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八十八話目 2度目の作戦会議③


5月7日の更新です。

本日も宜しくお願い致します。



◇◆◇◆◇◆


《side:シエロ》


「終わったぜ?」


 葵君の一声と共に、張り詰めていた食堂の空気が一気に弛緩する。


 急に変わった皆の雰囲気を感じとってか、スー君だけはキョトンとしていたけれど、まだ、答えが葵君の口から聞かされた訳ではないからか、空気は変わっても皆の表情は未だ、固い。


「あ~。結論から言うぞ?」


 ゴクリ


 誰かが唾を飲む音が静まり返った食堂の中に響く。


 僕を含めた全員が、口から心臓が飛び出しそうなくらいドキドキしていたんじゃないか?ってくらい、皆が緊張しているのが伝わってくる気がした。


 葵君の口がまた開く。時間にしたら僅か数秒間くらいしかない筈なのに、何だか数時間にも感じられる。なんだか頭がクラクラしてきたや。



「結論から言うと、こいつは本当に逃げてきただけだ。敵じゃない。それだけは約束する」


「本当か?葵」


 葵君の言葉を受けて、裕翔さんが飛びつく様に声を放つ。


「だから嘘じゃねぇよ。つーか考えても見ろよ?俺っち、こいつの前で自分の能力ベラベラ話してたんだぜ?疚しい事があったら普通、その時点で何かしらのアクション取ってくんだろ?こいつヘラヘラしてただけじゃん」


「そ、そっか…。はぁ~~」


 裕翔さんはその場にしゃがみこんでしまった。


 相当ホッとしたらしく、しゃがみこんだままで、小さく


「良かった」


 と何度も呟いているのが聞こえてきた。僕も、心からホッとした。



「んで、こいつが逃げてきた場所が……ここらしいぜ?」


《バサッ》


 葵君が、何枚か紙をめくって出してきた2枚の紙に、皆が注目する。勿論、裕翔さんも一緒にね?



 さて、1枚目の紙には、立派な建物らしき絵とその周りの風景が、そして、2枚目の紙には、地図っぽいものが描かれていた。


「こっちは見ての通りこいつが居た場所へ行く為の地図で、こっちはその研究所?ってところらしい」


 葵君が指差した紙には、 鉛筆で描いてあるから色は分からなかったものの、【研究所】と言うよりは【砦】もしくは【要塞】と言った風情の、武骨な建物が描かれている。


 建物の周りには木が沢山描かれていて、この建物が木に囲まれた場所に建っている事が葵君の絵からも良く分かった。


「地図からすると、こいつが居た所は魔属領と俺っち達がいる国との境目から、北へ1日弱くらい歩いた所にあるみたいだな。途中大きな岩がゴロゴロしている所を通って、川も1本渡ってる」


 葵君は、また別の紙を僕達の前に置きながら、更に説明を続けた。


「川を抜けて、しばらく歩いた所で真っ赤な……何だこりゃ?マグマの川?に出た所で凄い力で誰かに引っ張られたのか?そこでビックリして感情が動いてる」


 一斉に目を逸らす僕ら。


 スー君をそのマグマの川で思いっきり引っ張ったのは炎の精霊の【ママ】だ。


 あの時、確かに人形みたいな無機質な顔でマグマの川の向こう側にスー君は立っていた。が、ママの胸に抱かれた……と言うか引っ張られた衝撃で抱き止められる形になっただけだけど、抱かれた時はビックリし過ぎて目を丸くしていたっけ。


 そりゃ感情も動くってなもんだ。


「ふむ。スーたろは元々、感情的なものが希薄、もしくは全く無い様に【設定】されていたみたいだな。後から入れる、かべるねの魂と喧嘩しない様になってるらしい……なぁ、かべるねって誰だ?」


「カベルネは魔族の大将の1人だ。スーのオリジナルって言えば分かるか?」


「あ~。宇美彦が言ってたやつな?確かホムンクルスだっけ?」


「そうそう、それだ」


 葵君と宇美彦が頷きあっている。


 どうやら葵君が宇美彦に連絡をとってきた時に、宇美彦が大まかな事情を葵君に知らせていてくれたらしい。


 が、僕は葵君のスー君に対する話しの内容が気になり過ぎて、それどころじゃなかった。


 カベルネの魂と喧嘩しない様に設定されてるって何?


 えっ?スー君は本当にお人形だったって事?えっ?えっ?



◇◆◇◆◇◆


《side:???》


《コツコツコツ》


 黒ずくめの男は、ガラスの管が所狭しと並べられた空間の中を歩いていた。


 フードを被った男に渡された書類を見ながら、黒ずくめの男はとある管の前で止まり、管の横に取り付けられた装置を何やら弄り始める。


《パチャパチャパチャパチャ》


 男は、装置に付属されている、パソコンのキーボードに酷似した装置をパチパチと触り、書類に書かれた文字を次々に入力していく。


 その行為は、お目当てのガラス管が無くなるまで続けられた。



本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。

明日も同じ時間に更新致しますので、また宜しくお願い致します。


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