悪魔界での事件
結構間があいてすみません。
なかなかいいのが思い付かなくて、次からはなるべく早くします。
魔魂合成→転移
グレイロードの仲間が仕掛けた魔方陣を王宮中に探しまわっているとき、とある漆黒の世界で………
「ただいま戻りました。」
「あぁ~おかえりぃ~。意外と早かったわねぇ。」
「ええ、ただいまです。ベルフェゴール。」
この少し間の抜けたような話し方の女の名はベルフェゴール。我らが王の忠実な僕であり、大悪魔序列7位怠惰のベルフェゴールだ。
「全くあなたは相も変わらず間が抜けていますね。こっちまで気が抜けてしまいますよ。」
「えぇ~だってこれが私だもん。しょうがないでしょ。あなたも知っているでしょう?私達悪魔は自分を見失ったら自我を失うってことは。」
「そうですね。重々承知していますとも。自我を失ったせいで討伐対象になってしまい、我ら大悪魔よりも上位の存在であるソロモン72柱達によって殺されたかつての仲間を知っていますからね。」
「はっ、俺からしちゃあ自我を失ってくれた方が嬉しいがな。その方がいいに決まっている。なぜなら殺しが出来るからな。」
「あなた様は!ソロモン72柱、25柱目グラシャラボラス様!ですがいくらあなたでも意図的に自分以外の悪魔の自我を崩壊させることはご法度ですよ。そんなことをすればあなた方ソロモン72柱のトップであり、何よりも秩序を重んじるバアル様に粛清されますよ。」
「チッ、んなことは分かってるよ。ったくよぉ、あいつがトップになってから面白くなくなったぜ。昔の方が楽しかったぜ。」
「昔というと、サタン様がトップだった頃ですか。確かにあの人は今は我々大悪魔の序列1位におさまっていますが、昔は、特にまだ若かりし頃は"暴君"という名が広まっていましたからね。」
「ああ、あの頃のあいつは良かった。それはもう今のバアルなんかとは比べもんにならねぇほどに。だが、あいつは年老いた。そのせいで腑抜けちまった。また昔のように暴れてぇぜ。」
「だから駄目ですって。」
「わ~ってるよ。しつけぇな。今ここでぶっ殺してもいいんだぞ?アァ?」
「そんなことを~したらぁ~私がサタン様に言っちゃいますよぉ~。確かにあの方は年老いたけどぉ、それでもまだあなた方ソロモン達と同格ですよねぇ。」
「チッ、生意気な。はぁ~~、興が削がれた。もうここに用はねぇ。じゃあな。」
そう言うとグラシャラボラスはその場から掻き消えた。
「なるほど、今のがソロモンの方々にしかつかえないとされている空間転移ですか………。ありがとう、助かりましたよベルフェゴール。」
「いやぁそんなことないわよ。あの時止めなければグラシャラボラス様が何をするか分かりませんでしたから。」
「確かにな、さすが殺戮を趣味としているだけのことはあるな。とても危険です。どちらにせよこれはサタン様に報告した方が良いですね。ベルフェゴール」
「……………………」
「はぁ、面倒なことを察して逃げましたか。全くこういうところだけ怠惰とは思えない俊敏さですね。そう言うことならしょうがない。私が行きますか。」
~数時間後~
コンコン
「サタン様、グレイロードです。報告があり、参りました。」
「うむ、入れ。」
「はい、では失礼します。」
「うむ、そこに座れ。………それで、何の用だ。」
「はい、グラシャラボラス様のことで。」
「はぁ、またあいつか。あいつはワシがまだソロモンで現役だった頃も暴れまわっておったからのぅ。まぁ、ワシも人のことは言えんがのぅ。ガッハッハ。」
「ハハハ……それで、報告なのですが。」
「うむ、またあやつが何かやらかしたのか?」
「いえ、今は何も。ただ、少し危険かと。」
「何かあったか?」
「はい、実は最近バアル様がソロモンのトップになってからというものめっきり暴れられなくなったと。そして、ここが問題です。暴れる口実に悪魔の自我を崩壊させ、討伐してやるなどと言っていました。」
「ふむ、あやつがそんなことを。確かにあやつならやりかねんな。ここは一つストレスを発散させねばなるまいな。………よし、その件はワシが何か策を考えておこう。」
「ありがとうございます。では報告も終わりましたのでそろそろ退室させて頂きます。」
「そうか、ご苦労だったな。また何かあったら頼むぞ。」
「分かりました。では、失礼します。」
ガチャン
「はぁ、実に緊張しましたね。年老いて、ソロモンを退いたとはいえ、やはりまだまだ現役ですね。他の悪魔とは迫力が段違いだ。」
「そりゃぁそうでしょ~。年老いてもまだ悪魔最強なんだもの。」
「うぉっ!べ、ベルフェゴール!?あなたいつの間に?」
「ついさっきよぉ。あなたがサタン様の部屋から出てくるのが見えたからぁ。」
「そうですか。(やはり、とても怠惰を司る悪魔とは思えない動きですね。)」
「あら?グレイロード。あなたこんなとこにいたのね。」
「(そ、その声はまさか……)げっ!あ、姉上。」
「ちょっと?実の姉にげっ!とは何よげっ!とは。」
そう言うと姉の周りが冷たい冷気に覆われた。姉の名はヘルムーン。絶対零度のヘルムーン。大悪魔序列8位だ。姉の絶対零度の前では私の炎熱などあってないようなものだ。
「ちょっと?グレイロード、聞いてる?」
「はい、もちろん。」
「じゃあ、今私が何を言ったか言ってみて。」
「うっ!す、すみません。忘れてしまいました。」
「そんなにすぐに忘れるわけないでしょう?早く白状したほうが身のためよ。」
「うっ!す、すみません。聞いてませんでした。」
「よし、じゃあ今から修行よ。」
「えっ!何で!?白状したのに。」
「白状しても聞いてなかったのは変わらないでしょ。それに白状したら免除なんて言わなかったわよ。」
「そんな………」
「はいはい、文句は修行が終わってからにしてね。行くわよ。」
「ぎゃああああぁぁぁぁ………」
叫び声がこだまし、グレイロードはヘルムーンに引きずられて行った。
「ふふ、ヘルムーンちゃんったらぁ、何が私が何を言ったか、よ、何も言ってないじゃない。それに騙されるグレイロードもグレイロードだけどねぇ。」
グレイロードの叫び声が響くより、数十分前、サタンの部屋では
「ふぅ、行ったか。それにしてもグラシャラボラスのやつめ相変わらずじゃのう。おぬしもそう思うじゃろう?」
「おや、バレていましたか。さすがは元我々ソロモンのトップですね。衰えたと思っていましたが。私もまだまだということですかね。」
「いやいやそんなことはないぞ。現にグレイロードには気付かれなかったじゃろう。」
「ふん!あんなソロモンにすら入れん若造に気付かれなかったくらいで何も嬉しくないわ。」
「ふっ、さすがはソロモン72柱の55柱目時魔術のオロバスだな。実に傲慢だ。それに時空を操る能力も健在のようだな。」
「当たり前だ。この力は私の象徴であり、私そのものでもある。それにこの力を失うことは自分を見失うことと同義。そうなればお前達に討伐されるだろうが。」
「そうじゃのう。じゃが、もしそうなればちょうどストレスが溜まっておる、グラシャラボラスにでも殺ってもらうとするかの。」
「それだけは勘弁してもらいたい。あいつに殺されるとなれば、自我が復活するくらいの衝撃を受けるだろうしな。何度あいつに殺された者に同情したことか。」
「じゃあ、そろそろ帰ってもらえるかの?ワシもそろそろグラシャラボラスへの対応の仕方を考えなければなるまい。」
「分かった。まだ話したいとは思うがこれも仕方ない。ではまた。」
そう言うと、オロバスの姿は掻き消えた。
「全く、今日は来客が多かったのぅ。疲れたわい。ワシも年をとったものじゃ。………ん?」
ギャアアアアァァァァ
「このかすかに聞こえる声はグレイロードか?ふむふむなるほど、あっ!あれか。またヘルムーンにしごかれてるのか。お気の毒にのぅ。………さて、それじゃあ書類の確認でもするかの。パラパラ………む?これは!何故じゃ?何故転移の魔方陣が無い?誰かが持ち出したか?……これは早急に調べねば。」
その頃、人間界のとある王宮では、ある一つの魔方陣のせいで一悶着起こっていた。