Voice Letter ~俺はだれかを救えていましたか。~
もし自分の人生のタイムリミットを知ってしまったらあなたはどうしますか。
音楽は俺のすべてだった。
昔から俺には音楽しかなかった。
助けてと伸ばした手が見事なまでに振り払われたその日も音楽だけはその手を振り払わなかった。
誰にも見向きされなくなった世界でも音楽だけは俺のそばにいてくれた。
あぁ俺死ぬんだ
感覚でわかった。
1週間
いや三日も持たないだろう。
苦しくはない。
どこも痛くもない。
だからこそなのだろうか。
そう感じた。
もうとっくのとうに声は出なくなった。
体は動くのに大好きな歌が歌えない。
そんな地獄の日々もすぐに終わった。
声が出なくなった2週間過ぎたあたりから
俺は体に力が入らなくなっていった。
体ももうほとんど動かない。
これはこれでよかったのかもしれない。
病院のベットの上。
死期が近づいているというのに俺のベッドの近くには人っ子一人いない。
両親は数年前に亡くしている。
俺の唯一の家族である妹もここ数日来ていない。
さすがのあいつも愛想が尽きたのであろう。
でもこんな頼りない兄の姿を最後に見せるよりはいいだろう。
きっとあいつらもここには来ない。
俺が死ぬんだってわかったそのすぐ後に俺はあいつらと喧嘩をした。
死ぬ姿なんて見せたらあいつらはきっと一生俺を忘れられない。
あいつらには笑顔が似合うから。
あいつらには楽しく歌を歌っていてほしかったから。
これでいいんだ。
その晩俺は夢を見ていた。
俺がもし病気にならなかったらの話。
もしグループを抜けていなかったらの話。
大きなドームのど真ん中に立って色とりどりのペンライトの海を見ている。
そんな夢。
仲間と笑いながら歌って。
一番泣き虫な末っ子が泣いたせいで俺らもつられて泣いちまって。
柄じゃねぇのになとか思いながらも幸せで。
あったかもしれない
そんな未来の話。
でも楽屋に戻ったらいつもの見慣れた病室で
これが現実だ。
どんなに悲しかろうが俺は明後日...いや明日には死ぬのだろう。
もしかしたらこのまま理想の夢のまま
幸せに浸ったまま死ぬのかもしれない。
でもそれもいいかもしれない。
どうせ誰かが看取ってくれるわけでもないのだし。
そこで目が覚めた。
なぜか俺は泣いていた。
まだ俺にも泣く気力残ってたんだな。
そんなことを考えながら。
そこからどれぐらいたったのだろうか。
なん十分
いや何時間か経っていたのかもしれない。
もう涙も枯れ切ったころ
「お兄ちゃん!」
そう聞こえ扉が思いきり開け放たれた。
これは夢か...?
だってあいつらがここにいるはずがない。
愛する妹と
一生を誓い合った大切な仲間たち。
「アクア!」
はは...その名前で呼ばれるのも久しぶりだな。
先ほど使い切ったはずの涙がまたにじんできた。
「あーくん...なんで...なんでよ」
リンは相変わらず泣き虫な最年少で。
涙をこらえることを知らないのかってくらい大泣きしてて。
「あくあはほんとこういう大事なこと俺らに何も言ってくれないよね」
そうやって意地っ張りなスイは目にたっぷりの涙を浮かべて。
「死ぬなんて...僕そんなこと聞いてないよぉ」
甘えん坊なショーはケンカしたことなんて忘れたみたいにボロボロ涙こぼして。
「・・・」
いつも元気いっぱいのアメはボロボロでもう昔の面影もなくなった俺の姿を呆然と見ていた。
こいつらを連れてきたであろう妹は一歩引いたところでそんな俺らのことをただじっと見ていて。
「なんでよあーくん...もっと早くに言ってくれれば」
ごめんな
「僕まだ一緒に楽しいことしたかったのにぃ」
俺もだよ
「あくあはほんと馬鹿なんだから」
ほんとにな
「...あっくんはあめ達のことなんかどうでもいいんでしょ?」
そんなわけねぇだろが
俺は今でもみんなのこと
「だいすきだよ」
もう出なかったはずの声で
みんながほめてくれた大好きだと言ってくれたあの声の面影はないくらいにかすれた声で
聞き取れるかどうかわからないほどの小さな声だけど
「あ...くあ...」
あーあついにあめまで泣いちまったじゃんかよ
こんなしんみりした空気俺の柄じゃないんだって
「わらえ」
最後の力を振り絞った声は確かにみんなの耳に届いたみたいで
「そうだね」
「あくあはこういう空気嫌いだもんな」
「僕も大好きだよ!」
「あめも!ずっとずーっと大好きだよ!」
涙は相変わらずこぼれていたけど
夢で見たような最高の笑顔で
「あくあと俺はどこにいたって仲間だからな」
「あーくんに楽しい思い出いっぱい作っていつか持って行ってあげるからね」
「あめはあっくんが出たがってた番組出て天国行ったときにいっぱい自慢するから!」
「今ここで死んだこと後悔するくらい大きくなるから!」
だから
「またね」
おう!またな
ツーツーツーツー
Voice letter
あーあー
ん?これとれてんのか?
こほん
えーっと
今これを聞いてるってことは俺が死んだのばれたってことかな?
これはお前らと喧嘩して別れた後に撮ってます。
不器用な俺でごめんな
あぁでもしねーと俺がお前らと別れられなかった。
ちょっと寂しいけどお前らは俺のことなんか忘れて
元気に活動しろよ!
ちょっと気恥しいけど
まぁもうどうせ俺の日記も見られてるだろうしもう今更だからちょっと話させてもらうわ。
スイ
いつもなんだかんだありがとな
ぶっきらぼうだけど一番周りのこと見てて困ってたらすぐ助けてくれるお前が大好きだったよ。
うわまって
大好きとか俺のキャラじゃなさ過ぎて鳥肌立ってきたんだけど
はぁ...
よし
スイがグループに誘ってくれなかったら
俺はいつまでたっても一人だった。
喧嘩ばかりだったけど
真正面からぶつかれたのはお前が最初で最後だったよ。
ありがとう
ショー
お前は本当甘えん坊でさ
いっつも俺に引っ付いてて
外歩けば必ず手つないでくるし
弟というか犬というか
いつもぶさくさ言って追い払おうとしてたけど
それでしょぼんとした顔したと思ったらもっと引っ付いてくるお前が可愛くて
楽しんでたわ
今更だから白状したけど
ごめんねなんていわねぇよ?
悪いと思ってもねぇしw
今絶対ほっぺ膨らませてるだろ?
それが面白いんだよ
俺がいなくなって引っ付く相手いなくなったかもだけど
我慢しろよw
ほんとお前といると飽きなくて楽しかった
ありがとな
大好きだぞ
ちょっと待って水飲ませて
ふぅ...
よし
次はアメ
お前はさぁ
ほんと俺のことイラつかせるの得意だったよな
ゲームはじゃまするわ
すーぐ病んで闇ツイするわ
ほかにもいろいろあるけど今回はそれは置いておくわ
いつかアメが天国来たら覚えてろよ?w
でもさメンバーの間に入って喧嘩を止めるのは毎回お前だったよな
これからもその役割頼んだぞ
リンとスイはどーせ俺がいなくなっても毎日喧嘩してるんだろうし
そして最後にリン
お前はほんと泣き虫で
転んでも泣くし
喧嘩しても泣くし
美味しくても泣くし
ほんとお前の感情表現は泣くしかないのかってくらい泣くけど
むしろうざいを通り越すほどに泣くけど
それがお前らしくてそんなお前が大好きだったよ
でもこれからは泣いてばっかじゃだめだからな?
なだめる役割の俺もいねぇし
何よりこれからどんどん増えてくファンのみんなもあんまし泣きすぎると心配させちゃうからな
はぁ...マジでなれないことはするもんじゃないな
うまく言葉出てこねぇわ
まぁ長々と話しすぎてもなんだから
最後にこれだけは言わせてくれ
いつもそばにいてくれてありがとう
俺はお前らと出会えて
一緒に活動できて幸せでした
これからどんどん大きくなってくお前らのこと
ずっと空の上から楽しんで見とくから
それじゃあそろそろ看護師さんも来るから終わりにするな
それじゃあ
またな
長々とお話し読んでいただきありがとうございました。
完全な衝動書きで書きたいところしか書いてないんですけどいつか気分が乗ったら間の部分も書こうとは思ってます。多分ないけど。
一応設定としてはネットで活動しているグループになってます。
別に普通のアイドルとかバンドとかで思って読んでくれて大丈夫です。
名前も適当につけたんで許してくださいw
それではまた機会がありましたらお会いいたしましょう。
2022.2.20