七十三話目 マグマと大精霊②
4月8日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
「むぎゅっ。【ママ】、いっ、痛いよ…」
「ん~?そなたと妾の仲では無いか、その様に冷たい事を言うでない。う~ん、そなたは相変わらず可愛いのう?」
「んむぎゅっ!?」
僕は、真っ赤な着物っぽい、前合わせのドレスに身を包んだ女性に抱きしめられていた。
合わせ目から覗く真っ白な脚が、その真っ赤なドレスと相まって、なかなかに色っぽい。
目線をあげると、真っ赤な口紅が映えるぽってりとした唇が見え、続いて、鮮やかな紫色の瞳が楽しそうに弧を描いているのが見えた。
恥ずかしいからさっきからもがいてるんだけど、ちっとも動けない。
全く、相変わらず元気な人だな。……いや、人じゃないけど。
「あの~。シエロ君を離してあげては頂けませんか?」
「んみゅ?」
「ん?誰じゃ?お主?」
ママ、もとい、真っ赤なドレスの女性が、僕をサッと体全体で庇うように隠しながら、不機嫌そうに裕翔さんを睨み付ける。ママさんや、貴方のダイナミックすぎる胸に押し付けられては、僕は息が出来ません…って、そんな事言ってる場合じゃない!
あわわ、マズイ。マズイ!このまま誤解を解かなければ、裕翔さんがママに消し炭にされてしまう!?なんせママはーーー。
「ママ、その人は僕の友達です!今日は、皆をママに紹介したくて来たんですよ!?」
「ん?シエロの友達とな?なんじゃ、そうならそうと早く言わんかえ!?」
僕がママの胸の中から必死に訂正を含めた説明をすると、ママの口調から険が取れ、睨み付ける様な目付きも柔らかなものへと変わった。それと同時に、僕も抱きしめ攻撃から解放され、やっと人心地つく事が出来る。
ほっ。胸で圧死するかと思った。
「すいません。ママに会えたのが嬉しくて…。「おぅおぅ。その様な事を言ってくれるとは、やっぱりシエロは可愛いのう♪」…………え~と、コホン。裕翔さん、月島さん、亜栖実さん、此方はママ…コホン。此方はこの山の守り神様で、炎の大精霊様です。ママ?此方は僕の友達で、勇者のユート・シライシさん。ニコニコしている人が賢者のセイジ・ツキシマさんで、髪の毛の短い女性が大魔導師のアスミ・ウエサカさんです」
途中で挟まれたママの発言を無視し、【ママ】こと炎の大精霊様を、簡単にではあるが裕翔さん達に紹介する。
3人は、ママが大精霊だと知ると、まるで王様に謁見する時の様に片方の膝を地面についてしゃがみ、恭しく頭を垂れながらそれぞれ挨拶をしてくれた。
ザッと音が聞こえる程の揃った動きで跪く3人の姿は、勇者様っ!!って感じで格好良い!?……って、本当に彼らは【勇者様御一行様】なのだから、そりゃ当たり前か。
「お会いできて光栄です。畏れ多くも、今代の勇者を名乗らせて頂いております。ユート・シライシです。宜しくお願いします」
良く通る声音、とキリリとした表情が裕翔さんの地位をまざまざと思い出させる。
普段の裕翔さんとはまるで別人の様だ。
「お初に御目にかかります。セイジ・ツキシマと申します。貴方様にお目通り叶います事、光栄の至りにございます」
月島さんは、いつもの柔らかな雰囲気はそのままに、なんだろう?ある種の神々しさ?みたいなものを感じる。
この世界にはまだ、定着どころか知らない人の方が多い銀縁の眼鏡が、更に彼を神秘的に見せているのだろうか?
「同じくお初に御目にかかります。アスミ・ウエサカと申します。以後、お見知りおきを」
えっ?この人誰?
長い睫毛を強調するかの様に伏せ目がちにした瞳からは知性が覗き、凛とした声は、此処がマグマ溜まりだと忘れさせる程に涼やか。
その仕草のお蔭で、何だかいつもの亜栖実さんを遠くに感じてしまう。少し寂しい。
「うむ。そなた達の噂は妾も聞いた事があるぞ?今代の勇者は、見込みの有りそうな者だとな?ふむ。確かに歴代の勇者殿達と比べても、見劣りせぬどころか勝っているやも知れんな?」
3人それぞれの口上を聞いたママは、フム。と
自慢のクルクルとしたオレンジ色の髪の毛で遊びながら裕翔さんを値踏みでもするかの様に眺めていた。
彼女はこんなナリをしているが、内包する魔力はドラゴンを軽く超える。ほんの少し、蝿でもはらう様に軽く片手を振っただけで、人1人をこんがりウェルダンにする事が出来るくらいの力を持っている。
だから、実はこんなに早くママが出て来た事に対して僕は凄くドキドキしていたんだ。
でも、裕翔さん達の立ち居振舞いを見ていたら、ママの荘厳さ?とか色々なものと相まって、名だたる美術館に飾られた1枚の絵画を見ている様な、そんな気持ちになった。そして、お互いのいつもの様子を知っている僕は今、別な意味でドキドキが止まらなくなっていた。
どうしよう。両方とも普段と違いすぎるから、胸がドキドキするのかな?
シエロ、実は大分パニッていますww
そのせいで亜栖実と月島の役職をサラッ流していますが、また改めて2人プラス宇美彦の役職についてはご説明致しますので、もうちょっとお待ち下さいませ!
さて、本日も此処までお読み頂きありがとうございました。
明日の更新も18時頃に出来ると思いますので、またお読み頂けたら幸いです。