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ホントのカラダを探しています  作者: keitas
トルネオ王国編
18/101

17。お話にならない

前半セノオ視点

後半ガラタナ視点です。

 カナエ婆さんのお陰で気持ちは少し上向きになれた。

 また決心の鈍らないうちに!と、急いで着替え、髪を軽く拭き、使ったタオルを『使用済みタオル』と書いてある箱に入れて廊下に出る。


「セノオ! こっちこっち!」

「──っ!」

 受付を過ぎ、階段をのぼろうとしたとき、テンション高めなガラタナの声がした。

 階段横の談話スペースのソファーに、ガラタナと食堂で一緒だった学者さん2人が向かい合わせに座っていた。


 食堂か部屋に居るのだろうと思っていたから、予想外すぎて心臓がバクバクしてる。

 いざ目の前にすると決心が……にぶる……けど頑張れ私!


 傍に近寄ると3人とも少し顔が赤い。

「あれ? お酒入ってる?」

「うん。いつもくらい。ちょっとだけだよ」

「「ちょっと!? かなり飲んでたよ!!」」

 学者さんは息ピッタリだ。


 ガラタナがお酒を飲んでるのは見たことがないけど……“いつも”とは、前の体の時だろうか。


「それでね。15分くらい前かな? 食堂から出たら、お風呂から出てきたお婆さんに会って「連れは風呂に居るよ」って教えてくれたから、一緒に戻ろうと思って待ってたんだよ」


 立ち上がって、そう話すガラタナはやっぱり結構酒臭い。

 その手には、受付で借りたのだろう未使用のバスタオルとフェイスタオルがあった。


「サルジさん、リアドさん。お話出来てとても楽しかったです。お付き合い頂いてありがとうございました。お休みなさい」

「こちらこそ楽しかったよ。俺たちはもう少しここで話していくよ」

「ガラタナさん、また是非話を聞かせて下さい!セノオさんもお休みなさい」

「お休みなさい。えーと……サルジさん、リアドさん。」


 そう言って学者さん2人は階段をのぼって行く私達が見えなくなるまで手を振ってくれた。

 二人の顔は心なしかイキイキしていた。

 何の話をしたんだろう……。




「お風呂どうだった?」

 そう言いながらドアを開け、ジェスチャーで『どうぞ』と、しているのでお言葉に甘える。


「小さいって聞いたから覚悟していったけど、1人で入るには広くてね。

 後からカナエ婆さんが入ってきたから丁度良かったよ……あ。でもこの宿、今は男性の宿泊客多いみたいだし、男湯もあの広さなら、時間が被ったら確かに聞いた通り狭いかも」


 ドアのところのランプに火を点けると少しだけ部屋が明るくなり、パタンとドアが閉まる音がした。

 私はそのままベッドのサイドテーブルまで行き、そこのランプにも火を点ける。

「カナエ婆さんが言っていた感じだと、もう女の人はお風呂入り終わったみたいなんだけど、ガラタナはお酒飲んじゃったし入んない方が良いかもね……ガラタナ?」


 振り返ると頭にフワッとタオルが掛かり、ゴシゴシとガラタナが拭いてくる。

「……ちゃんと拭いてから来なよ」

「あ。ごめん。でも風邪とか随分ひいてないし」


「濡れ髪。他の奴に見せたくない」


どっ と心臓が激しく動いた。


「それに家じゃないんだから、お風呂に1人で行くなんて危ない。この宿の宿泊客の殆どが男だよ? 風呂上がりの姿なんて俺意外に見せないで」


 心臓の音がさらに大きくなった。

 ガラタナは一体どうしたんだろう。


 頭を拭く力がフッと緩み、手はタオルの両端へと降りてきた。

 近い距離で目が合う。


 少し大人なだけの私と同じ顔な筈なのに……中の人が変わるだけでこんなに別人に見えるのかとジッと見つめると


 ガラタナの乾いた唇を舌が舐めるのがみえた。

 色気がヤバイ。

 標的を見据えた様な細い目……目?


────目が……据わっている。


 頭に一つの言葉が浮かんだ。

 酔っぱらい と。


「風呂が小さいって誰に聞いた? 俺のこと避けて誰に会ってた?」


 しかも最悪。絡み酒だ。



「誰って……部屋にいたら廊下で話し声が聞こえて」


 どうする。


話す

戦う

逃げる←


 一歩下がろうとしたら頭のタオルがグッと引かれ、逆にガラタナに抱き寄せられた。タオルが頭から取られフワッと落ちた瞬間、ガラタナが右の首元に顔を埋めてくる。

 首にチクッとした痛みが走る。

 驚いた瞬間、ガクンと体が崩れベットに押し倒された。


「逃がさない」

 そう……耳の横で聞いた。全身がカァッと熱くなった。

 体に力をいれるが動かない。


 力は似たようなモノなのに何で!?

 ちょっとまって!ちょっとまって!ちょっとまって!


「そっそういうのは!元に戻って結婚してから!!!シラフの時にお願いします!!!!!」


 そうこの国の一般的な貞操観念を叫ぶと部屋はシン……と静まった。


 耳元からスースーと規則的な音が聞こえた。

 寝ている。



 寝てやがる!!!このやろう!!!!


 ガラタナの力はもう入っていない筈なのに、さっきと変わらず体はガラタナに縫い付けられた様に動けない。

「どうなってんのコレ……」


 しかも、混乱していたとはいえ、元に戻って結婚してからとか……

 自分の発言を思い出してまた顔が熱くなる。

 嫌われてしまうかもしれないという考えでいたのに、ガラタナのせいだ。


 まるで私のことが好きなような……いや。ガラタナの女たらしな言動は出会って2日目から既にあった。しかも今は酔っぱらいだ。

 丘の上を走り回る牧羊犬の方がまだ信用できる。


 ……駄犬に噛まれたと思って今回のことは忘れよう。

 この私の上に乗ってるのも大型犬ということで。


 そう思って目を瞑るとビックリするほどの睡魔が襲ってきた。

 そういえば、今日はジークさんが髭反りに来たあたりから、すごく忙しくて────



 私の記憶はそこで途絶えた。






─────────────




 俺は白い霧の中にいた。

 目を凝らすと人影があるのがわかる。

 近寄ると、この一週間ほど毎日見ている自分がいた。

「夢……か」


 目の前の自分にふと違和感を覚えた。

 肌の色は白く、髪は細いアッシュブロンド。瞳は茶色。白いドレスを着ていた。

「セノオ……?」

 大人っぽいセノオは優しく微笑んだ。

 鼓動が速まる。


 この姿なら確かに二十歳と言ってもおかしくはない。

 俺の姿は、少し長く延びたセノオの影だからセノオより背が高く、少し大人っぽいのか……とも思っていたが……

「今の俺は、セノオが年齢通りに育った姿? ……あ」


 白いドレスを着たセノオはフワッと広がった裾を揺らし、俺に背中を向けて歩いて行く。

 ドレスは背中があいていて、とても綺麗だ。


 俺も一緒に行こうと思ったが足が動かない。

「セノオ!」


 振り向いてもくれない。


 ふと、あの白いドレスに見覚えがあることに気付いた。

 カフェで働いていたときの同僚が結婚式の時に着ていたものだ。


 ブワッと全身に鳥肌がたった。

「えっ!ちょっとまって!セノオ!!」


 背中を向けたセノオの横に人影が浮いてきて、セノオがそいつの腕をとった。


 背が高い……誰だ?


「セノオ!!」

 夢だとはわかっている。でもこんな姿は見たくない。

「ガラタナ」

 やっと声が届いたのかこちらを振り向いてくれた。

「セノオ!」



「ガラタナ、私、ラビ君と結婚するね」






「ラビかよ!!!!!」

 グッと腕に力をいれて勢いよく体を起こす。

 全くの予想外だった……突っ込みを入れながら目覚めたのは初めてだった。

 あたりを見渡すとまだ暗い。ランプの光が揺れていた。


────頭が痛い。いつ寝たんだろう。完全に飲みすぎた。

うつ伏せに寝ていたから苦しくてあんな夢見た……


 眼球が落ちる程目が開くのがわかった。


 うつ伏せから上体を起こしただけの腕の中に眠るセノオが居る。

「うわっ!」

 驚き、体を反らしたらベッドから落ちた。


 服は……お互い着てる。まずそれに安堵した。

 セノオに新しい扉を開けさせるつもりは毛頭無い!

 俺自身だって扉を開けるつもりは無い!

 女の方が良かったとか思われたら立ち直れない!!


 眠るセノオを黙視する。

 特に何かやらかした様な形跡は……右首筋にある紫は見なかったことにする。


 というか、どうしてこうなった??

 俺は床に自然と正座して、眠るセノオを前に、(ゆう)べのことを考えた。



 学者の……名前何だっけな……あいつらと話していたらセノオの様子がおかしいのに気付いて部屋に戻ろうとしたら、食堂で話してろと言われて。

 セノオに拒否されたことなんて箒で叩かれて以来無かったから結構ショックで、しょんぼりしてる俺を見て学者たちが酒を奢ってくれた。


 エレナさんのバーでは、セノオの体は酒があまり強くないってわかってたからあんまり飲まなかったけど……昨日はショックもあったし確か、ウィスキーロックで2、3杯くらい飲んだところで、つい元の体の頃を思い出して……更に飲んだ気がする。


 記憶は飛び飛びだが、確実にガラタナ(男)として飲んでいた。

 結構な下ネタ具合だった気がする。

 頭が痛い。


 食堂を出てからは映像では頭に残っていない。


 風呂から出てきたカナエ婆さん。

 濡れ髪のセノオ。

 ランプの灯りが妙にエロく……


 ダメだ。その先全く思い出せない。



 重し(おれ)が居なくなり、気持ち良さそうにスヤスヤ眠るセノオを、掛布団を捲ってちゃんと寝かせる。



 朝イチで睨まれたら心折れる。確実に折れる。でも避けられるよりはましだ。

 何で昨日様子がおかしかったのか……話してくれるだろうか。


 真夜中よりは微かに朝に近づいた空を見てフゥとため息をついた。



読んでいただきありがとうございました。

誤字脱字ありましたら申し訳ありません。


前回の後書きで「次回は話し合い」的なことを書きましたが、話し合いにはなりませんでした。

自由すぎてすみません。


次回は…話し合えるといいのですが。とりあえず王都に行きます。




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