パンダを求めて
私は空を見上げて考える。
「モフモフ、白黒、モフモフ、パンダ」
私は終末世界になってから一つ気がかりなことがあった。上野動物園のパンダである。人間がいなくなって生きていけるだろうか、元来動物は苦手な私がだが、パンダは違う、白黒でモフモフそうな体、まるで人間に愛でられるために生まれてきたかのようなボディ、そうだパンダを見に行こう。
「お姉ちゃん、パンダ!」
早速、お姉ちゃんとパンダを見に来た。誰もいない上野動物園は初めてだ。聞こえるのは動物の鳴き声だけ、少し怖くなってお姉ちゃんにくっつく、お姉ちゃんはそっと私の肩に手を当てる。ああっなんて優しいんだろう。
パンダの檻が見え、私は走って檻を覗き込んだ。しかし、パンダはいなかった。少しショックを受けた。
「逃げたのかもしれないよ、まだ近くにいるかも」
お姉ちゃんの言う通りである。パンダはまだ近くにいるかもしれない、私は動物園の中を必死に探した。走り回っている間にお姉ちゃんとはぐれてしまった。風が強くなってきた。何か足音が聞こえる。
「お姉ちゃん?」
足音の先の茂みから出てきたのはお姉ちゃんではなくライオンであった。私は腰が立たないで震えてその場から逃げることができなかった。私は恐怖で泣いてしまった。
「お姉ちゃん!助けて!」
恐怖しながら叫ぶ私のもとに走ってくる足音が聞こえた。
「お姉ちゃん」
しかし、その足音の主はパンダであった。パンダはライオンに飛び掛かりライオンを追っ払った。私は会いたくて仕方なかったパンダを抱き着こうとした。その時、パンダは私に向かって飛び掛かってきた。私は忘れていた、パンダは漢字で熊猫と書く、そうパンダは熊なのである。その瞬間、お姉ちゃんが走ってきてパンダにとび膝蹴りを食らわせたのである。パンダは戦意を喪失して逃げて行った。
「大丈夫?、一人でいなくなっちゃだめでょ!」
私をいつにない表情で怒るお姉ちゃん、
「ごめんなさいぃぃ」
私はお姉ちゃんの胸で泣いた。泣き疲れた私は目が覚めた時にはお姉ちゃんの背中だった。