七十一話目 魔族領と僕んちの事情
4月6日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
僕の父さんが領主をしているシュトアネールの街にランクの高い魔物が出るのは、実は魔族領に近いからだったりもする。
魔族領とヒューマン領の境目の街は、6年前に壊滅一歩手前まで被害をうけた【ヒキウ】の街で間違い無いんだけど、実はヒキウの街の東側。その斜め後方には巨大な山々が連なっていて、その山々の中でも一際高い山の麓にシュトアネールの街はある。
もしもヒキウの街が突破された際に、本当の本当に最後の砦となる為の街でもあるらしい。
何代か前の王様が魔族に対抗する為に、ヒキウとシュトアネールの街を王都への進行の妨げとする防波堤代わりに作ったんだそうだ。
そのお蔭で、王都から然程離れていないのにコルト家は【辺境伯】なんて位を王様から賜っているし、防衛にかける資金も国から毎年潤沢過ぎる程に貰っていて、真面目な父さんは、そのお金をちゃんと使って街の防衛を怠る事無く行っている。
勿論余った防衛費はいざと言う時の為に地下の金庫に大事に仕舞ってあるよ?保存が効く小麦なんかの食料と一緒にね?
そして、魔族領に近くて危ないからと言う理由から、うちの領地には高ランクの冒険者か元高ランクの冒険者しか住んじゃいけない事にもなっているんだ。
と言うか、街のすぐ近くで普通にサーペントタイガークラスの魔物がウロウロしているから、住みたくても守ってくれる人がいるか、もしくは自分の身をしっかり守れる人しかいなくなったってだけかもしれないけど…。
まっ、まぁ、魔族領とヒューマン領の境目とは言っても、その境目にあたる一際高い山が活火山で、絶えずマグマを噴き出しては溶岩の川を魔族領とヒューマン領の間に流しているからか、今までシュトアネールの街が魔王軍率いる魔物達に襲撃された事は一度も無い。
寧ろそこに住む火の妖精や大精霊はヒューマン側の味方をしてくれていて、ぶっちゃけ火山からの恵みで温泉街になってて、少々の危険くらいなら、気にしないで住んでる人の方が多いみたい。
「いや、少々のってレベルじゃないでしょ?」
「そうですか?僕からしたら普通なんですけどね?」
「いやいやいや。その普通は前提からしておかしいものだって事を、君は知っておいた方が絶対良いと思うよ!?」
僕的には何気無い普通の事だったのだけど、何故か汗だくの裕翔さんから鋭いツッコミを頂いてしまった。
今、僕は裕翔さん、亜栖実さん、そして月島さんの4人と一緒に、シュトアネールの街の裏側。溶岩の川の前まで来ていた。
僕達の目の前では、ゴウゴウと凄い音をたてて、絶えず真っ赤な溶岩が流れている。
巨大な溶岩の川の幅は、悠に1㎞くらいは有りそうな大きさで、とても橋をかけたり等は出来そうも無いくらい煮えたぎっていた。
って言うか、橋かけても燃えるか溶けると思う。
「しかし、近付くだけであっついね?……って、何で皆はそんなに涼しい顔していられるの?」
一際煮えたぎる溶岩の近く、真っ黒な岩の上に立っていた裕翔さんの顔から汗がポタリと垂れて、
《ジュワッ》
と、音をたてた。
因みに、僕も亜栖実さんも月島さんも汗なんかかいていない。
汗をかいているのは裕翔さんだけだ。
え?何故って?
そりゃあ…。
「僕は闇魔法使って熱を遮断していますから」
「僕は水魔法を薄く纏っていますよ?」
「僕は火魔法が使えるからね~。熱だけ遮断するのなんかお茶の子さいさいってやつさ!」
僕、月島さん、亜栖実さんの順でそれぞれの対処法を裕翔さんに伝える。
「え?」
「マグマの近くまで行くのは昨日のお話から分かっていましたからね?シエロ君に昨日対処法を教えて頂いていたんですよ」
キョトンとした裕翔さんに、笑顔の月島さんが種明かし。
「え?」
裕翔さんの頬を伝って汗がまた一筋垂れる。
《ポタタッ、ジュッ》
「えぇっ!?何で俺には教えてくれない訳!!?」
汗を飛ばしながら、裕翔さんが叫んだ。
しっ、知らなかったんだ…。
あれ?おかしいな、裕翔さんには【僕から伝えとくよ!】って亜栖実さんが言って…。
そう思った僕は見てしまった。
亜栖実さんがすっごい悪い顔をしていたのを。
あっ、こいつやったな…。
相変わらず不憫全開wwの裕翔さんでしたwww
本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。
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