七十話目 冒険者ギルドにて
4月5日の更新です。
本日も宜しくお願い致します。
「はぁっ?そんな街の近くにサーペントタイガーが出たってのか!?」
ギルド内に、ギルマスの馬鹿デカイ声が響き渡る。
余りにも声がデカ過ぎて、ギルドの壁や窓がビリビリと震動していたくらいだ。顔も怖いが、声まで攻撃力があるとか本当に怖い。
お蔭で耳がキーーンってした。地味に効く攻撃を、ヘトヘトの僕らに仕掛けて来ないで欲しい。
今僕達は、王都の冒険者ギルドにて魔物討伐の報告をしていた。
魔物の名前を聞いた受付のお姉さんが、真っ青な顔をしてギルマスを呼びに行ったのが今から3分くらい前。
階段を上って、ギルマスの部屋に入ってすぐにギルマスが飛び出してきて、今に至る。
かかった3分も、お姉さんが階段を上って、ギルマスの部屋の扉を叩いて、中に入って魔物の名前をギルマスに伝えたくらいの時間でしかないと思う。
兎に角、それくらいの速さでギルマスは受付まで駆け下りてきたんだ。
んで、魔物の出現したポイントを地図で確認すると、冒頭にあったとおりの馬鹿デカイ声で、怒鳴ったって訳です。
「うるっせぇぞリキッド!耳が痛ぇから怒鳴るんじゃねぇよ!!ったく…。俺らだって信じたくはねぇが、現に北門の方でサーペントタイガーが出たんだっつの!?ソラタ達が来てくれたから何とかなったが、あの時誰の助けも無く、俺達だけだったらと思うとゾッとするぜ…」
「証拠…」
「おぉ、そうだな!ソラタ、今出せるか?」
耳がキンキンしちゃってクラクラしていた僕の代わりに、ギルマスの扱いに長けたベテラン冒険者でもあるおっちゃん達が、慣れた様子でギルマスに噛み付いてくれている。
因みにパスカルのおっちゃんが言っていた【リキッド】って言うのは、はギルマスの名前だよ?正確にはリキッド・クリアさんね?ギルマスと、酒場の宴の面々は、その昔、一時合同パーティを組んだ事もある仲間なんだってさ。
そんな酒場の宴のおっちゃん達の後ろで、助かるなぁ。流石だなぁ。とか思いながら痺れた両耳をさすっていると、パスカルのおっちゃんからサーペントタイガーを出せるか?と聞かれた。
「勿論出せるよ?ちょっと待ってね?ギルマス、此処に出しちゃって構いませんか?」
「あぁ」
後ろでやり取りを見ていただけの僕に否やがある筈も無く、ギルマスに一度断りをいれてから、僕は受付のテーブルの上に、魔導袋からサーペントタイガーの死骸を取り出してみせた。
《ドサッ》
《ザワッ》
重量感のある音と共に3メートル以上あるサーペントタイガーの体が受付台に現れると、後ろで野次馬よろしく見ていた冒険者達がざわめき出す。
そりゃそうだろう。この辺りで出る魔物と言えば、ランクが高くてもD~Eランクくらいのスライムやラビッスーー兎っぽい魔物で食べると美味しいよ?ーーくらいなものだからだ。
彼らがもし高位の敵と戦いたいならば、シュトアネールまで足を伸ばすか、王都の南門の近くにあるダンジョンに入るしかない。
が、それでもダンジョンから魔物が出てくる事など今まで無かったし、冒険者を追っている魔物すら外に出た事が無いから、【王都近辺に高位ランクの魔物が出る訳が無い】と思っている冒険者も実は少なく無かったりする。
しかも今回サーペントタイガーが出たのはダンジョンのある南側では無く、真逆の北側だ。
魔族領は王都から見て北側にある為、否応なしに魔王と関連付けて考えてしまった冒険者達も多いだろう。
「ちっ。マジかよ…。見つけたのはこいつ一匹か?」
ギルマスが眉間に皺を寄せながら思いっきり舌打ちをする。マジでヤ○ザの偉いさんみたいだから止めてくれ。子供が見てたら号泣しているところだ。
「あぁ。俺らんとこに出て来たのはこいつだけだ。ソラタは上から見てたんだろ?何か分かるか?」
「【俺】も見つけたのはおっちゃん達を襲ってる一匹だけだな。2人は?」
パスカルのおっちゃんに問われた疑問を、そのままジェイド君と咲良に投げかける。
「僕が見たのも、その一匹だけでした」
「私が見た限りでは、それだけかと…」
「そうか…。兎に角、ギルドからも調査してみる。後からもう一匹いました。じゃあ洒落にならんからな」
ギルマスは、眉間の皺を揉みながら、深々と溜め息を吐いた。
僕も、裕翔さん達に知らせないとな…。
僕は、暫しの平穏すら楽しめないのか。と、少し魔王に呪いをかけた。
ラビッス肉を使ったおすすめのメニューは、唐揚げだそうですww
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日も18時頃に更新致しますので、またお読み頂ければ、嬉しいです