたらしい。恥ずかし過ぎて穴があったら今すぐにでも入りたい気分だ。しばらく気まずい空気が流れていたがようやく落ち着いてきた。


「それで俺は何の買い物に付き合えば良いんだ?」


「実はもうすぐ妹の誕生日なんだが毎年センスが無いとか言われるんだよ、だから最上にも手伝って貰おうと思ってな」


「へー、桐生さんって妹がいるのか」


「ちなみに今は小学生四年生だ」


 勝手に一人っ子のイメージを持っていたため正直かなり意外だ。小学四年生という事は割と年齢が離れている気がする。


「参考までに聞きたいんだけど去年は誕生日プレゼントとして妹には何をあげたんだ?」


「去年は確かハンドグリップをあげた記憶がある」


「えっ……」


 ハンドグリップって確かひたすら握って握力を鍛えるあれの事だよな。そんな物を女子小学生の誕生日プレゼントとして渡しても絶対喜ばない事は目に見えている気がするのだが。


「プレゼントって自分が貰って嬉しい物をあげるとあんまり外さないと思うんだけど」


「だから妹にハンドグリップをプレゼントしたんだよ」


 俺からのアドバイスに対して桐生さんは平然とそう答えた。なるほど、どうやら桐生さんの感性は普通の女子とだいぶ違うらしい。俺の感性は多分普通なはずなので桐生さんの軌道修正は問題なく出来るはずだ。


「分かった、どうせ今日の放課後は何の予定も入ってないから付き合うよ」


「ありがとう、マジで助かる」


「買いに行くのは学校近くにあるショッピングモールで良いか?」


「ああ、元々今日の帰りにあそこへ行くつもりだったから」


「じゃあ早速行こうか」


 俺達は屋上を出ると一緒に靴箱へと向かい始める。桐生さんが通ろうとすると皆んな慌てて道を開け始めるためちょっと面白かった。

 一体桐生さんは周りからどれだけ怖がられてるんだよ。かなりいかつそうな見た目をしたラグビー部っぽい先輩ですら怯えた顔で道を開けてたぞ。

 言うまでもなく俺に対しては哀れみの視線が向けられていた。多分周りからはヤンキーに呼び出されてどこかへと連れて行かれる哀れな生徒として見られているに違いない。

 まあ、どうせ皆んな遠目からただ眺めているだけで助けにくるような勇気がある奴なんて一人もいないに決まっているが。

 靴箱で上履きから靴に履き替えた俺達は学校を出てそのままの足でショッピングモールへと向かって歩き始める。


「そう言えば期末テストが近づいてきてるけど桐生さんは大丈夫そうなのか?」


「中間は赤点無かったし期末も多分大丈夫だろ」


「いやいや、赤点取らないのは当たり前の事だろ」


 うちの高校は赤点にかなり厳しい。もし赤点を取ってしまえば追試を受ける必要があり、追試でも一定の基準をした回った場合は追々試まで受ける必要がある。

 そして万が一その追々試でも一定の基準を下回ってしまった場合は退学となるのだ。だから皆んな赤点を恐れて勉強している。


「そう言う最上はどうなんだよ?」


「俺は割と成績は良い方だから」


「やっぱりそうだよな、見せてもらったノートが不正解な事なんて滅多に無いし」


 陰キャで友達がいない関係で時間があるため勉強する時間はたっぷりあるというわけだ。そんな話をしながら歩いているうちに目的地のショッピングモールへと到着した。

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