9。贈り物
引き続き街ブラです。
トールが服を選んでくれている間に、雑貨店や靴屋などをまわり、買い物を済ませた。ちょっと休憩にしようと裏路地を抜け、広場に出た。
煉瓦敷の円状の広場で中央には噴水があり佇む人に涼を届けている。
広場に沿うように出店が並んでおり、買い物を楽しむ人も結構居て、噴水の周りでは子供が数人遊んでいる。
「あ!ガラタナごめん!先にハサミを研ぎに出してきていい?」
街に行くならと、ついでに仕事用のハサミを持ってきたのをスッカリ忘れていた。
「いいよ。どっち?」
「すぐそこだから、パパッと走っていってくる!待ってて~」
私はガラタナを広場に残し走り出した。広場からは目と鼻の先。いつも仕事用のハサミ研ぎを頼んでいる研ぎ屋さんに入る。
「おぅセノオちゃんいらっしゃい!」
「こんにちはおじさん!ハサミお願いね」
「おうよ!いつも通り2、3日みてな。来週にはカイヅ村に送るよ」
「ありがとう。おじさんの腕は本当に素敵だから、使うのが毎回楽しみなのよ」
ニッコリと笑い、おじさんを持ち上げることも忘れない。
事実、おじさんの研ぎの腕は本当に素晴らしい。
でも完璧な仕事に+αでやってやろうって気持ちが入れば更に素晴らしくなると、同じように手に職を持つ私は思うので、毎回感謝を述べる。
研ぎ屋を出て広場に戻ると何やら騒がしい。
「何かあったの?」
「兄妹? なのかな。妹を騎士ごっこに誘ったみたいなんだけど、お姫様ごっこがしたいって嫌がって、兄が怒って、妹大泣き」
ガラタナは一部始終を見ていたらしく、簡単に分かりやすく教えてくれた。
確かに7、8歳くらいの泣いている女の子と60cmほどの長さの棒を持つ10歳ほどの男の子が対峙している。さっき噴水の周りで遊んでいた子のように見える。
女の子の足元には同じような棒が転がっており、女の子が捨てたものだろう。
「ラビ!!あんたまたリリーを泣かせて!リリーは騎士ごっこなんかしないっていっつも言ってるだろう!」
「いてっ!」
母親らしきふくよかな女性がラビ君の頭に拳骨を落とした。
「なんでだよ!女性騎士だっているだろ!!」
「リリーは嫌がってるのが見えないのかい!?お兄ちゃんなんだから諦めなさい!」
「──母ちゃんはいっつもそうやって!!リリーばっかり!」
兄妹喧嘩が親子喧嘩に発展したらしい。
「セノオ、借りるよ」
私の後頭部に何かが触れ、パチンという音と共に結ってあった髪の毛がさらっと落ちた。
「えっちょっとガラタナ!?」
「おい! チビ!」
「チビじゃねぇーー! ラビだ!!! 誰だババァ!」
ガラタナは髪の毛を結びながら騒ぎの中心に歩いていく。
「騎士ごっこがしたいんだろう相手してやるよ」
落ちていた棒を足で蹴り上げキャッチする。
(本当に器用だなガラタナ)
「痛い目みてもしらねぇぞババァ! 俺は5歳から剣を習ってるんだぞ!」
「ほら来いよチビ」
「チビじゃねぇーーー!」
チビ君じゃない。ラビ君のお母さんは突然出てきたガラタナに警戒していたようだが、それに気づきニコッと笑い返したガラタナを見て任せることにしたようだ。
「やぁぁぁぁぁ!!」と男の子は叫びながらガラタナに向かって走りだし、棒を振り下ろすが、ガラタナは器用に往なし、棒で男の子の棒を絡めとり空に飛ばした。
秒で終わった。
クルクルと空を飛ぶ棒を、対峙していた男の子を含め、広場にいた全ての人がポカンとみていた。
パシッと落ちてきた棒をガラタナがキャッチすると広場からは、わぁっと歓声がわいた。
「すげぇな! 見事なもんだ!」
「ねぇちゃん次は俺とやろう!」
「本当に女性騎士さんかなんかかい!? これ持ってきな!」
「ラビもこれに懲りて妹苛めはもうやめなさい!」
ガラタナの元には、果物、お菓子、花、対戦相手などが両手いっぱい集まった。
「おねぇちゃんありがとう!」
「お怪我はありませんでしたか?お姫様」
女の子と目線を同じにしてガラタナが笑うと、泣いていた女の子は恥ずかしそうにしていた。
「おい! お前! 覚えてろよ!!」
敗れた男の子は将来が心配になるような下っぱの負け台詞をはき、走り去ろうとした。
「あっちょっとまてチビ! ほらっ」
「チビじゃねぇーー! ラビだ──わっ」
男の子は真っ赤な顔をして振り向き、その瞬間に飛んできたリンゴを上手にキャッチした。
「もらったから一個やるよ。また遊ぼうな」
「────っ首洗って待ってろよ!」
少年の返答にやはり心配を覚えるが、顔には笑顔が浮かんでいた。
子どもだけのグループで育っただけあって、子どもの扱いに慣れているなと感心する。
それから少しの間、ガラタナは腕に覚えのある街の人達と棒を交えて遊んでいた。
「おかえりガラタナ!」
「お待たせ! 遅くなってごめんね。久しぶりだったから楽しかった。何か一杯貰ったから、しばらくお茶菓子には困らなそうだよ」
「あはは。カッコ良かったよ。本物の騎士様みたいだった」
そう言うと、少し頬を赤くしたガラタナは私の後ろに周り、手早く私の髪を結った。
編み込みながらのハーフアップ。
触れると、先ほど貰ったであろう可憐な花が飾ってあった。
「あげる。似合うよお姫様」
「────っ……お姫様って何人いるの?」
耳元でそう囁かれ、照れ隠しに睨んだが多分顔が赤くて怖くはないんだろうガラタナは笑っていた。
読んで頂きありがとうございました。
誤字脱字ありましたら申し訳ありません。
次回も街ブラです。ちょっと話が動けばいいなと思っています(*´-`)