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ホントのカラダを探しています  作者: keitas
カノイ王国編
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83。セリナという女性。

セノオの母のセリナの話です。


少し暗い話です。

 どうも。セノオの母のセリナです。



 本名はセリーナ・ディミトロフ。

 父はカノイ王国のディミトロフ公爵家の次男。

 まぁ覚えてないし、名乗ったこともない。


 母はアイラ・ディミトロフ。

 魔女と呼ばれた女の孫娘。

 母自体には殆ど力は無かったけれど、母は祖母から力の使い方を完璧に習っていて、私の力が魔女並みに強く上質だと母が確認したとき、父の薦めで私の力を使い、トルネオ王国まで飛んだ。

 その際に、監視のように母にくっついていたメイドを呼び出して私と母2人きりにしてくれたのも父だそうだ。


 父は母にベタ惚れだったらしい。


 トルネオ王国は人質として渡った筈のリリー姫が花開いた自由の国。

 魔女が亡くなり、捕らえられ、後の人生を城で幽閉されて過ごしたアイラの母が憧れた国。


 それを聞かされて育った母が外国に逃げるなのら、トルネオ以外考えられなかった。



 最初はトルネオの王都に居を構えたけれど、私の力があまりにも大きく、赤子の体には耐えられなくて体調を崩すことが増えてきた。


 母は直ぐに大きな湖を有するカイヅ村へ移り住み、湖を水鏡に使って、私の器からはみ出す力を吸い取る術を仕掛けた。

 それから私は村の子として育った。



 7歳の誕生日に、魔女の事やカノイ王国の事など全てを教えてもらった。

 そして母に術を習いながら小等科に通う。そんな生活が始まった。

 私は術を習うことが楽しく、ある程度の事を習うとオリジナルの術を作り始めた。


 湖に力がとられているとはいえ、元来の力も許容量も豊富で大きい。

 力の流れ、組み方さえしっかりとイメージできれば面倒で長ったらしい詠唱なんてものはいらない。

 勝手に陣が出てきて勝手にスルスルと模様になっていく。


 そんな私を母は不安な面持ちで見つめることが多くなり、母を安心させるために、私は出来る限りの力を使い予知夢を見る術を自分にかけ、逐一報告した。


 その予知は100発100中。

 明日の事からどんな先の未来までどんなものでも望めば見れた。


 小等科を卒業した。

 中等科までいって勉強する気は更々無かった。手先は器用だったので、丁度募集のあった理容室に勤めた。


 20歳になったある日、母が流行病で亡くなった。

 予知できていたけれど防ぐことは出来なかった。


 知っていたのに何も出来なかった。


 大好きだった術作りもする気になれなかった。

 1度掛けた術のキャンセルは、更に大きな術を上掛けするか、綻びがでるのを待つしか方法が無いので、予知夢はどんなことがあろうと見続けた。


 湖の力を使えば上書きするのは簡単なことだったけれど、とにかく力を使いたく無かった。


 こんな力は無意味だと。

 母の死を止められなかった自分の存在を責めた。



 2年後、仕事で使う鋏をうっかり落として刃が欠けた。

町の鍛冶屋で作ってもらおうと思ったけれど、王都に良いところがあると同僚が教えてくれた。


 王都に行く前の日も夢で次の日の事は把握していた。


 鍛冶屋の近くでケルトに出会った。


 夢に彼は“登場しなかった”。


 あまりに驚いて凝視したら、彼もまた頬を赤らめてこちらを見ていた。


 母の死さえ覆らなかった予知。



 この人が欲しいと思った。



 予知夢では私は数カ月後に職場で出会う人と結婚し、男子を一人産み、母から娘へと繋がる力を途絶えさせる筈だった。



 ケルトは目が合っただけで終わらせることは無かった。食事に誘われ、一夜を共にした。


 初めて自分の力を負かした人物。いやが上にも期待は高まりかつて無いほど興奮した。


 また会う約束をして暫くすると、妊娠に気付いた。

 狂い始めた予知。歪みが出来たようで術は弱くなっていき、妊娠がわかった頃には予知のような夢は全く見なくなっていた。


 お腹の中の子からは力は一切感じられない。

 男の子だ。力のリレーは終わるんだと、必死に悪阻と戦った。

 悪阻はかなり酷く、仕事を辞めてもケルトに会いに行くことは出来なかった。


 そもそも、ケルトはどういう人なんだろうと有り余る時間で考えた。

 不安な時の思考なんて悪い方にしか片寄らず、ケルトが迎えに来てくれたときはかつて無いほど泣いた。


 まるで普通の女のようだと思った。


 ケルトといれば私は普通だ。


 そう思い、ケルトと結婚した。

 ケルトと過ごす日々は幸せそのものだった。

 ケルトはただの女を愛してくれる。私もそんなケルトを愛した。


 そしてリリアンナに会った。

 彼女が引き起こしたことは大して気にしなかった。

 力も極小だし、彼女自身に害はないと判断した。


 そんな中、生まれたのはセノオ。女の子だった。


 ザワッと身体中に寒気が走った。


 でも彼女からは全く力は感じられない。私の子どもで力は終わる。予知夢はここの部分に関しては当たっているかも……。


 でもケルト(イレギュラー)の子どももまたそうなのかもしれない……。


 セノオは愛している。愛する人との間に産まれた自分の子どもだもの。

 でも常に監視するようにセノオを見ている自分がいた。



 湖のあるあそこならもしセノオの力が生まれてしまっても何とか対応できる。


 自然と自分の力を畏怖の対象としていた私は、村に戻りたいと切り出した。

 そのタイミングがセノオの私への暴言と重なり、ケルトも頷いた。



 村に戻っても、セノオの中に力が生まれる気配もなく、予知夢を見ず力を使わなくなった私から溢れる力は湖へ……。


 普通の親子……まぁ夫が単身赴任のような生活が暫く続いた。


 そしてリリアンナが村で目撃され、ケルトと相談して(力を持たない)セノオに何かあっては困ると離婚を決めた。

 愛する人との離婚。辛かったけれど、完全にセノオの為にと、裏無く動いたのはこれが初めてで、母としての自分は満足した。


 セノオが小等科を卒業すると私と働きたいと言ってきた。

 嬉しくて二つ返事で了承した。

 ケルトは高等科、望むなら大学まで出させたいと言っていたけど、他でもない娘自身が決めた進路。最後はケルトが折れた。


 ……あれはセノオと暮らしたいだけだと思う。高等科も大学も近場だと王都にしかない。



 セノオに理容師の技術を教えながら過ごす毎日は充実していた。覚えもよく、顔もいい(親バカではないと思う)。

 常連客にも可愛がられた。


 そんなある日、私も母と同じ病にかかった。

 母と同じ未来を辿るのなら2か月後にはこの世にはいない。


 どうしようか……と、途方にくれた。セノオには力の欠片もない。

 このままセノオで終わってくれれば。


 誘惑に負けて、久しぶりに力を使ってセノオの未来を覗いた。

 26歳で隣町に住む男の子と結婚して、この家で幸せそうに暮らしていた。


 晩婚……に掛かるくらいの年齢だけれど幸せならいい。


 力を使った為か、私の体が弱るのはかなり早かった。

 1週間後にはもう体を起こすことも出来なかった。

 医者が呼ばれ、セノオに全て伝わった。


 医者が帰ったあと、セノオは私に縋って泣いた。

 ただ謝ることしか出来なかった。私が安心したいが為にセノオとの時間を減らしてしまった。


 泣き続けるセノオの髪を撫でていると、セノオは疲れて眠ってしまっていた。


 そして違和感に気付いた。


 セノオに小さな力が……生まれている。



 愕然とした。


 何かしなければと思い、急いでセノオの未来をもう一度探る。




 未来は変わっていた。


 ケルトが死に、居合わせた男の子と入れ替り、男の子はセノオを訪ね─────


 全く違った未来。


 私がセノオの未来を覗かなければ……あと2ヶ月生きていられたらケルトが死ぬことも、セノオが想い人と別れることもなかった……?



 何か! 何かしなければ!!


 母が残し、私が書き加えた術の指南書はクローゼットの中にある。

 セノオが、想い人の幸せのために使える力は湖に沢山ある。

あとは……ケルト。彼は私が引き取ろう。



 セノオの未来を再び覗いた体はもう動かすだけではなく、口を開くことも出来なかった。




 力を使うときは詠唱なんていらない。

 全ての力を自分の形になるように自分の様に動くように編み込みながら切り離す。

 私から出た力は案の定、湖に向かった。

 ……ケルトの手料理を食べていた術師の女の子への嫉妬は少し詰まってしまったが、これでよし。


 鼻から深くため息をついた。



 未来は定まるものではない。そんな事当たり前を教えてくれたケルトとセノオ。



 ……ごめんね。幸せをくれてありがとう。



 私は笑みを浮かべたまま意識を失った。




読んでいただきありがとうございました。

誤字脱字ありましたら申し訳ありません。


また読みに来てもらえたら嬉しいです。

評価、ブックマーク等も嬉しいです!

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