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死刑2-06 人を助ける人殺し

 遺体の首をはねてから、友人たちと会うのがまた恐くなった。『人殺し』が近付いている。


 それでも、何度か供された試し斬りの遺体へは、きっちりと礼儀を通した。

 それに比例するように診療には力を入れた。父に国境室とのパイプを繋いでもらい、本来はうち以外の診療所では使われないはずの医療品も手に入れた。

 どのみちルカ王がソソンを開くというのなら、これもアサエム家の特権ではなくなるだろうということだ。

 人々の命が護られる未来を目指すためになら、多少のチートは許されても良いだろう?

 ソソンのために獅子奮迅の活躍を見せる労働者たちが身を危険に晒しているのだから、彼らのためにはより良い環境が必要だ。


 だが、最先端技術の多くは、電気の無いこの国では利用できない。

 電池や発電機を手に入れることもできたが、あまりにも大がかりな機材を仕入れれば噂となるし、細々とした道具もほかの医者たちに見つかればいぶかしがられる。

 そうなれば、僕や父の正体の発覚にも繋がってくるだろう。あくまでも、使ってしまえば分からない薬品や抗生物質が仕入れられるだけだ。


 いくら治そうが事故の数は減らない。命が助かっても永久に不自由が残る患者も多い。

 ほかの医者たちは根を上げはじめ、手遅れの患者が積極的に僕へと回されるようになった。

 そうなれば、僕にもすぐに限界が見えてきた。


 人が独りで受けとめられる死の数はいったいどのくらいなのか。

 その重さは看取りと処刑で違うのか。不運や不足から罪は生まれるのだろうか。


 考えているうちに恐怖に負けてしまい、多忙を押し退けて友人たちに会いに行った。

 ほかの医者や一部の患者からは、休みを貰うだけで苦言をていされた。


 マルクさんの店をたずねて扉をくぐると、中の状況を把握する前に言葉が投げかけられた。

「うわあ、顔色が悪くなったねえ。大丈夫?」

 メイド服の娘、グレーテだ。

 僕は暖炉の前のチーズのようになった気分だった。

「若きスーパードクターのご到着だ」

 アキムがグラスをこちらへ向けて挨拶をした。

「いらっしゃい! 久々に四人そろったね。今日はゆっくりしていけるの?」

 カウンターからニーナがたずねる。今日は珍しく他にも客が数人いた。

「いけるというか、いくよ。もうくたくただ」

 僕はグレーテの引いてくれた椅子へと腰をおろした。

「病院のにおいがする」

 隣でグレーテが言った。

「よっぽどだな。医者が忙しいのは北の山が崩れたのが原因か?」

 アキムがたずねた。

「それも手伝いに行ったけど、どこもみんな労働者は疲れてるんじゃないかな。採石だけでなく、紙業でも大小の事故が絶えないし、疲労から感冒もかなり流行ってる。自分が健康なのが不思議なくらいだ」

「健康じゃないだろ。死人みたいな顔をしているぞ。どれ、これでも飲んで顔色を誤魔化すんだな」

 アキムがグラスに果実酒を満たしてよこした。僕はそれを一気に飲み干した。

 横ではグレーテがずっとこちらを覗き込んでいた。哀しそうな顔だった。

「良い飲みっぷりだな。俺も酒に強けりゃな」

 相変わらずアキムのグラスは割り雪で満たされている。

「少量で酔えるほうが経済的だろ。味ならジュースで充分だ」

「そうだな。うちはジュースを減らして、酒の仕込みを増やしたけどな。世界にアピールするにゃ、アルコールのほうが良いに決まってるぜ」

 アキムは実家の果樹園の代表として、新しく作られた商人の連合に加わっていた。

「事業は上手くいってるのか?」

「まずまずだな。今できることはフル回転させてる。あとはルカ国王陛下が、本格的にソソンを世界へ売り込んでくれればオッケーだ」

「聞くところによると、ソソンは世界には“国”として認められてないそうだね」

「腹の立つ話だよな。国王陛下はそこで頭を悩ましているらしい。ソソンの暮らしやこれまで拒絶してきた歴史を理由に受け入れてもらえないんだと。電気もなくて毛皮をはぎまくる俺たちは野蛮人なんだってよ」

 アキムは肩をすくめた。

「でも、学校で習った歴史じゃ、世界のほうが変なことをしてるような気がしたんだけど……。先輩たちもみんなそう言ってるし」

 グレーテが言った。


「戦争、奴隷、差別。たしかに馬鹿馬鹿しいよな。でも、そんな間違った連中と力の差がついたままなのは危険だろ? たとえば、核爆弾とか。外国の軍隊が一万人集まって全員が核爆弾抱えて突撃してきてみろよ。ソソンなんて木っ端みじんだぜ」

「持ったまま爆発させたら危ないよ」

 アキムとグレーテがとんちんかんなことを言った。僕は吹き出しそうになった。

 核爆弾がどのくらい危ない代物なのか、授業で習ったはずだが。水素爆弾ならたった一発でソソン全土どころか、近隣の国まで焼けてなくなるほどだ。


「はい、セルゲイ。うちの核爆弾」

 ニーナが僕の前へ“大きな玉”の乗った皿を置いた。

 こげ茶色の巨大なボールは、暖かな湯気とともに食欲をそそる油の香気を放っている。


「これは? ……ピロシキ?」

「そ、うちの新メニュー。大きな揚げパンに具材たっぷり」

「ちゃんと中まで火が通ってるの?」

「もちろん。コツは秘密だけどね。お父さんがソソンに観光客が来たら出せるようにって、新メニューの開発ばっかりしてるのよ」

「そのたびにつまみ食いを?」

「正解。今は仕入れで出てるけど、戻って来て見たら、きっとびっくりするわね」

 ニーナは溜め息をついた。


 ピロシキをナイフで割ると、中から肉汁とともにソースと具材が垂れてきた。

 ちょうど……、患者のできものを切るときのように。


 僕はナイフと先割れスプーンを置いた。


「どうしたの?」

 グレーテがたずねた。


「良い匂いだ。あんまりお腹が空いてたものだから、めまいがした」

「大丈夫ですか? 食べさせてあげましょうか?」

 グレーテはメイド然とした口調で言った。

「してあげなよ」

 ニーナが余計なことを言った。

「へへへ。私ねえ、サーシャさまに“あーん”ってするのが夢なんですよう!」

「えっ? アレクサンドラ王女って、メイドにそこまでさせてるのか? それも王室儀礼ってやつか?」

 アキムが肩眉を上げる。

「まさか。ちゃんとご自分でお召し上がりになられてます! さあさあセルゲイ君。練習台になってくださいね」

 そう言ってグレーテはスプーンを取るとピロシキの具をすくった。

「医者が介護されてら」

 アキムが笑った。カウンターではニーナがこっちをみてにやにやしている。


 ……。


 見たところ、ひき肉、刻んだ野菜、チーズに何らかのソース、それに麦かなにかが混ざり合っている。

 間違いなく美味しいだろう。さっきの治療のヴィジョンもどこへやら、僕の胃袋は雪の中からウサギを狙うキツネのようになっていた。

 だが、これは……。


「はい、あーん」

 銀のスプーンに温かな湯気。耳元で話すグレーテの吐息が香りを分からなくさせた。


 ほかのテーブルからもくすくす笑う声。一般のお客さんだ。別に良いだろう? 僕にだって癒しは必要だ。


 僕は口を開き、グレーテの運ぶさじを受け入れた。


「あっっっつい!!!」


 それから盛大にやけどをした。店中にあったからかいの空気は爆笑に進化してしまった。


「あっ、ごめん!」

「グレーテ! 王女さまをやけどなんてさせたら処刑になっちまうなあ!」

 アキムは腹を抱えて苦しそうだ。

「な、ならないし! サーシャさまはお優しいんですよ!」

「君主は国民を愛し、国民は君主を愛する。愛が足りてないぞミス・マルガリータ。ちゃんと食べられるようにしてやらなきゃな」

「ごめんね、セルゲイ。今度はちゃんと“ふーふー”してから“あーん”してあげるね!」

 そう言ってグレーテは、なぜか最初に手を付けたぶんを自分の口に運んでから、新たに熱々の具を寄越してきた。


「……」


 さすがに困る。僕は助けを求めてニーナのほうを見た。彼女は知らん顔で客の相手をしている。

「セルゲイ君、どうしたんですかー。食べてくださーい」

 目の前でスプーンが振られる。

「笑えるぜ。いい歳こいて照れてるのか?」

 いい歳こいてるから照れるんだと思うのだけど。

「アキム、うちのセルゲイがご飯食べてくれないの!」

「それはいけないな。見ろよ、すっかり痩せ細っちまってる。このままじゃ死んじまうから、口移しでもしてやりな」

 アキムは満面の笑みを浮かべて言った。

 久しぶりに見たいたずら顔だが、さすがにそれはグレーテでも……。


 グレーテがスプーンを口に運ぶのが見えた。


 それから、ちょっとばかり熱さと格闘してから、もぐもぐやって……普通に飲み込んだ。


「自分で食ってんじゃん」

 アキムが突っ込んだ。

「うん。美味しいよ! これもらっていい?」

「……どうぞ」

 僕は彼女の前へ皿を滑らせてやった。

 グレーテはそのままピロシキを食べ始めた。期待してなくもなかったが、ともかく助かった。


 それからニーナがグレーテを叱り、僕には代わりの料理が出された。昔ながらのウサギのシチューとライ麦パンだ。


 ボール型のピロシキはなかなか量があったようで、食い意地の張ったグレーテでも平らげるのに時間が掛かった。

 最後の一口になって「そういえば、一口も食べてないですねえ」なんて言いながら、不意打ちでスプーンをねじ込まれてしまった。

 具はすっかり冷めてしまったし、味もわけがわからなくなってしまったが、とりあえずは褒めておいた。


 食事と歓談の席は愉快に続いた。 


「なあ、グレーテ。今日はおまえ非番だったのか? その格好をしてる割には、いやにゆっくりしてるけどよ」

 アキムがグレーテの黒地に白いフリルのメイド服を指差した。

「うん。今日は一日自由だよ」

「じゃあ、なんでわざわざメイド服を着てんだ? 寒いだろそれ」

「うん。普段着に比べたらすごく寒い。だいぶん馴れちゃったけど。……これはね、家族に見せてきたんだ」

「まだ見せてなかったのかよ」

「うん……」

 グレーテは静かになった。


「これは、また喧嘩したパターンかな?」

 僕は少し軽い口調で言う。

「セルゲイ君、正解です!」

 そばかすの娘がにこりと笑った。

「今度は何があったの?」

 ニーナがテーブルへ寄ってきた。


「前に帰ったときね、お母さんがメイド服を着てる姿を見たことがないって言ったの。街で見かけるほかの給仕室の人と同じだよって言ったけど、おまえが着てる姿を一回見ておきたいって。お父さんとは買い出し中に会ったことがあるから見たことがあるんだけど、お母さんはたまたま会ったことがなかったのね。私嬉しくって、それで今日はこの格好でうちに顔を出したんだけど……」

「だけど?」

 ニーナが促す。

「メイドなんてやめて結婚しろって言われちゃった。しかも、男の人を紹介するからって」


 結婚。僕の眼鏡がずれた。切り倒された木が頭に当たったかのような衝撃だ。


「お見合い? なんで急に?」

 たずねた僕の声は露骨にうわずっていた。

「分かんない。結婚はともかく、メイドなんてやめろって言われたから、かちんときちゃってね。また喧嘩だよ」

 グレーテは溜め息をついた。

「結婚はいいんだ?」

 ニーナはグレーテへたずねながら、こちらと盗み見た。

「うん。お嫁さんはいいよねえ。給仕室にも結婚してる人いるよ。子供ができたらみんな辞めちゃうみたいだけど」

「そりゃね。子供の世話をしながら共働きするのは禁止されてるし」

「そうなの?」

「うん。事業主で何かしてるなら別だけど、両親ともがどこかに務めるのは駄目。片親は巡検室の人に報告して、子供が十歳になるまでは補助金暮らし」

「まじか! 働かなくてもいいのかよ。俺も女に生まれりゃよかった!」

 アキムが言った。

「あんたは実家で働いてるでしょうが。離婚や死別があっても、たいていは再婚するから、お金を貰って暮らしてる人は稀みたい。必要な分だけしか貰えないしね」

「へええ。なんだか詳しいね」

 グレーテは感心している。僕も驚いた。

「うん。前にちょっと、法律の勉強したことがあってね」

「ニーナもお城で働くの? おいでよ!」

「考えたんだけれどね。うちには大きな子供がいるから」

 肩をすくめるニーナ。

「子供かあ。子供も良いよねえ」

 グレーテはテーブルについたまま赤ん坊を揺するような仕草をした……ので彼女はテーブルにこぶしをぶつけた。

「見合いもあんがい乗り気だったりするのか?」

 アキムがたずねる。

「ううん、やだ。まだサーシャさまとあいさつ以外のおしゃべりもできてないんだよ! それでなくっても、相手が誰なのかも分かんないもん!」

「そもそも、親が勝手に決めていいものでもないわ」

 ニーナは不満気だ。

「そうだよなー。当人同士が決めるもんだ。な、ニーナ」

 アキムはニーナの肩を叩いた。もちろん振り払われた。


「ねえ、グレーテは旦那さんにするんだったら、どんな人が良い?」

 ニーナはまたも僕のほうを見てたずねた。


「そうですねえ……。誰でもいいかな」

 グレーテは大して考えもしないで答えた。


「誰でも? 適当過ぎない?」

 ニーナは不満気だ。

「なんでしょうかねえ。これという人がいないもので」

 老人のような物言いをして茶をすするグレーテ。

「アキムみたいなのでも?」

「あ、それは無し。でも、ちょっとくらい悪い人でも平気かな」

「なんだよ。俺が大悪党みたいじゃねえか。俺だっておまえみたいなそそっかしいやつはごめんだね」

「たとえ話! アキムは親友」

 手を振りながら笑うグレーテ。


 誰でもいい、か。

 ちょっとくらい悪い人でも……。


「じゃあ、グレーテ。もしも、自分の旦那が『人殺し』だったらどう?」


 僕は思わずたずねていた。


「旦那さんが? 人殺しと結婚できるか、じゃなくって?」

 グレーテが首を傾げる。栗色のおさげが揺れた。


「あ、ええと。じゃあ、どっちもで」

 僕は慌てて訂正した。


「そうですねえー。もしも最初から人殺しの怖い人だったら、仲良くするのは難しいかな。会ったことがないから分からないけど。でも、自分が好きになった人がそれを打ち明けてくれたら、たぶん通報したりはしないよ。いっしょに悩むと思う。大変そうだけど……」

 腕を組んでうなるグレーテ。彼女は僕のほうではなく、天井を睨んでいた。


 ふと、別の視線に気付く。ニーナが僕を見つめていた。

「今の質問はナンセンスだったね。人殺しは刑務所か土の下にしかいないものだ。このまえ近所で事件があったからなんとなくね」

 僕は苦笑いとともに首を振って誤魔化す。


「ここのところ、みんな少し荒れてるわよね。近所のバーでも喧嘩で死人がでたとか」

 ニーナが言った。

「バーでのいざこざは昔からだけどな。それでも衛兵が出張る騒ぎになることはなかったんだよなー。この店は大丈夫か?」

 酔っ払いがたずねる。

「いまのところはね。私に声をかけてきたお客さん同士が言い争いになったことはあったけど、お父さんが一喝」

「ニーナはもてるんですねえ。羨ましいなあ」

「それはそれで面倒なことが多いけどね。“ヘンなの”が寄ってくるし」

 ニーナは隣の“ヘンなの”を見て笑う。


 それからも雑談は続いた。


 僕は満足していた。仲間とやりとりをしたのは気晴らしになったし、なによりグレーテの『人殺し』に関する見解が嬉しかったからだ。

 彼女とならば、僕は『人殺し』になっても生きてゆける気がした。結婚やお見合いの話では少々肝を冷やしたが、まだ目はあるようだった。


 これで、いつ宿命と対峙することになっても平気な気がした。



 でも、それは大きな勘違いだった。



「太刀筋に邪念がある。まだ早かったか」

 落胆の言葉。

 “あの人”は剣についた血を紙でふき取り、僕の腰から強引に鞘を奪った。


 僕の足元には、いまだ切り口から血を吹き出しながら生きた魚のように跳ねる“かれ”が居た。


 ……僕が斬首を務めた。はじめての相手は極悪人と定められている。

 “かれ”は三人を殺し、女性を犯し、さらには食料や金品を盗み出した男だった。

 これほどの極悪犯は多くはない。裁判などが長引いたこともあったが、“かれ”は僕のために取っておかれたものだった。


 愛しいそばかすの笑顔を思い浮かべながら振った剣は僅かに逸れ、“かれ”の首をはねるには至らなかった。

 軽い刃は気管に引っ掛かり、傷付けられた動脈から止めどなく流れ出る血が、柄を握る手へと届いた。


 一撃で落とせなければ罰則があるというわけでもない。“あの人”さえも、はじめての相手では二の太刀が要ったそうだ。

 

 だが僕は、二の太刀どころか三度振るっても首を斬り落とせなかった。

 遺体と違って、生体は動くことがある。当人には動くと苦しむことは伝えられているから、好んで暴れる者は滅多に見ない。

 それでも、微妙に首が曲がっていたり、身動ぎをするのは仕方がない。

 だから、心身を罪人と一体化させて、その微妙な動きを読んで剣を抜き放たねばならない。


 傷を負った“かれ”は酷く暴れた。

 多くの罪を重ねてきた“かれ”は、被害者然として僕を睨んだ。

 実際の被害者がどうだったか知らないけれど、あの憐れな瞳はそうとしか思えなかった。


 見かねた“あの人”が剣をとりあげ、すぐさま“かれ”を終わらせた。


「……執行完了!(オンナコンチェン)

 歯切れの悪い刑吏長の宣言。


 僕は間違っていた。

 初めて“かれ”の頭が転がるのを見たとき、可哀想だと思ったから、救ってやらないといけないと思っていた。

 死にゆく者という点では罪の有無は関係ない。慈悲の心なら、あのそばかす顔を思い浮かべれば上手くいくと思ったんだ。

 そうすれば“かれ”も最期は救われて、僕も『人殺し』の罪を負わず、父にも褒めてもらえると思っていた。


 だが僕は間違い、強盗と強姦の殺人犯である“かれ”は被害者となり、その後釜には僕が居座った。


 清らかな彼女の特権を盗んで穢し、手を握られない憐れな罪人を苦しませた『人殺し』。


 『人殺し』。『人殺し』。『人殺し』。


 僕は人殺しだ。

 ……一人殺せば、あとは何人でも同じだった。


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