八十九話目 2度目の作戦会議④
5月8日の更新です。
本日も宜しくお願い致します。
「ってな訳だから、決行日は変わらず2日後の明け方と言う事で良いかな?葵のお蔭で詳しい場所が分かったから、しらみ潰しにそれっぽい建物全部襲撃するって手間も省けたしね?」
「「「「意義なし!」」」」
「なしっ!」
皆につられたのか、何故かスー君まで同意している。僕はその様子を見ながら、ゆっくりと手を挙げた。
「あの、ちょっと良いですか?」
「ん?シエロ君どうしたの?何か気づいた事でもあったかな?」
裕翔さんはニッコリ笑いながら僕の話を聞いてくれた。何だかいつもよりも機嫌が良さそうだけど、何かあったのかな?
「あっ、いえ、気がついた事。と言いますか、ちょっと疑問に思った事なんですけど…」
「うん。何でも良いよ?君が思った事を聞かせて?」
「はい。さっき葵君が言っていた、カベルネの魂と喧嘩しない云々が気になっていまして…」
「あぁ、その話っスね?あれはそのままの意味なんスよシエロさん。本来スペアとなるスー君達は【ガワ】だけなんスよ」
「がわ?」
「え~っと……少し、いや、かなり胸糞悪い話になるっスよ?」
葵君は言いづらそうにしながらも、ちゃんと答えてくれた。
がわ。とは【外側】って意味で、カベルネのスペアになる為に培養されたホムンクルス達に、本来自我となる筈の魂は入らない。
元々は失敗作だった、魂の入らぬ人形に目をつけたカベルネは、魔王の手を借りながら自身の体を取り換える術を手に入れたのだそうで、スー君達はその為だけにガラスの筒の中で生まれたらしい。
「何でそう言う設定で人工的に作られた筈のスー君に魂が宿ったのか迄は分からねーんスけど、スー君はガラス瓶の中で、失敗作達が次々に処分されて行くのをずっと見ていたらしいんス」
「それで、逃げてきたのか…」
葵君の話しをずっと静かに聞いていた裕翔さんが、ポツリと小さく呟いた。
それに対して、
「まぁそー言う事。考えられる頭がありゃあ、そんな地獄みたいな場所から逃げ出したくなるもんさ。あっ、因みにこいつ、こう見えて3歳な?体だけが目的だからな、他の奴等も此処まで一気に急成長させられられるらしい。当然、こいつらにかかる肉体的な負担なんざお構いなしだ」
と葵君が顔を歪めながら続けてくれる。
うん。確かに葵君の言うとおり、胸糞の悪い話だった。
「スー君、君、苦労したんだねぇ!?」
「んみゅ?」
と、裕翔さんと葵君が話している後ろで話を聞いていた亜栖実さんが、目をウルウルさせながらスー君に抱きついた。
「すぅうくぅぅうんん~!!」
「キャハハハハハハハハ(*≧∀≦*)」
スー君に抱きつきながら、スー君のほっぺたにグリグリする亜栖実さん。
スー君はくすぐったそうにしながらも、ご機嫌に笑っている。傍目から見ると、リア充の恋人が戯れている様にも見えるけど、中身は食べ盛りの少年と文字通り3歳のチビッ子だ。
これだけ出るとこ出てるくせに色気のイの字も感じさせないのは、亜栖実さんの良いところでもある。まぁ、そのお胸でやられる方はたまったものでもないのだけど…。
『『「なるほど、だから心が読めなかったのね?」
と、此処で、僕のお腹の中から風華が顔を出しつつ、そんな事を言ってきた。
「どういう事?」
「そのままの意味よ?よいしょっと。スーはね?魂が無いと思ってる研究者達に囲まれながら、一気に成長させられた訳でしょ?」
「うん、葵君はそう言ってたよ?」
「うぉわっ!!?すっげぇ美人なお姉様!一体何処から?」
あぁ。まだ葵君に風華達を紹介してなかったっけ?とか思いながら風華の方を見ると、その後ろに物凄い悟った目をした裕翔さんの顔が見えた。
えっ?何?
「うわぁ~。本当にお綺麗ですね?サラサラの御髪がまたチャーミングだ♪」
「えぇっ?」
えっ?マジで何?
って言うか風華さん、さっきの話の続きは!?
なかなか話が進まなくて申し訳ないです。
何故か葵君がとんでもない方向に勝手に動いてしまうので、いつもよりグダグダ2割増し程でお送りしております(^^;
本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。
明日も同じ時間に更新致しますので、また宜しくお願い致します