九十三話目 突入
5月13日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
2019年4月12日 誤字修正致しました
前方、僕達が潜む4~5メートル先の岩影に隠れた裕翔さんから、合図が送られてきた。
何々?
《ゼンポウ、テキエイ、ナシ、スコシ、ススム》
前方敵影無し。少し進む、か…。
《了解》
僕の前にいる亜栖実さんが、裕翔さんへハンドサインを送り返して、了解した旨を伝えている。
何でハンドサインかと言えば、下手に通信機何かを使うと魔力の流れで相手方にバレる危険性があるから。案外アナログの方法の方がバレにくいものなんだよね。
さて、まだ辺りは薄暗いものの、大分東の空が明るくなってきていた。少し離れた場所のハンドサインが見えるくらいだから、もう夜明けの時間も近いのだろう。
《イクヨ!》
《了解》
僕達は、なるべく音をたてないようにしながら、岩陰から飛び出した。
ーーーーーー
ーーーー
《バガンッ!ドガガガガガガガガガ》
《ズガーン!》
けたたましいばかりの爆音と煙幕が辺りを覆い尽くしている。
研究所に忍び込んですぐに、何処かから攻撃されたと思ったらこの有り様だったんだ。
僕らの計画が何処からか漏れていたのか?
始めはそう思った僕達だったけど、すぐにそれは違うと分かった。何故なら、魔族側の連中も既に大多数が傷だらけだったから。
有り得ないその姿に、僕達は大分混乱した。
混乱したものの、ただボサッとしていて殺される訳にはいかないと、必死に応戦して今に至る。
お蔭で何とか今のところ応戦出来ているけど、もう数十分くらい拮抗状態にあるので、段々辛くなってきた。だから僕はこの状況を動かす事にしたーー。
「誠治、敵の状況は?」
「前方、敵数6!いずれも土属性使いの魔法使いの様子……あっ!何故か今、敵の魔法使い3人が腕を抑えて蹲りました!」
岩陰から覗いていた月島さんから情報がもたらされる。
彼は戦闘能力は低いものの、防御力と観察能力がずば抜けて高い為、暫し前線ではこうして情報収集役として動く事が多い。
で、月島さんと同じく後衛の僕は何をしていたかと言うと…。
「裕翔さん、実里が敵の魔法をジャミングして暴発させる事に成功しました。続けて風華が風で攪乱してくれています」
精霊達に頼んで、彼方此方の戦場の攪乱をお願いしていた。それぞれ離れた所に居る4人の精霊達は、僕を中継役にして、上手く戦場を引っ掻き回してくれているんだ。
どうやら攪乱には葵君も協力してくれている様で、時折僕以外の誰かと話している声が聞こえてくる。時々風華が汚い言葉で罵る声も聞こえてくるから、また何か葵君がやらかしているらしい。
裕翔さんにバレると怒られるって分かっているからか、隣に居る葵君の表情は平常心そのものだ。……全くよくやるよなぁ。裕翔さんにチクってやろうかしら?
「そうか、実里様と風華様のお蔭か…。ありがとうシエロ君!よしっ!この好機を逃す手はないね!?前進するよ!!」
「「「「「了解!」」」」」
僕達は隠れていた柱の影から飛び出すと、
「アイスクラッシュ!」
「ウィンドカッター!」
「《光操作:目眩まし》」
「ぐわぁっ!?」
「ぎゃっ!」
「ぎぃっっ!?」
裕翔さんの放った氷を亜栖実さんが砕き、僕が目を眩ませて避けられない様にした上でそれをぶつける。と言う、少し卑怯臭い攻撃を与えながら先を急いだ。
目指すは地下。大本の研究施設がある場所だ。
やっと魔族との戦闘開始です。
本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました
明日も本日と同じ18時頃に更新させて頂きますので、また宜しくお願い致します。