3散 見学
『力炉冷却完了。地形情報を更新します。探索を続行してください。』
「あれ? N1たちが見えなくなった。」
何かの遊びなのかな、N1たちが離れては壁を叩く。その度に上から厚い金属板が降ってくる。もちろん力炉があるから、ひしゃげてしまって被害は無い。
僕も壁を叩いたら板が降ってくるのかな。
N1がやっていたように壁を叩いてみると、灰色の通路全体が揺れ、壁には亀裂が入った。
「板は降ってこないけれど、壁から赤色回転灯が生えた。」
『N1多数接近。先ほどのN1たちは、通路の先で下方向に進み始めました。』
下? 何があるんだろう。通路の先に行ってみよう。
目の前の亀裂が入った金属板を押し込むと、小さな穴が開き新しい種類のN1が並んでいた。
「黒い、人……新種か、バケモノめ! 撃て——!」
「きゃああ——!」
「あ、チカチカする。新種かな?」
『……力炉に異常ありません。データ収集を始めます。後方のノイズを遮音しました。排除しますか?』
そういえば後ろにN1が1つ残ってたね。
黄色い部分を押さえて丸まっているが、面白そう。真似をしてみよう。
『保護対象に指定しました。以降、モニターに推移を表示します。アポリマタと仮称します。』
「ひっ、何なの? ……え?」
「こう、かな? 次は、こう、っと。何の意味があるか分かる?」
『判別不能。殲滅対象の微細なデータは存在しません。隔離しますか?』
頭上にアポリマタと表示された黄色のN1の行動を真似ていく。座る、後退る、こちらを見る、立ち上がる……またビクっとした。意味不明な行動。蓄積データが欲しい。
『実験場に隔離区画を設置します。レポートにて素体:アポリマタの報告を追加します。』
「じゃあ、捕まえなきゃ。」
「きゃっ、あ”あ”-!」
距離を詰め、勢いのままにアポリマタをつかむと、隔離区画へ転送したようだ。掴んでいた棒状の肌色が残っているが、後で押しつけておけば良いだろう。
棒もまた転送され、手に付いた液体を床にこすりつけていると、報告が入った。
『アポリマタの損傷部位を圧着……失敗しました。素体の強度に問題があります。廃棄部位からデータを収集します。』
あまり強く触れてはいけないのかな。副砲の出力を調整、廃棄部位を基にN1の再戦闘データも書き換えなきゃ。
『アポリマタを配置し、戦闘データを収集します。配置する地域を選んでください。』
選択肢が表示された。第1から第7区画まで。第1区画に三角形 ▷ が表示されている。
レポートの数値が低い所だから問題ないかな?
『第1区画に配置、欠損部位に保管中の武器を癒着することで安定した戦闘が可能です。』
アポリマタの状態モニターに92式試作砲台が追加された。形が少し変だが、動けば良い。
上手くいくと良いなぁ。
『アポリマタ、戦闘を開始しました。初弾発射時、主砲破損。癒着開始……成功。継戦能力に難あり。廃材を消費しました。』
「アポリマタの主砲が短くなった? 黄色の部分は、どこ行ったのかな?」
「消え……た? 行方不明の原因は、こいつか!」
報告を聞きながら考える。損傷が激しいけれど、すぐに戦えるみたい。癒着が急すぎたのかな。
黄色の部分が茶色になっちゃったなぁ。戦闘前よりゴツゴツしてるのは気のせいか。
ガンッ
力炉に何かが当たった——まだいたの? N1は
「ん? あぁ、まだチカチカさせてる。もう、要らないよ。」
『警告。N1の完全排除が選択されました。球体に防護膜形成……完了。球体を座標に固定……完了。力炉出力120%……140%……以後、廃材に関する報告は省略されます。』
状態表示モニターが赤く点滅している。アポリマタは、次の区画に移動してるみたい。
後でレポート読ませて?
『かしこまりました。お休みなさいませ。オートモードに移行。全条件を破棄します。』
「ああ、楽しかった。」
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*補足
アポリマタ:ギリシャ語の廃品を文字っています。




