七十五話目 向こう岸の人影
4月10日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
「ところで、川の向こう岸にいるのは誰かの知り合いですか?誰か待ってるみたいでしたよ?」
カグツチ君が、マグマで出来た真っ赤な川の方を指差しながら、そんな事を言う。
勿論僕達の他にこの場に来ている仲間はいないので、一度は首を横に振ったものの、何だか気になるから。と皆で見に行く事になった。勿論、ママも一緒だ。
なんせ人らしき者が居たのは、川の向こう岸。下手したらそのまま戦闘に突入!何て事が有り得るからね?
「此処がそうですよ?ほら、向こう岸、誰かいるでしょ?」
と、言う訳で、カグツチ君に案内されて着いた場所は、さっき裕翔さんが死ぬ程汗をかいていた場所から少しずれた、マグマの川幅が少し狭まっている場所だった。
とは言え、それでも人が自力で渡るのは困難な距離。
しかも魔族が侵入して来ない様にこのマグマの川があるのだから、そんな場所に橋なんかがある訳もなく、そこへ1歩でも踏み出そうものなら骨まで残らなさそうなぐらい煮えたぎっている。
「他の場所は結構同じ様な広さでマグマの川が流れていますが、此処だけ何故川幅が狭いのでしょう?」
月島さんがママにそんな事を聞く。向こう岸の人?よりもそっちを気にする辺りが月島さんだよね?
「うむ。それは、此処だけ地形の関係での。他の場所よりも幅が狭くなってしまったのじゃ。その代わり此処は谷になっておって深いから、私の息子達の中でも力の強いものを配置して警備にあたらせておる。だからか、今まで此処から魔族が襲って来る事などなかったのじゃがのう…」
そんな月島さんに気にした風もなく、ママが答える。その辺この2人、結構気が合いそうな気がする。
「へぇ~そうなんですか……。あっ、本当だ。確かに向こう側に誰かがいるみたいだ…」
裕翔さんの言う通り、確かに誰かが向こう岸に立っているのがぼんやりと見える。
警備してくれてるママの息子さんって訳でも無いだろうし、その息子さん達が反応してないんだから、魔族じゃないのかなぁ?
「ん~?」
僕も向こう岸の様子を伺ってみる。
なんせ流れているのがマグマなものだから、陽炎に似た湯気?みたいなものがモワモワしていて、他の場所より近いとは言え向こう岸が大変見えづらい。
だから、目を凝らさないと分からないんだけど…。
「カベルネ?」
僕の隣で同じ様に目を凝らしていた裕翔さんがポツリと名前を口にした。
「!?」
「カベルネだって!?」
対岸の人物にさして興味が無さそうだった亜栖実さんも、ママと話していた月島さんも裕翔さんの呟きを聞いて、僕の横に加わった。
「確かにあれは、カベルネ…の様ですが。様子がおかしいですね?」
更に良く向こう岸を確認しようと、月島さんが目を細~くしながら対岸の様子を伺っている。
月島さんは目が悪いから、遠くを見る時はこうして目を細くして見つめるんだけど、眉間に皺も寄っていて、結構人相が悪くなるんだ。近視あるあるらしい。
「んー?」
僕も月島さんに負けじと目を細めて向こう岸の様子を伺う。
ぼんやりと向こう岸に見えた人影は、確かにいつか見たカベルネの姿に似ていた。
まぁ、あのカベルネはジェイド君だった訳なんだけどね?
で、そのカベルネっぽい人何だけど、所々焦げてボロボロになった服を着て、焦点のあっていない視線を、何となく此方に向けて、ぼんやりとそこに突っ立っていた。
狭いところの川幅は、他の場所が1㎞くらいなのに対し500~600mくらいで考えています。
捕捉でした~。
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