七十八話目 スペアとカベルネ②
4月13日の更新です。
本日も宜しくお願い致します!
《トントン》
「入るよ~?」
軽くノックをして、部屋の中の人物に部屋に入る事を告げる。
《ガタガタッ》
すると、中から何かガタッて音がした後、
「ん…」
って短い返事が聞こえてきた。
ノックから然程間が空かなかったから、たぶんノックに驚いてベットを揺らしただけだと思うんだけど、一応裕翔さんが扉を開けてくれる事になった。
本当は、何があっても裕翔さんが先頭なら対処しやすいから僕の前にいてくれているんだけど、建前上僕の手が塞がってるから、代わりに裕翔さんが開けてくれたよ?って体で行くらしい。
僕はもう彼を信用しても良いんじゃないかな?ってくらいにはほだされてるんだけど、やっぱり裕翔さんは首を縦には振らなかった。
まぁ、信用うんぬんは僕の勘でしか無いから、当然っちゃ当然なんだけどね?
《ガチャッ》
「おまたせ~」
裕翔さんが開けてくれた扉を通って、中のカベルネに声をかける。
「っっ!??」
何故僕の前にいる裕翔さんが息を飲んだのか分からなかったけど、構わず裕翔さんをすり抜けてベットサイドの小さなテーブルに手に持っていたお盆を乗せる。
ふぅ。溢さなくて良かった。煮たった麦粥溢したら火傷じゃ済まない気がするよ。
「ごめんね?遅くなっちゃったか、な?」
「ん…。だいじょうブ」
ここで始めて顔をカベルネの方へ向けると、ベットの上に布団の山が出来ていた。
掛け布団の中から目だけを出したカベルネが、もそもそと動いている。その仕草がすっげぇ怖かったけど、どうやら頷いたつもりらしい。
なるほど、これは裕翔さんじゃなくてもビビる。だって、ペル○ナに出てくるシ○ドウっぽかったんだもん!!
あっ、シャ○ウって言っても、フィールド徘徊してる方ね?
……じゃなくてっ!!
「えっと、何してるのかな?」
僕は、多少ビビりながらもシャド○化したカベルネに話しかけた。
「ん…。知らない人が、イたから、怖カっタ」
なるほど、怖かったのか。今は君の方がよっぽど怖いけどね?
流石に心の中でそう呟いていると、裕翔さんがベットサイドに膝をついて彼に目線を合わせながら、
「そっか、ごめんね?俺はユート、シエロ君の友達だよ?」
と、笑顔で挨拶し始めた。
「とも、ダち?」
「そう。友達」
そんな裕翔さんの柔らかな雰囲気にカベルネは安心したのか、彼はシャ○ウから卒業した。
要は、布団から出てきた。ノット汝は我。
しかし、やっぱり裕翔さんは凄いなぁ。
あんなにさっきまで《「まだ何も彼から聞けてないからね。気を抜く事は出来ないから、俺はいつでも首をはねる準備だけはしておくよ?」》何て物騒な事言ってた人が、よくまぁこんなに柔和な表情が出来るもんだ。
変なところで感心している僕の考えなど知らない彼らは、穏やかな雰囲気そのままに、話し続けている。
何だか急に手持ちぶさたになったので、僕はその間に彼の為に作ってきた料理をよそう事にした。
「君の名前は何て言うの?」
「ボク、のナまえハ…」
「うん、名前は?」
「無いんダ。ボクは、スペあだかラ………」
「スペア!?」
《カシャンッ》
「!?」
「!!!」
「あっ、ごっ、ごめんなさい。どうぞ続けてください」
裕翔さんが急におっきな声出すもんだから、ビックリしてスプーンを落としてしまった。
また、持ってきたスプーンが配膳用のお玉みたいに幅が広いタイプのスプーンだったもんだから、やけにデッカイ音が鳴っちゃったし、それに驚いた裕翔さんが凄い勢いでこっちを振り返って見られてしまったのもあって、たぶん僕の顔は真っ赤っかになっていると思う。あ~、恥ずかしかった。
……って言うかさ、スペアって何の事だろうね?僕、何か前にもこんな話し聞いた事がある気がするんだけど…なんだったっけ?
作者は稀に金のシャ○ウが出ると、焦って何故かバックアタックされまくります。何故正面から斬りかかってバックアタックになるのかww
本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。
明日も18時頃更新させて頂きますので、また宜しくお願い致します!