37。赤い唇の彼女
ガラタナ視点で少し前の時間軸から始まります。
「私をルナって呼んだ!? 本当にあなたガラタナなの!?どうしてそんな姿に!? なぜこんな国にいるの!?」
昨日の昼過ぎ、セノオと楽しい一時を過ごした後、5年ぶりにディアナに会った。
自警団員に食って掛かっていた様子から、思い付きで行動するのは治ってないらしい。
ディアナが起こしたトラブルを力付くで解決したことは数知れず……でも俺は彼女の奔放さが気に入っていて、前の国ではかなり仲も良かった。
「説明すると長くなるからしないけど、俺はルナが知ってるガラタナで間違いないよ。元に戻れる手筈は整ってるから心配しなくていい」
「そうなの。でも会えて良かった。急に居なくなるから心配してたのよ……あ。ちょっとお金かして!財布どこかに置き忘れちゃったみたいで」
こんなおかしな事態をあっさり受け入れ、更に金の無心……本当に心配してたのか?
話の飛び具合も変わっていない。
「その子は?」
ディアナは目だけでチラチラとセノオを見た。
「……ちょっと、説明が難しいんだけど、彼女が助けてくれたんだ。それから行動を共にしてる」
出会った時の事を思い出すと口許がゆるむ。思わず右手で口を隠した。こんな締まりのない顔、昔の仲間に見られたくはない。
「ふぅん。ガラタナ趣味が変わったの? こんな子どもに手を出すとかよっぽどなのね」
「彼女はそんなんじゃない」
そう言うとディアナは鼻で笑った。
「いいわね。ただ助けてあげただけで特別待遇なんて」
ディアナはニヤリと笑った。嫌な予感がして隣を見ると、居る筈のセノオが居なかった。
一昨日の夜、セノオが消えた瞬間の記憶が甦り、慌てて周囲を見渡すがディアナが騒いでいたお陰で野次馬が多く見つからない。
そのせいでディアナが歩き出したことに気付くのが遅れた。ディアナが向かうその先にはセノオがいた。
何であんな所に!
急いでディアナを追いかける。
「ルナ!何する気だ!」
セノオの前に立ち塞がるディアナの肩を掴み、こちらに向けた瞬間、ディアナが口を押し付けてきた。
キス……と言うにはあまりに雑。何だこれは頭突きかと本気で悩んだ時、視界の端にセノオが見えた。
男女の付き合いに関してはかなり緩い俺の国とは違い、男女で手を繋ぐのでさえ“アラアラ!マァマァ!”という目で見られるこの国。
そんな国の片田舎で育ったセノオにキス(だと思う)を見られた。
血の気がザァァァァァっと引き、ディアナを引き離した。
とりあえず2、3日は大丈夫だろう金を渡し、呆気にとられているセノオの腕をつかんで宿まで急いだ。
頭の中はセノオへどうやって謝ろうかそれで一杯だった。
何とかセノオとは仲違いせずに終えることができた。
しかも首に報酬まで頂いた。雨降って地がかなり固くなった。
部屋に戻り眠れずにいたら、ドアがノックされた。
開けると、ボーイが手紙を持ってきた。
手紙の封筒に書いてある俺の名前はこの国の文字ではない……後を付けられていたか。
指示通りロビーに行くと案の定ディアナが足を組み、壁際のソファにいた。
俺は目の前に立った。
「ディアナ、こんな時間に外出るな。危ないだろ」
「心配しなくても大丈夫よ。危なそうなところにはいかないし、この国凄く治安良いじゃない。財布だって自警団に届けられてたのよ? 信じられない。あ。さっきのお金返すわね」
摘まむように返された紙幣を受け取ると、ディアナは足を組み直した。
「ねぇ。体が戻ったら国に帰るのよね」
「──それはない」
「皆、捜してたのよ。私のことが嫌いなあのオバサンが私に聞きに来るくらい」
オーナーが……それには多少心が痛んだ。
「西の国に入ったまでは情報があったんだけど、そこからぷっつり……でも最近この国の大学に似た人が居るって聞いて、仕事の範囲を広げてワザワザ来てあげたのよ?」
俺とセノオの予想半々ってところか。
「来てくれなんて頼んでない。俺が自分の意思で国を出たとは思わないのか?」
「思わないわよ。体の付き合いが基本の私とかならまだしも、あなたがグループを捨てる筈がない」
「……あいつらは、もう俺が居なくても上手く回ってるよ」
魂として住み処にいた数ヵ月でそれは嫌というほど理解した。
「国が嫌いになったの?──それともあの子がそんなに大事?」
別のグループにいたディアナとは10歳ごろからの付き合いだが、昼に俺がニヤけたあの瞬間でセノオの事を見抜くとは腐れ縁とは恐ろしい……。
「──そうだな。彼女といると、どうしようもなく満たされる」
「締まりのない顔。随分と腑抜けの変態になったのね。相手は14、5の少女でしょう?」
その見た目少女のセノオに牽制を掛けていたのはどこのどいつだ。
「とにかく、俺はもう国に戻る気はないし、俺がこの姿になってるのは混乱を呼ぶから、国に帰っても誰にも言うなよ」
「……戻ってきてくれるなら言わないし、あの子にも何もしないわ」
「お前なぁ」
「ルナ。ルナでしょ?」
自分を指差しながら、赤い唇がニイッと広がる。
昔ならソレに魅力を感じていたが……好きな人とやらが出来るとこうも変わるものなのか。
セリナさんだけを愛するケルトさんの気持ちが良くわかる。
「ディアナ。彼女に何かしたら無事ではいられないと思え」
読んでいただきありがとうございました。
誤字脱字ありましたら申し訳ありません。
次回はセノオとディアナの話になるかと思います。
また読みに来ていただけると嬉しいです(*^^*)
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