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3 聖女様の悩みは尽きない

 イケメン王子、恐ろしすぎる。なんだろう、やめてほしいと頼んでいるのにやたらと顔を覗き込んできたり、手をつなごうとしてきたり。

 緊張すると言っているのに、嫌がらせだろうか。

 しかも楽しそうにしている。

 誰よ、笑わない王子って言ったの、めっちゃ笑っていますけど?

 ともかく私の抵抗などものともせずに婚約が正式発表された。

 私の婚約のために両親も王都に来て、何種類もの書類にサインをしている。現時点では王位継承権第二位の王子様なので、決まり事があれこれとあるらしい。

 そして聖女としての活動とは別に王子妃教育も始まった。

 国の歴史や他国との関係、礼儀作法、さらに社交術にダンス。体を動かす事は嫌いではないがカンサス殿下と密着して踊るとかどんな罰ゲーム。


「罰ゲームじゃないだろう。普通は光栄なことだと喜ぶものだぞ」

「だから、緊張するんですってば」

「慣れろ」

「無理ですっ」

「この先、何十年も共に過ごすことになる。どうしても緊張すると言うのならば会う回数を増やすぞ」

 たくさん会えば慣れるというものでもなかろう。美人は三日で飽きると聞いたことがあるが、美男は三日では飽きないのだろうか?

「それとも他に好きな男がいるのか?」

「え、いませんよ、そんな相手がいたらさっさと婚約していました。そもそも…、なんていうか、恋愛向きではない性格のようです」

「確かに」

 深く頷かれた。その通りだけど、なんか悔しい。

 ダンスレッスンの後はカンサス殿下とお茶をして神殿に帰る。移動する時は当然のように護衛騎士がいるし、どんどんと私の扱いが重くなっている気がする。

 一年前は『秋の収穫~♪』と野山を駆け回っていたのに、人生って不思議。


 そう、もう王都での暮らしも半年を過ぎていた。

 今日は三人揃ってイメージカラーのドレスを着て狩猟祭に参加している。王都にほど近い森での狩りは貴族が多く参加する一大イベント。らしい。

 うちは参加していませんでしたよ、狩りは楽しむものではなく生活の糧ですからね。

 私も狩る側で参加したかった。

 そしてエリー姉様とリマも少しそわそわしている。だよね、テントの下でじっと待っているほうが苦痛だ。

 三人揃って飛び出したいところだが、聖女としての外聞がある。イメージを打ち砕くような真似は控えるようにと作法の先生にも言われている。

 狩猟祭で一番、身分の高い女性はなんと私達聖女…らしい。王妃様は不参加で、ご高齢となる女性達の大半が不参加。ちなみに先代の聖女様もまだご健在だがお年のために自領地で静養中とのことだった。一度くらいはお会いしたいものだ。

 国王陛下の次に身分の高いマートル殿下はまだ結婚をしていないため、婚約者であるベンダー公爵家のご令嬢レイカ様は聖女よりも下の扱いとなる。厳しい。

 それほど高貴な身…扱いとなるため、私達に声をかけられる者は王家が許可した者のみ。

 田舎の芋令嬢達がこの場で誰よりも偉い…って、不満に思っている人もいそうだ。皆様、顔や態度には出さないけど。

 レイカ様と他の高位貴族のご令嬢が何人か挨拶に来てくださったが、儀礼的なもので終わった。レイカ様は体調が優れないとのことで今日はこのまま帰ると言う。顔色が悪かったので治癒魔法をかけようかと尋ねてみたが辞退されてしまった。う~ん、謙虚だ、さすがレイカ様。

 立ち去るレイカ様を見てリマが首を傾げている。はいはい、妄想にはピッタリのお姫様だものね。

 私としてはもっとラフな感じで女の子達と会話を楽しみたいのに寂しいなぁ。

 用意されたお茶を飲みながら…。

「フラン、リマ」

 エリー姉様がほほ笑みながら私達の名を呼んだ。

 ただ名前を呼ばれただけだが、目が笑っていない。凄みを帯びた微笑みになんとなく察した。お茶に何か入っているのかな。昔からエリー姉様は味覚が鋭いのよね。

 リマをチラッと見ると、こちらも小さく頷いて。

「私、ちょっとお花摘みに行ってくるね」

 偵察に出るようだ。スタタ…と走り出したリマをメイドの一人が慌てて追いかける。

「あの子は落ち着きがないわね」

「一応、淑女教育も受けているはずだけど…」

 二人でゆったりと辺りを見回す。

 狩猟祭に集まった貴族は騎士爵も入れると百を超える。そして旦那様や婚約者の応援、華を添える意味で集まった女性も百人超え。

 さらにそれぞれの貴族が連れてきた使用人、王宮からの騎士、メイド…で現在、拠点となっているテント周辺だけでも二、三百人の人がいる。

 そして私達のお茶に薬?毒物?

 エリー姉様に止められたのでほとんど飲んでいないし、いざとなれば治癒魔法で大抵の毒を消せる。

 私達を狙っているのだろうか。その場合は誘拐…かな。

 治癒魔法はそこまで珍しくないが、聖女は並の治癒魔法師五十人から百人相当の力を持っている。我が国は幸い神の祝福があり定期的に聖女が現れるが、治癒魔法師がほとんど生まれない国もある。

 魔法、魔力の系統は国によって異なる。魔力持ちが多く生まれる国もあれば、まったくいない国もある。信仰している神も異なる。

 やはり聖女になど選ばれるものではない。

 ため息をついて。

 ダンッとデザート用のフォークをテーブルに突き立てた。

 正しくは、テーブルの上にはい出てきた拳サイズの大蜘蛛。黒と赤の縞模様でもっさりと生えた毛?が毒々しい、毒蜘蛛だからな。

 側に居たメイドから悲鳴があがる。

 どこから来たのか大きな蜘蛛やムカデが何匹も地面をはい回っていた。

「毒蜘蛛よ、噛まれたら麻痺するわ!ムカデにも気をつけて、腫れあがるわ!」

 私が叫ぶのと同時に別方向から悲鳴が聞こえてきた。

「蛇よッ!」

 毒蜘蛛と大ムカデだけでもご令嬢達が気絶しそうなのに、蛇までいるのか。辺りがあっという間にパニック状態に陥った。

「赤の聖女と青の聖女を確保しろ!」

 わらわらと黒装束の男達が現れた。二、三十人はいる。

 ご婦人達の護衛として王宮から派遣された騎士もいたが、場が混乱しているせいでうまく機能していない。

「フラン、虫は任せるわ!」

「わかった、エリー姉様は黒装束をよろしく!」

 テーブルからフォークとナイフを集めて、とにかく目にした虫を躊躇なく仕留めていく。

「青の聖女を捕まえ…、ぐぁっ」

 襲い掛かってきた男の顎に下から突き上げた。あまりやりたくはないが、遠慮していたら攫われる。なので、思い切り、容赦なく、ヨロけた男の足を力いっぱい踏みつけた。歩きにくいヒール靴だが踵の攻撃力はなかなかのものだ。ガスガスガスッと何度か踏んで撃退すると。

「おいっ、こっち、加勢しろ!」

「赤の聖女が…、強い!」

 エリー姉様が誰から奪ったのか、剣を手に次々と男達を薙ぎ払っていた。おぉ、さすが、三姉妹一の剣の使い手。こちらも負けてはいられない。

 倒れていた男の腰から短剣を奪い、応戦する。

 五分か十分か…、援軍が到着した。

「ご婦人を避難させろ!賊を捕縛しろ。殺しても構わん、聖女を護れ…」

 また一人、敵を倒したエリー姉様を見て首を傾げた。

 いえ、疑問に思う気持ちはわかるけど、護って~、めっちゃ強いけど、護ってあげて。

「フラン!」

 カンサス殿下の声がして、馬から飛び降りて駆けてきた。

「エリー!」

 セージ義兄様も到着した。走り抜けながら黒装束の男を何人か倒している。

 さすがだ。

「フラン、怪我は?」

「あったとしても自分で治せますよ」

「そういった問題ではない」

 ドレスがすこし汚れてしまったが怪我はしていない。そもそも、私達三姉妹は野生児なので…。

「陽の聖女を捕まえたぞ!」

 リマが捕まっていた。本人はきょとーんとしている。

「聖女を殺されたくなければ全員、動くな!」

 と、叫ぶ男の腕の中で、いつ捕まえたのか、リマが蛇を持っていた。長さは一メートルくらいだろうか。

 慣れた動きで蛇の頭を抑えてパカッと大きく口を開けさせる。

 見ている者達の大半がぽかーんと見守る中、男の腕に蛇の牙を躊躇なく突き立てた。

 恐らく痛みはない。リマが捕まえられるサイズの蛇だ。チクッとする程度だろう。ただ…、毒蛇なんだよね。

 男が自身の腕と、しっかりと牙を突き立てている蛇を見た。

 そして。

 ぐぁあぁあああ、おぉぉおおおおぉぉぉ…と悲鳴をあげた。

「解毒剤、解毒剤を……」

 がくんっと膝をついた。

「さっすが、ピンクヘッドスネークちゃん、毒の回りが早いね♪」

「リマ、野生の毒蛇におかしな名前をつけるのはやめなさい。あと、淑女は蛇を手掴みしないから」

「え~、フラン姉様も毒蜘蛛や大ムカデをナイフとフォークでミンチにしていたのに」

「ミンチになんてしていないわよ。ただ攻撃力を低下させただけ」

「んっふっふ~、この蛇、毒があるけど身は美味しいんだよねぇ。捕まえるのに夢中になって変なおじさんに捕まっちゃったのは失敗だったけど、結果、オーライ。おじさんのおかげで蛇の毒も除去できたね」

 蛇の頭を抑えたままで、毒蛇とはいえすこし可哀相だ。そしてリマを捕まえようとしていた黒装束の誰かもちょっと可哀想。蛇の毒ってわりと辛いらしいのよね。治癒してあげられるけど、戦略的ないろいろで犯人達は手当てしないまま連行するとのこと。

「その子、食べる気なの?ここは実家ではないのだから、やめておきなさい」

「蛇、美味しいのに」

「毒蛇は平気なのに、虫は苦手って、何度目にしても納得いかないわ」

「虫の方が気持ち悪いじゃない。その点、蛇は美しい上に美味しいのよ。最高の食材…、いや、最高に尊い生き物よ」

 のん気に話している私達の周囲はまだ騒然としていた。

 いろんな意味で。

 しかし、どれほどの衝撃があろうとも賊を逃がすわけにはいかない。

 黒装束の男達は次々と捕縛され、私達姉妹は神殿ではなく王宮へと案内された。


 ドレスが汚れてしまったため、私達はお風呂に放り込まれてから着替えた。メイドさん達にお任せできれいにしてもらえる。

 準備が整うとサロンのひとつに案内された。

 既にマートル殿下、カンサス殿下、それにセージ義兄様もいる。あと、いかついお顔の騎士団関係の方が数人とラデス神官。

 血生臭い話になりそうだからか、レイカ様はいない。あの場にいたとしたら真っ先に気を失っていたよね。先に帰宅して正解だったよ。

 席はセージ義兄様とエリー姉様、ラデス神官とリマ、そしてカンサス殿下と私が並んで座り、マートル殿下は一人で。騎士団の方々は立ったままだ。なんか、すみません…。

「さて、今日の騒ぎだが…、まず、私が個人的に一番、気になっている事を聞きたい」

 セージ義兄様に聞く。

「エリー聖女の強さは…、まさかセージ以上か?」

「いえ、さすがに私にもプライドがありますので…、最近は負けていませんよ。初めて彼女に負けた時から努力に努力を重ねてきましたから」

「そう、か…。いや、驚いた。捕縛された半数以上が赤の聖女に倒されたと聞いて…、信じがたいが、事実なのだろう」

 そうなの、昔からエリー姉様は強かったのよね。恐らく母譲りだと思う。バジル男爵家の娘は武の才に恵まれる事が多いのだ。残念ながら娘なので、その力が発揮される機会はほとんどないが。

「では当事者である聖女達にわかっていることを説明する。捕縛された男達は他国からの密偵で我が国の貴族が仲介役となっていた」

 誰か…それなりに力をもった高位貴族が橋渡しをしなければ潜り込めない。

 目的は聖女の誘拐。

 できれば三人、最悪一人だけでも。

 女性が多く集まっていたので、虫や蛇で混乱を招き、どさくさに紛れて誘拐する計画だった。

 が、エリー姉様の剣の腕はセージ義兄様とほぼ同等。命の奪い合いならば結果も異なったが、黒装束たちはエリー姉様を傷つけられない。

 手加減しつつ相手を無力化させることはよほどの力量差がなければ難しい。

 私はエリー姉様ほど強くはないが、虫も蛇も平気。リマは虫が苦手だが蛇は『食材』だ。

 他のご令嬢達のように慌てふためくこともない。捕まってしまったリマも落ち着いていた。

 何故、そんなに肝が据わっているのかと聞かれてもバジル男爵家の娘だからとしか答えようがない。

「それから…、今回の事件に加担した貴族だが、ベンダー公爵家もその中のひとつだった。金で買収され、王家の信用失墜と公爵家の影響力増大を狙っていた」

 まず聖女を誘拐させて、王家や騎士団の責任を問う。十分に非難が集まったところで聖女を一人、救出し、公爵家の功績として政治的影響力を強くする。

 まだ事件が発覚してから数時間しかたっていないが、関わっていた証拠が出ているため身柄は確保されているとのこと。

 ベンダー公爵家って…、レイカ様のご実家ではないか。そんな事をしなくとも、すでに十分、発言力の強い家なのに。

 目を丸くしている私に苦笑しながら言う。

「レイカも父親が何をしようとしているか知っていた。何故、父の暴挙を止めなかったのかと問うたら『聖女が羨ましかった』と答えた。自身が聖女になりたかったそうだ」


 誰よりも身分が高く、尊敬され、広く国民に愛される存在。類まれな力を持ち、多くの人に必要とされ…、望めばすべてを手に入れることができる。


 聖女とはなんだろうな…と呟く。

 そんなこと、私にもわからないけど、なりたくてなれるものではない。そして、なりたくなくてもなってしまうものなのだ、不幸なことに。

「フラン聖女はカンサスとの結婚を嫌がっていたな。どうだ?私と結婚…」

「お断りします!」

 冗談でも言われたくないし、聞きたくない。

「そうか?しかし、ベンダー公爵家の失脚により王位継承権の順位が変わり、カンサスが王太子となるかもしれないぞ。そうなれば王妃だ」

「だとしても、お断りします」

 口に出しては言えないがマートル殿下のほうが絶対に腹黒でねちっこそうだ。

「残念だな」

 さして残念そうにも見えない顔で笑う。

「まぁ、国の宝となる聖女達だ。聖女達が心穏やかに過ごすほうが神もお喜びになるだろう」


 エリー姉様は予定通りセージ義兄様と結婚し、セージ義兄様が騎士団で働いている間は王都で暮らすことになった。

 そして剣の腕を認められて、初の女性近衛騎士となった。今はセージ義兄様と一緒に働いている。基本は内勤だが、呼ばれれば王妃様の護衛をしたりマートル殿下の新たな婚約者の護衛をしたり。凛々しい姿に女性ファンが急増中だ。

 マートル殿下の新しい婚約者は私に喧嘩を売ってきた悪役令嬢、オーヴェル侯爵家のシノン様、十七歳だった。

 お互いの婚姻が成立すれば義理の姉妹となるため顔合わせもしたが、なんというか…、見た目は悪役令嬢なのに思っていたよりも素直で可愛らしい方だった。

 以前の事を謝罪され、私もそれを受け入れた。


「それで、マートル殿下をお慰めするために、私は何をすれば良いと思いますか?」

 などと真面目に相談されて、ものすごく困った。

 私に恋愛相談って…、害虫駆除なら伝授できるけど、恋愛は…無理だ。何も思いつかない。

「フラン聖女様はカンサス殿下に溺愛されていらっしゃるでしょう?」

「誤解です」

「狩猟祭でもフラン聖女様のもとに颯爽と駆け寄り、お護りしたと聞きましたわ」

 いいえ、茫然と立ち尽くしておりましたよ、あらゆる意味での惨状に。

「素敵ですわねぇ。氷の王子様のお心を溶かした清らかなる聖女様」

 私が清らかな聖女ではないとご存知では?

「あのぉ、マートル殿下はとっても腹黒いと思うのですよ」

 シノン様が目を丸くさせた。びっくり顔、可愛いな。

「腹黒いというか、陰険というか、ねちねちと弱者をいたぶるような?そういった匂いがしているので、下手な小細工はせずに素直に接したほうが良いと思いますよ。嘘がバレたりしたら、三年くらいはチクチクと嫌味を言われそうです」

「そうだな、わりと根に持つ方ではあるな」

「ですよね、見た目は爽やかそうだけど、絶対に陰湿…」

 シノン様が固まったまま私の背後を見ていた。

 えーっと。

「フラン聖女、このことは三年と言わず五年は根に持つとしよう」

 ダラダラと冷や汗をかく私の手をカンサス殿下が引いてくれた。

「悪口でも他の男の話はしてほしくないものだな。兄上、フラン聖女を連れて行ってもかまいませんよね」

「もちろんだ」

 腕を引かれて、場所を移る。連れていかれたのは温室だった。珍しい木が植わり、派手な花が咲いている。温かい場所なのに、なんだか寒い。背中がゾクゾクする。

「………私、マートル殿下に暗殺されませんよね?」

「心配しなくても、オレが止める」

「うぅ、怖かった…」

「毒蜘蛛や蛇は平気なのに、兄上が怖いのか?」

「聖女でなければ不敬罪で首を刎ねられていたかもしません」

「それは…」

 ちょっと考えてから言われる。

「さすがに女の首を問答無用で刎ねたりはしないだろう。毒杯だ」

 それ、まったく慰めになりませんからっ。


 ベンダー公爵家やレイカ様、犯罪に加担した者達がどうなったのか、詳細は聞かなかった。これといった被害はなかったし、私に政治的なことはわからない。

 聖女だと言われてはいるが、では聖女とはどういった存在かと聞かれても答えられない。

 エリー姉様とリマも似たようなものだろう。

 なってしまったものは仕方ない。

 羨む人もいるが、忙しいし責任もあるしそんなに良いものではない。しかし聖女に憧れている人達の期待は裏切れない。

 結果。

「聖女になって良かったと思う事ですか?そう、ですね…。素敵な王子様と結婚できたことかしら」


 うふふ…と笑う私の横でカンサス殿下も楽しそうに笑っている。


 バジル男爵家の三姉妹は聖女として生涯、国に尽くした。

「いや、女性初の近衛騎士とか目指してなかったしっ。のんびり男爵夫人として暮らす予定が、男爵夫人と近衛騎士と聖女の兼業っておかしいでしょ」

「男爵領での平凡な一生を望んでいたのに、朝、起きたら横で王子様が寝ているとか、無理。毎朝、心臓が止まりそうだからっ。なんで無駄にイケメンなの、寝起きも麗しいとか、無理っ」

「ってゆーか、いつの間にか働かされているの、なんでっ?旦那様、優しいのに、なんでゴロ寝する暇がいつの間にかなくなっているの!働きたくないのにーっ!」

 と、まぁ。

 本人達が望んでいたかどうかはまた別の話であった。

閲覧ありがとうございます。あと1話、王子視点のおまけがあります。虫や蛇いっぱいで苦手な方には申し訳ない。個人的には爬虫類や昆虫は美しい子も多いと思います。苦手な虫もいますが…。

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