九十六話目 決戦②
5月16日の更新です。
本日も宜しくお願い致します。
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《side:宇美彦》
…………うわっ、何だあれ?恐っ!!
建物の中だと言うのに、ヤバイ音を時折たてながら裕翔とカベルネが激しい戦闘を繰り広げている。うん。これはまぁいつも通りだから良い。
で、その反対側で、カベルネの腰巾着と宙太がさっきから静かに睨み合っているんだけど、両者とも笑顔なのが矢鱈と不気味で恐過ぎる。
ニコニコしているのに、目が笑ってないって言うか、見えない火花がこう、バチバチ飛び交っている様に見えるんだ。な?恐いだろ?
……え?お前は呑気にあちこち見ていて良いのかって?
いや~。俺んとこに来たのが雑魚ばっかりでよ。何なら今も俺の尻の下に3匹程積み上がってるくらいだぜ?亜栖実や誠治の所も似たようなもんみたいだし、加勢もいらないだろうな。
ってな訳で、ある意味一番心配な宙太の方を見ていたんだけど、どうやらあっちも加勢なんかいらないみたいだな。つーか俺、あそこに入る勇気ねーわ。
んじゃああっちの方には行く気がしねーし、消去法になっちまって悪いけど、俺は裕翔の方に加勢しに行きますかね?
ま、あの様子じゃあ裕翔の方も加勢なんざいらないだろうけどよ。
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《side:裕翔》
「はぁ、はぁ、はぁ」
「随分と息があがっているね?大丈夫かい?」
「五月蝿い!!貴様などに心配される筋合いなど無いわ!!」
やはり左足の傷が思わしくないらしい。
カベルネの動きに、いつものキレと重みはまるで無く、足下もフラフラと定まっていない様に見える。
でも、そのいつもの動きと言うのが、何人もの命を犠牲にしたものだったと知った今、寧ろ治療する隙を与えなかったのは我ながらとても誇らしい。この事だけは、先に攻撃を仕掛けてくれていた誰かに感謝だね。
「フンッ。貴様ごときと戦うのには丁度良いハンデとなったのではないか?ふぅ、はぁ…。ククク、脆いヒューマンなど、俺様の手にかか、れば、はぁ、片手で一捻りよ」
「フフフ、喋るだけで息があがっているよ?本当はとても苦しいんじゃないかい?」
「貴様ぁああああああ!!俺様を愚弄するかぁああ!!!」
短気なカベルネは、こんな簡単な挑発でもすぐにノッてくれるから助かるね?
さぁ。今日こそこの魔族の将を倒すぞ!!
と、気合いを入れ直した瞬間だった。
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《side:シエロ》
「はっ!やぁ!」
「うわっ?おっと、ほいっ」
腰巾着は【茨】使いだった。どうやら床を腐らせたのも腰巾着の毒魔法だったみたい。
で、何で【毒使い】とかじゃなくて【茨使い】なのかと言うと、奴は手から薔薇の蔓の部分だけを生やして握り、それを鞭の様にしならせて僕を攻撃してきたんだよ。
しかも、女王様が持っている様なイメージのある極太の鞭に、棘がタップリ生えている凶悪なヤツね?
勿論そんなもん当たったら痛いでしょ?だから、全部避けてやったんだ。そしたら、
「ぐぬぬぬぬぬぬ。小癪なぁーー!!」
何て顔を真っ赤にして、地団駄踏み踏み怒りだした。
「いやいやいや、良い大人が地団駄踏んで怒りだすって、どういう事だよ」
あんまりその光景が格好悪すぎたので、気がついたら突っ込んでたんだけど、
「キーーーー!!もう許しませんよ!!!」
とか言いながら、腰巾着もといガルネクは、怪しい色した液体が入った、蓋付きの試験管を取り出した。
「ん?何だそれ?」
「貴方に答える義理は御座いません!さようなら、さっさと死んで下さい!!」
「えっ!?あっ、止め…」
ちょっと止めるのが遅かった。
《ゴッ、パリーン》
次の瞬間には、ガルネクの手から、空の試験管がスルリと落ちる。そして、そのまま細かく砕けた試験管だったものは、地面に吸い込まれていった。
「ぐぅおぉおおおお!!」
中身を飲み干したガルネクの体がガクガクと震えだし、胸や身体が痛むのか、心臓の辺りを押さえながら悲痛な叫び声をあげ始める。
ガルネクの余りの苦しみ様に、側に駆け寄ろうかと思った時だった。僕の目の前で、見る見る間にガルネクの体が、自身の茨で覆われていく。
一見、某ポケットなモンスターに出てくる蔦植物系のモンスターにも見える程茨に覆われたガルネクの姿は、ウニュウニュ動く茨の感じが大層気持ちが悪く、蔦植物系のモンスターには無いグロさがあった。
茨がまた赤黒い系の緑色だから、余計にグロく見えたのかもしれない。
うわ~。うわ~。これ、マジでどうしよう?
ウジャウジャと蠢くガルネクだった者の姿を見ながら、僕は少し途方に暮れた。
遂に腰巾着は化け物になってしまいました。
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
さて、明日の更新なのですが、申し訳ありません、またお休みさせて頂きます。m(__)m
本当に筆が遅くて申し訳ないのですが、またお読み頂ければ嬉しい限りで御座います。
さて、次回の更新ですが、18日の18時頃を予定しております。また宜しくお願い致します。