表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/54

死刑1-28 転がり落ちるように

 グレーテの幼馴染みのアキムは最期まで軽口をたたいていました。

 わたくしを批判し、メイドを嗤い、仲間であるはずの商人へまでケチをつけました。


 国の情勢がこのような状態でなければ、ここまで早急に処刑されることはなかったでしょう。国や王室への敵意は処刑の優先順位を上げるのです。

 まさか知人だからといって優遇処置をするわけにもいきませんし、あらかじめルールを変更しようにも国賊に関することを甘くするのは星室も軍部も黙っていません。もちろん、国民からも非難されるでしょう。


 あの場からわたくしとグレーテが去ったのち、アキムはテロへの関与の否定どころか、自身の仕事を自慢げに語ったそうです。

 観光客のアレッサと護衛の軍人の殺害事件での見張りや、馬車の破壊、国境室の待機小屋および天然ガス掘削施設への不法侵入。

 複数回にわたる処刑のカメラ撮影協力。|CHS《シャルル=アンリ・サンソン》の母体は商人の情報共有機関の商館であり、数々の裏の商売を計画していることも話しました。

 彼の行いでいちばんたちが悪かったのは、最近起こった暴徒と軍部の衝突事件で煽動をしたことでした。双方に死傷者が出ています。

 その事件で逮捕された暴徒たちは、|CHS《シャルル=アンリ・サンソン》のメンバーではありませんでした。


 直接の殺人行為はしていないものの、度重なる王室への侮辱行為と、結果的に国民へ与えたダメージでみれば、ソソン王国の法では彼の人生一回では償えないほどの罪とされます。

 ……たとえばの話ですが、どこか別の国の法律の場合は、死刑に届く罪だったのでしょうか?


 “かれ”は城がテロ活動の存在を公式に認めるまえから、城下で開国を望む変わり者として見られていました。

 さまざまな現場に姿を現していたこともあり、壇上にあがったときには「やっぱりお前か」という声も聞こえました。


 “かれ”の死罪のへウェイトの高い罪は、王室の否定と交通室所有の馬車の損壊行為と暴動の煽動。

 裸に剥かれた“かれ”は、まずは車輪に結び付けられて、回転により脳を揺さぶられ続けます。

 最初のうちは軽口をたたき、回転を楽しんでいたようですが、そのうちに口数が減って嘔吐をしました。

「こっちの酔いは好かねえな……」

 さるぐつわをさせなかったのは、吐瀉物のせいで窒息して処刑が停止するのを避けるためです。


 そのせいで、“かれ”は何度も死刑の廃止と近代化を謳い、ルカ名誉国王を誉めそやし、アレクサンドラ王女を親友の名前を使ってまで罵倒しました。

 わたくしは彼の怒りの瞳を見つめ続け、何も反論しませんでした。


 それから、暴動での死傷者のために彼は衛兵の数人に殴打を受け、命を落とした人の数だけサーベルを腹に受けました。

 抜かれず腹に刺さったままの二本のサーベルは、致命傷をあえて避けています。


「いてて。みんなのために何でも捨てて来たつもりだったが、自分の命をなくしちゃ世話ないな」

「喋ると苦痛が増しますよ」

 何がみんなのためですか。グレーテの気持ちも考えて欲しいものです。

「酒がありゃマシなんだがな。あーあ、飲みてえなあ。あの処刑を楽しむ馬鹿どもをつまみにさ……」

 アキムは口元を歪めました。

「あなたは酔っ払って周りに迷惑を掛ける人ではありましたが、あの議論の熱意は頼もしくあった」

「んん? 王女さん、どっかで話をしたか……?」

「ご実家の農園は西部らしいですね。ギザギザの山しかない田舎の北部とは違って、良いところです」

「それって……ああ、ルフィナ! ちぇっ! グレーテのやつ、なんでちゃんと紹介してくれなかったんだ! そうすりゃ……」

「変化を望むなら、テロ組織などでなく、わたくしの城の門を叩くべきでした。もしかしたら、友達にだってなれたかもしれなかったのに……!」


 わたくしは三本目のサーベルをかざします。

「良いな、友達……だけどよ、門を閉ざしてたのは俺たちのほうだろ?」

 アキムはいっしゅん笑いました。それから、再び瞳に炎を灯してわたくしを睨みます。


「さあ、刺せよ死刑姫サーシャ! 良い女にはさすほうが好みだが、あんたになら満更でもないぜ!」


 唇をかみ、黒きカクテルとプラチナをひるがえして、罪人の胸に罰の刃を突き立てます。


――酔ってないときは、面白くていいヤツなんですよ。


 刹那、わたくしの胸にも氷が突き刺さり、彼の苦悶が震えを引きずりよせ、ぬめりとともに身体のバランスが崩れました。

 体重を預けられた刃が冷たく胸へ挿入されていくのを感じ、手がサーベルから離れ、お尻から血の海へ座り込んでしまいました。

 わたくしは、ドレスや下着へ血が浸み込む中、果てを迎えました。


 彼はまだ何か言おうとしましたが、肺を痛めていたのでしょう。軽口でも罵声でもなく、血を吐きました。


「これより、国を混乱させた罪への罰として、国民による石打ち刑を始める!」

 刑吏長の声。わたくしは給仕の一人に抱えられてアキムの前よりどかされます。


 それから、革命の炎を灯したままの瞳は、正義の雨により、そのまぶたを閉じました。


 ……こうしてわたくしは、親友グレーテの幼馴染みを殺したのです。


 とうぜん、あの子と顔を合わせることなんてできません。

 グレーテ自身はいつもどおり仕事をこなしていますが、付き人の仕事はニコライがテロの危険性を重く見て外出を禁じたので行われなくなりました。

 実はわたくしの馬車も一度襲撃を受けています。


 それからは、わたくしはもちろん、彼女からもこちらへ声をかけてくることはありませんでした。


 わたくしとグレーテ。しょせん、血の道を行く君主と一般国民なのです。

 お互いに手の届かない遠い憧れの存在としてあるべきだったのでしょう。


 卑しいサーシャはグレーテを失ったぶん、レオニートに傾倒しました。

 彼はずっと王女のそばにいてくれます。正しくないことを叱ってもくれます。

 何があっても変わらないのです。


「レオニート。わたくしのこと、どう思いますか? 愚かな君主だと?」

「いいえ。歯車のかみ合わせの問題でしょう。世界という大きな歯車が無闇に大きすぎるのです」

 無表情だけど温かい励ましです。

「ですが、アキムはグレーテの親友でした。それをわたくしが殺したのです」

 卑しい卑しい小娘は励ましに逆らい、あえて嘆いてみせます。

「気に病むことはありません。あのような馬鹿は死ななければ治りませんから」

「よく知らぬ者を悪く言うべきではありません。テロリストにも憂国の志を持った者はいるのです。きっと、わたくしは近いうちにこの城から追い出されてしまうでしょうね。それか、殺されてしまうでしょう」



 アキムの処刑後、CHSは本格的な武力活動をスタートさせました。

 散発的なテロではなく、戦力を西側に集結させて町の占領を始めたのです。軍部も武力でそれを排除しに掛かりました。つまりは内戦です。

 連中は、近代的な武器をいくつも所持していました。気配はありましたが、ピストルやマスケット銃の世界ではなく、マシンガンやロケット砲まで確認されているようなのです。

 戦いの音は、離れた城にまで響いてきます。ニコライ将軍が軍を率いて鎮圧に向かいましたが、きっと負けてしまうでしょう。


「何を弱気なことを! 間違っているのは世界です。テロリストです。王女陛下が殺されるいわれはございません!」

 彼はまだ叱ってくれる……。

「ルカの娘に生まれた悲運をかこつのがいいのかもしれません。王政というものは、歴史では常に倒されてきたものです。どんなに正しくあっても、そうでなくとも」

「世界にも現存している王室はございます。ソソンは長く王政を続けてきました。それはこれまでの君主の過ちや教訓から、次代がより良い政治を行ったからです。ルカ王は教訓を与えました。王女陛下は間違いを正し、未来を拓くのです」

「ルカ王は、本当に間違っていたと思いますか? 今の国の状況を見ると、言い切れなくはありませんか?」

「間違っています。彼が余計なことをしなければ、反逆者どもが勢いづくこともありませんでした。犯罪や事故の増加も招いています」

「ですが、法のひずみや狭間に苦しむ者の存在に気付くこともなかったでしょう」

 心とはさかしまな愚王の肯定。


「いいえ。それでも、ルカ王は間違っていたかと存じます」

 レオニートはきっぱりと言いました。


「なぜですか?」


「簡単な話です。あなたを遺して逝ってしまわれたのですから」

 ……お父様。


 世界ばかりに目を向けて、卑しい毒婦に誑かされたお父様。

 花瓶を倒したわたくしを叱らなかったお父様。


 わたくしはずっと待っていたのに……。


 どうして……。


「!?」

 わたくしはいきなり抱きすくめられました。頼んでもいないのに。


「ちょ、ちょっとレオニート!」

「……静かに」

 レオニートは耳元で静かにささやきました。でも、それ以上の狼藉はありませんでした。


 彼の抱きかたは、お返しを強く求めてくるようなグレーテとも、身体をまさぐろうとしたローベルトとも違います。


 ただ、大きな身体で包み込むように、でも少しだけ硬い抱擁です。


「……大丈夫ですから。私が、ずっとお側にいますから。……サーシャ」

 その声は、どこかお父様に似た響きをしていました。

 わたくしは驚きました。これまで彼の抱擁で逃げていたお腹が、しゃんと落ち着いていたのですから。


「スパシーバ、レオニート」

 わたくしは彼に礼を言って、抱き返さずに静かに離れました。


 わたくしから彼への感情の正体。そっか。そういうことだったのですね……。

 離れて見つめ合ったわたくしたちは、きっと酷く寂しい顔をしていたのでしょう。



 テロとの戦いは難航しました。いいえ、封建的な国家と正義の革命軍の戦いと言ったほうが、世界からみて正しいのでしょうか。


 アキムは処刑をされることで、革命家としてのまたも仕事を遂げました。

 いったいどれほどのカメラがソソンに潜んでいるのやら。

 わたくしも新たな押収品からやっとケーブルを見つけ出しましたが、彼の哀れな死にざまを収めた動画が勝ちを収めたあとのことでした。


――国は小娘のオモチャなんかじゃない。


 そして、グレーテと苦労して撮った映像は否定され、デリートされました。


 明確なソソン自治区を名指しの抗議。国連軍派遣の議論。

 国際会議の場においても、ソソンの内紛を利用していくつかの国が自分の気に入らない国へと批判を投げ合いました。

 ソソンと国境を接する国々もやたらと声が大きくなっていたようです。


 これまでわたくしの役に立ってくれたコンピューターはバッテリーが消え、もはや言いわけも情報収集もできなくなりました。


 それから、とうとう武装したテロリスト集団がソソンの西部を制圧してしまいました。

 ニコライ将軍は帰還しましたが重症を負いました。将軍を逃がすためにたくさんの兵が勇士となりました。

 その中にはシードル副将軍もいらっしゃっりました。いくら勇敢な人達でも、現代的な重火器に勝てるはずがないのです。


 西部はソソン内では比較的気候が穏やかで、農園や牧場が多くあります。

 ここを押さえられてしまったら、生産力の低い他の地域は貧困にあえぐこととなります。


 愚かな世界の力がいよいよ、わたくしの愛を上回ってしまったのでしょう。

 貧困や治安の悪化は思想へも影響します。国民はつぎつぎとCHSに賛同して、王室に死刑の廃止を求めはじめました。


 本来はこれだけ多くの国民が反対をすれば、ソソンの君主はそれを考慮すべきなのです。


 ですが、わたくしは愛を与えてくれなくなった今の国民よりも、わたくし自身を優先しました。


 本当は分かっていたんです。死刑の是非はおいて、罪に応じた処刑方法を選ぶことが無意味だということも。

 死は究極の平等です。ならば罰も公平であるほうが望ましいのです。多くの地獄や輪廻転生でさえも、本当は不公平なのです。


 今なら話せます。


 公開処刑を始めたのは、わたくしが個人的にユーコ・ミナミを辱めるのが目的でした。世界への復讐。いいえ、ただのやつあたり……。

 あの頃の城内の空気も後押ししましたが、けっきょくは王女の我がままがいちばんの決め手です。


 それでも、今日までのことが無意味だったとは思いません。


 人はいくらでも罪を重ねることができます。アキムのように複数人分の死罪を犯す者や、わたくしのように生くる限り血の河を泳ぐ者、独裁者や虐殺者などこれまでの歴史的人物にしても枚挙にいとまがありません。

 裁きを逃れ続ければ、さらに罪を重ねて呪いを撒き続けるでしょう。


 それに対して、人の命はひとつ。罰を受け汚名をそそぐことには限界があります。

 刑を引き延ばし、罰の濃度を高めることが見せしめと虐待の目的だと考えていました。

 これは平等のための仕事で、そうでもしなければ新たなスタートが切れない被害者がいるのだって事実です。

 見せしめは民を悪の道から遠ざける利点がありますが、すべての悪に対して適切な罰を与えることが達せられなければ、世界の思うようにただの残虐行為として足が出てしまうでしょう。

 かといって、生きて償わせれば、被害者や遺族は罪人の生存の事実から起こる苦しみから永久に解放されません。

 罪人自身も生き続けること自体が罪となってしまいます。


 あっちを立てればこっちが立たず。酷ければどっちも倒れてしまう。

 本当はそれらを帳消しにするだけの愛が罪人を赦し、被害者を癒し続ければ釣り合いが取れるはずなのです。

 死が究極であるのなら、愛もまた究極を目指さねばなりません。

 虚構の宗教なんかではなく、じっさいに語り合い抱きしめ合える世界……。


 ですが、その環境が完成するのはもっともっと先の話。

 今はまだ苦しみの円環を断ち切り、慈愛の天窓を開き、未来に浄化の光をたくさん浴びられるように支度をする時期なのです。


 どれほど罪を背負おうと、どれほど転げ落ちようと、欺瞞だろうと、偽善だろうと。始まりがやつあたりだろうと関係ありません。

 今は公開処刑をやめてはいけないのです。やめられないのです。

 父を憎んだのもサーシャであれば、民を愛するのもサーシャなのです。


 でも、今を生きるかたがたが駄目になってしまえば、その未来もおとずれえない……。


 信心を取り戻すには、やはり『みんなの願い』をかなえるほかにありません。


「残虐な処刑を廃止しろ!」

 まだ処刑は廃止いたしません。それがみんなのためなのです。


「城にある食べ物を寄越せ!」

 西が戦地になった時点で備蓄庫の解放は済んでいます。

 残っているのは城内の者が生きるためのぶん。彼らにだって権利はあります。

 でも、罪はありません。あなたたちと同じ一般市民。なぜならソソン王国には貴族がおらず、王室に残るのもわたくし一名だけなのですから。


「愚かな王女を、ルカの語らいへ引きずり出せ!」


 ……そう、責任を果たすべきなのはわたくしのみ。

 ずっとみんなに寄り添い歩いたわたくしは、全ての罪を拾い集めてきたのです。



 城は群衆とCHSにより包囲されてしまいました。衛兵たちが何とか防衛してくれていますが、戦いで傷付き、敗北で威厳を失った彼らは長くはもたないでしょう。


「アレクサンドラ王女陛下。脱出の仕度が整いました」

 頭の包帯に血を滲ませたニコライ将軍が言いました。お城には秘密の地下通路があるのです。ソソンが建城したさい、趣味を兼ねていつかの切り札として用意したものです。

 今日まで実用的な理由で使用された例はないという話です。


「逃亡はいたしません」

「は!? なりません! 我が友ルカ王の忘れ形見をみすみす死なすわけにはまいりません! 王室の人間はあなた一人なのですぞ!」

「そのたった一人の君主が逃げて、いったい誰がこの国を統治するのですか?」

「囲んでいる連中はテロリストです!」

「一般の臣民のかたもたくさんいます」

「それでも暴徒です!」

「臣民を暴徒たらしめたのは飢えと混乱です。テロリストだけでなく、連中を抑えられなかったわたくしたちにも原因があります」

「そ、それはそうですが……。このまま籠城していても、らちがあきませぬぞ。逃げて策を練りましょう」

「ここは狭いソソンなのですよ。城から外に出て、どこへ行こうというのです?」

「おっしゃるとおりですが……それでも、私はサーシャ様に死んで欲しくはないのです。ルカの……ルカの忘れ形見……」

 お髭のニコライはひざまずき、顔をしかめて涙を流し始めました。

「スパシーバ。あなたはわたくしをずっと娘のように思ってくれていましたね」

 彼の包帯を巻いた額にくちづけます。甘いルージュと血の味が混ざり合います。

「友が死に、息子のロマンが死に、右腕のシードルも死にました。このうえあなたを失うことになれば、私はどうすればいいのですか?」

「……死にに行くわけではありませんから」

 わたくしはもう一度額にキスをし、彼の首や髭を撫でてやります。

「今晩、CHSと接触をします。その後に、わたくしがルカの語らいに立って、革命団体への和解の提言を行います。双方から代表者を選出してディスカッションを始めましょう。国民アンケートも活用します」

「譲歩なさるので?」

「少しね。処刑廃止と近代化はやっぱり飲めません。何か他の手を探ります。彼らに自ら国を変化させた実感を与えてやれば、共存の道も開けるかもしれません。それから、近代化の難しさや、これまで処刑を行ってきた理由や新制度の目的などを再度、説明します」

「上手くいくとは思えませんが……」

「では、ニコライはほかに良い方法が思い付きますか? 立てこもりを引き延ばしたところで、国民が殴り合い、飢えて寒さに震えるだけです」

 ニコライは唸りました。それから息子の名をつぶやきました。

 可哀想なニコライ……。

「本当は、知っているの。あなたも自身の義と私怨のあいだでずっと苦しんでいたことを。それでもわたくしは、あなたの将軍という立場に頼らなきゃいけない……ニコライ、わたくしを助けてください」


 ニコライは厳しい顔をふっと解いて笑い始めました。


「我が盟友ルカよ! おまえの娘は世界に誇る名君であるぞ! 俺はそのために命を捧げられることを誇りに思う!」

 天井に向かっての大笑い。彼は咳き込み、脇腹を抑えました。


「ニコライ。無理はしないで」

 わたくしは彼の身体を支えます。

「無理をしないで? ははは、どっちですか。……分かりました。アレクサンドラ王女陛下。本当に、あなたはお優しい人です。では、あらかじめ、君主が何を宣言するかを向こう側に伝えておくのも手ですな。こちらからの譲歩であれば、彼らも混乱の鎮圧に協力してくれるはずです」

「……お願いします。任せましたよ、ニコライ」


 我が父ルカの盟友ニコライは、わたくしの命令により何人かの兵を伴い、書状をたずさえて城を出て行きました。


 ……彼は陽が沈んでも戻りませんでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ