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ホントのカラダを探しています  作者: keitas
トルネオ王国編
30/101

28。そんなときは慌てず騒がず

 ガラタナの大立ち回り騒動(セノオ誘拐未遂事件)の後、自警団の人から話を聞きたいと言われ、私たちは自警団の詰所に移動した。


 自警団という厳つい名前の詰所には見えない、白い壁が見えるようにレンガがあしらわれた可愛らしい建物。

 入るとすぐ1メートルほどの小さなカウンターがあり、脇には庭に咲いているような普通の花がとてもセンス良く飾られていた。


 私たちはカウンター奥の衝立(ついたて)で仕切られた半個室に通された。

 中には簡単な応接セットがあり、テーブルにはカウンターの花と似た雰囲気で4輪ほどの花が生けてあり、テーブルクロスもとても可愛い。


「ガラタナさんのお陰でとてもスムーズに尋問が行えましたよ」

「それは良かったです」


 可愛い雰囲気に似合わぬ、自警団!!という感じの厳ついおじさんと囲むテーブルには、王都で人気の分厚いホットサンドが人数分並ぶ。


 騒動が終わったのは、まだ辛うじて夕食時だったけど、一通りの聞き取りが終わったのは、つい先程。居酒屋しかやっていないような時間だった。

 またお腹がぐぅとなり赤面していたら、優しそうな女性団員が不憫がって居酒屋から買ってきてくれた物だ。

 カプッと囓ると甘辛く味付けされたチキンとキャベツと半熟卵、トローッとチーズが絶妙なバランスで口の中に広がる。

 これはヤバイ。

 新鮮な魚も惜しかったけど、これはヤバイ!

 思わず、衝立の横に立っている買ってきてくれた女性をみる。目が合うと二人で頷いた。

 村では食べられない味に感動し、食べ進めていると、お父さんと厳ついおじさんがこちらをみてニコニコしており、ガラタナはそっぽを向いて口を抑えていた。耳が赤い。確実に笑っている。


 うぅ!!!!! 恥ずかしいけど! 美味しいよ! 何でこんな美味しいのに顔に出ないんだこの人たち!



「それでですね」

 厳ついおじさんが微笑んだまま話を続ける。

「あの男達の親玉は……名前は控えさせて貰いますが、貴族でして、私ら自警団では対応できんので、騎士団扱いの事件となりました。無いとは思うんですが、もしかしたら騎士団の方から話が聞きたいと有るかもしれんのです。もう犯行グループも全て自白しているから解決まで時間はかからないと思うんですが、しばらく村へは帰らずに王都に滞在して貰えますかね」

「あっはい!」

「では、食べ終わったら帰ってもらって大丈夫ですよ」


 自警団という安全な場所で安心してホットサンドを堪能し、食後にコーヒーまで出してもらい、私達は詰所を後にした。


 一緒に宿に泊まる!と駄々をこねるお父さんを(なだ)め、家に返し、ガラタナと2人で宿へ向かい歩く。


 騒動後から、ガラタナは私の方をまともに見てくれなくなった。

 目が合うと気まずそうに逸らされる。

 20歳にもなって迷子になり誘拐されるとか……呆れられても文句は言えないけれど、結構ショックだ。


 トボトボと歩く速度も遅くなるけど、置いていかれる事もなく、隣にいてくれる。


 また迷子になったら探すの面倒だしね……自分でもフォローできない事態に、更に気持ちは(すさ)む。



 そういえば……と、興奮状態から脱した頭は漸くちゃんと働き始めた。

 さっきは自警団の人の前だったから言えなかったんだった。

「あ……のね、ガラタナ。私、男から逃げるときに白い球体が助けてくれたの」

「────っ」


 漸く目が合った。


「窓から飛び降りるまでは一緒に居たんだけど、それから姿が見えなくて……まだあそこにいるのかも」

「何か話した?」

「うん。彼女はあの石盤を作った一族の人だった」


 それから、宿に着くまで彼女から聞いたこと話した。

 かなり迷ったけども……ガラタナを体から出す手立てが彼女にも浮かばなかったことも。全部。


「──お手上げ……か」


 そう、呟く声が聞こえた。

 ガラタナの方を向くとまた視線が外されていた。

 ギュッと心臓が締め付けられる。イヤだ。絶対にイヤだ。


 両手でガラタナの手を握ると、驚いたようにこちらを見た。


 しばらく間があって、ガラタナの手からも力が伝わってきた。それが嬉しくて、更に力を込めた。

 そうすると更に──


「痛い痛い痛い!!! ちょっと!!!!」

「ぷっははっ」

 あまりの痛さに勢いよく手を離した。そんな私を見てガラタナは大笑いしている。



「……明日、もう一度あの裏路地に行ってみよう。俺も会えるなら話しをしてみたい」

「! ──うん!!」


 もう気まずそうに目線が外されることは無かった。


 諦めない。認めない。絶対に。

 絶対に策はある筈だ。




────────




 宿に着き、チェックインを済ませる。

 今日は沢山走ったし疲れていたので、すぐお風呂に向かう。

 ガラタナは部屋でシャワーか、人がいない深夜に済ますらしく、お風呂から上がると、受付カウンター脇のベンチで待っていてくれた。


ふと、昨日のことが思い出され、自分の顔を叩きたくなる衝動にかられるけど、ガラタナは覚えてないし、変な人だと思われるからグッと我慢。

 今日は髪は乾かしてあるし!ガラタナも酔ってない!大丈夫!


「じゃあお休みなさい」

「お休み」

 隣同士の部屋の前で挨拶をして自分の部屋に入ると、すぐ脇に扉があり、ガラタナの部屋と繋がっている仕様になっていた。


普通の部屋でも良かったのだけど、あんなことがあってガラタナは微妙に過保護になっているのか、廊下に出ずとも部屋に行ける、続き部屋への変更を申し出た。


 家でも壁の向こうはガラタナの部屋なんだけど、部屋から直の扉で繋がってると思うと少しドキドキする。


 ……昨日とは比べ物にはならない程の健全で小さなドキドキだけれども。


 入り口にあるオイルランプを点けて、ベッドのサイドテーブルに置いた。

 眠くは無かった筈なんだけど、ベッドに入ると途端に睡魔に襲われた。





 コンコンコン─────音が聞こえた……

 薄目を開けると夜が明けていたようでカーテンが明るい。

 あ……そうか。王都の宿だ……と寝ぼけ眼を擦り、ベッドから出てストールを肩に掛け、続き扉に向かう。


「セノオ! 起きてる!?」

「ちょっとまってね」

 続き扉の向こうから慌てているガラタナの声がしたので、扉を開けると、部屋のシャワーを浴びるところだったのか、キャミソール姿のガラタナが居た。

「どうしたのそんな格好──」


「セノオ服脱いで!」



──ちょっと言っていることが理解できず、真顔でパタン。と扉を閉めた。


読んでいただきありがとうございました。

誤字脱字ありましたら申し訳ありません。


次は白い球体に会いに行く予定です。違ったらすみません。


また読みに来ていただけたら嬉しいです(*^^*)


ブックマーク、感想ありがとうございました!

とても嬉しかったです(T△T)



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