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八十話目 某場所にて


4月15日の更新です。

本日も宜しくお願い致します



《side:???》


 次に男が姿を現したのは何処かの研究所らしき場所の廊下だった。


 左右には等間隔に同じ様な扉が並び、白で統一された壁や床は、飾り気の無い廊下を更に無機質な印象にしていた。心なしか、空気まで冷たい印象を受ける。


 男は同じ様な扉の列に戸惑う事も無く、直ぐ様目の前の扉に手をかけると、ノックもせずに扉を開いた。


《ガチャ》


「失礼します。脱走したスペアの件ですが、少々厄介な事になりました」


「何があった」


 いきなり現れた男に対し、部屋の中でなにやら作業をしていた白衣の男は何も騒ぐ事無く淡々と男に話の続きを促した。どうやら此処ではこれが普通な様だ。


「はい。勇者に捕まりました」


「何っ!?どう言う事だ?詳しく話せ!」


 部屋の中に居た白衣姿の中年男性は、そう声を荒らげながら黒づくめの男に詰め寄って行く。耳の上に小さな黒い角が見える事から、白衣の男は魔族なのだろう。 キンキンした声がやけに耳に障る。


「はい。スペアを我々が見つけた際、奴はマグマの川(炎の境目)に居りました。見つけ次第直ぐ様確保する手筈でしたが、対岸には勇者一行と、炎の大精霊が居り、何かスペアに話しかけているところでした。しかし我々はスペア以外の者に接触する事を禁止されておりましたので、そのまま暫く両者を監視する事に致しました」


「フ~ム、そこまではマニュアル通りだな。で?」


 不自然な程に細い、節くれだった指で眉間を揉みながら、尚も先を促す男。それを受け、黒づくめの男は更に続けた。


「はい。通常、スペアに()()()()()()()()()()()()()()ので、コントローラーを持たない奴等の言葉には反応致しません。ですから、そのまま勇者が立ち去るか、注意が逸れるのを待ちました。しかし、一向に反応を返さぬスペアに焦れたのか、炎の大精霊がスペアを捕獲。そのまま連れ去られた次第であります」


「……なっ、なるほど。良く分かった。報告ご苦労。しかし困った事になったな…。くそっ、あの老いぼれめ!あのババアはいつも我々の邪魔をする!!」


 中年魔族はキンキンした耳障りな声で喚きながら、その場で何度も地団駄を踏んだ。その様は、良い歳をした大人がやるべき行動とは余りにもかけ離れていたが、この場にそれを咎める者はいなかった。


「ふぅ。少し気が紛れた。さて、どうしたものか…。自我を持たぬスペアが勝手に話ををする事は無いだろうが、ヒューマンの中には記憶を読み解く者がいると聞く。やはり研究所をまた移設せねばならないだろうか?……くそっ、まだスペアが自分から逃げ出した答えも分からぬと言うのに、実に忌々しい」


 暫く暴れていた中年魔族が研究所を移設するか否か。と、ブツブツ呟いていると、


「その必要は無い!」


 突如力強い声が聞こえて来た。


 黒づくめの男が声のした方向を向くと、いつの間に現れたのだろうか?そこには魔王軍第3隊隊長カベルネ・ソーヴィニオン本人が、部屋の奥の執務机らしき書類の束が置かれた机の上に、ドッカリと行儀悪く足を乗せて座っていた。


 その体制から、器用にガバッと椅子から飛び起きたカベルネは、ズカズカと男達の前までやって来て、


「何も恐れることは無い。この場で迎え撃てば良い。勝てば良いのだ!それとも、貴様は俺が負けるとでも?」


 と、ニヤリと笑いながら声高らかに言い放った。


「おぉ!それでこそカベルネ様!!直ぐに戦の準備を致します。皆の者!戦いの準備を!!」


「はははははははは!楽しくなってきたなぁ!!」


《ガチャ、バタン。ドタドタドタ》 


 周囲の魔族や研究員へと声をかけながら部屋から出て行く中年魔族とカベルネ。


 楽しそうに笑うカベルネと、ひきつった笑顔でそんなカベルネを持ち上げる中年魔族の顔が対照的だった。



 【カベルネの機嫌を損ねてはならない】


 【戦闘狂いのカベルネが戦う。と言い出したならば、直ぐに準備をせねばならない】


 この2つは、この研究所内の暗黙のルールになっている。逆らえば抵抗する事も許されずに殺されるのだ。皆、中年魔族の言葉を受けて、一様に慌ただしく動き出した。自分達の大将の機嫌を損ねて殺されない為に。


「はぁ。脳筋め…」


 1人取り残された黒づくめの男は、忌々しげに彼らが出ていった扉を睨み付けると、もう一度転移の魔法を発動させる。


《シュンッ》


 魔法が発動するギリギリでフードを外した黒づくめの男の顔は、カベルネと全く同じ顔をしていた。



本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。

このお話しにて、この章はおしまいです。


次の章はいよいよ魔族領へとシエロ達が足を踏み入れて行きますが、実はまだ真っ白ですorz

その為、少し書き溜める時間を頂きたく思います。


すぐに戻ってくる予定ではありますが、たぶん1~2週間くらいかかってしまうかもしれません。

筆が遅くてすいません!ノロマで本当に申し訳無いです!!(;´д`)三(´ω`;)


ですので、次回の更新は出来次第、活動報告にて報告させて頂きます。少し時間は空いてしまいますが、またお読み頂けたら幸いです


4月15日 お豚汁子


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