14。ガラタナの不思議
長くなったので2つに割りました。
日が落ちる前に乗り合い馬車が来た。
車輪つきの長方形の箱に屋根がつき、体が大きくて怖い顔の一頭の馬が引くだけの簡単な馬車だ。
町から村へ行く乗り合いなら、この時間でも客は結構いるが、村から町へ行く人は滅多にいない。
そんな馬車の中でガラタナは私の右隣にピッタリくっついている。
「ガラタナ……近すぎない??」
「狭い?」
「狭くは、ないけど」
誰もいない10人ほどが乗れる馬車に、そんなにくっついてのる必要は無い。第一に心臓に悪い。触れている場所に全神経が行くのを必死で止めている此方の身にもなって欲しい。
「仲良いねぇお嬢ちゃん達、町の娘かい?」
御者のおじさんが機嫌の良い声で前を向きながら話しかけてくる。
「いえ。村の理髪店で働いています。機会があれば是非。お待ちしていますね」
接客のキレイな笑顔でガラタナが対応する。
「──抜け目ねぇなお嬢ちゃん!気に入った!商売人はそうじゃなきゃいけねぇ!」
一瞬驚いたような間があり、ガハハハと機嫌良くおじさんは笑う。
夜の蝶のような接客スキルを披露するガラタナに多少恐怖を感じながら見る。以前はカフェで働いていたらしいけど……一体どんなカフェにいたんだろう。
「しかし、こんな時間に女二人旅とは町で何かあんのかい?」
「町の外れにある遺跡で知り合いが調査をして、会いに行くところなんです」
「ほ~! そりゃあ凄いな! おっちゃんはもう60年近く生きてるが学者様なんて王都・町のルート担当の時乗せたくらいだ! ……ん? 遺跡調査は夕刻の鐘までって聞いたような気がするんだが大丈夫かい? お嬢ちゃん達」
御者のおじさんは心配そうにこちらをチラッと向いた。
「……それは、困りましたね。突然行って驚かせようと思ったのですが…」
声だけではなく顔も困った顔をするガラタナ。まぁ困ったのは本当なのだが、「驚かせよう」とか、よくもまぁ咄嗟に嘘が出てくることに感心する。
それにしても本当に困った。もうあと数分で町につく。
今から家に戻り、また明日馬車に乗って……なんて二度手間を防ぐためにもどこかに泊まる必要がある。
「あ! じゃあ今日はトールの家に泊めてもら──」
「却下」
言い切る前に否定された。
「まぁ、確かに突然はご迷惑だけど、おじさんからも、おばさんからも前から泊まりにおいでって言われてて……」
「そりゃあ、アレだけバレバレなら親としては協力してやろうって気にも」
「へ?」
「───とにかくトールの家はダメ!トールって口にするのも気にくわないのに……」
「は?」
いつの間にガラタナはトールが嫌いになったんだろう。
ラビ君と遺跡に行っている間に何が。
他に友人の家もあるけど、一番歓迎してくれるのがトールの家なのは確かだ。
「宿に泊まろう」
「あの、でもねガラタナ。今日宿に泊まるとは考えていなかったからお金が……」
「お金ならあるから気にしないで」
え? 何で持ってるの??
まだガラタナが働いた分のお給金は渡してない。
まさか以前働いていたお金? あの白い球体には収納機能が?
イヤイヤイヤイヤ!
そんなはずないし! 持っていたとしてもガラタナの育った国とは通貨が違う!
一人で百面相していると、馬の嘶く声が聞こえた。
町に到着してしまった。少し前に日は沈み、もう少し到着が遅ければ真っ暗になっていただろう。
ガラタナは馬車からヒョイっと降りて手を貸してくれた。
「ありがとうおじさん」
「いや!こっちもこんなキレイなお嬢ちゃん方と一緒で楽しかったよ!あ。そうだ。宿に泊まるなら広場手前のカナエ婆さんの宿にするといい。日帰りで帰る学者様もいるが、帰らない学者様はそこに泊まっているらしい。運が良ければ会えるかもしれん」
「ありがとうおじさん!助かりました」そう言って御者のおじさんと別れ、宿に向かった。
読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字ありましたら申し訳ありません。
今日は二話投稿です。
次も読んでいただければ嬉しいです(*^^*)
ガラタナのお金やトールとの話については後程書いていければいいなと思います。




