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六十八話目 たまには冒険者らしい活動も③


4月2日の更新です。

本日、少しグロ注意な部分がございます。

本当に少しだけですが、苦手な方は注意してお読み頂ければ幸いです。


◇◆◇◆◇◆


《side:シエロ》


 僕が山の麓まで転移した時、丁度僕の目の前で【酒場の宴】のメンバーにサーペントタイガーが今まさに襲い掛かろうとしていた。


 流石に僕が背後から魔物に斬り掛かるにしても、到底間に合わない距離。


 転移するにしても、魔物とおっさん達の間に正確に転移するのは焦って精細さを欠いた今の状況では難しいものがあった。


 更に言えば、本来名乗りも挙げず、助太刀する為だったとは言え、何も告げずに冒険者が対峙している魔物を後ろから攻撃すると言うことは、冒険者として最大のタブーとされている。


 【横取り】は、冒険者が一番嫌うものだからだ。


 だから、僕がしようとしている事は、下手をすれば冒険者業を辞めなくてはいけないくらい、本当はやってはいけない事()()()


 何故過去形だよ?と問われれば、気がついたらおっさん達に襲い掛かっていたサーペントタイガーは蔦植物にグルグル巻きにされて宙に浮いていたのだから、これは僕としても不本意だった訳で…えっと、いつの間にか魔法が飛んでました。


 いや、その、ごめん…。



「なっ、何だ?」


「助かった。のか?」


「あっ、【便利屋】…」


 グルグル巻きにされても尚もがくサーペントタイガーの姿を、ポカンとした様な呆けた顔で見ていたおっさん達が、口々に言葉を漏らす。


 僕に気が付いたおっちゃんの1人のブランさんが僕を指差しながら呟いた。


 因みに【便利屋】と言うのは、僕につけられたあだ名みたいなものだ。いや、 二つ名って言った方が良いのかな?


 冒険者になって最初の頃、兎に角、皆から認めてもらえる様にと、文字通り受けられる依頼を片っ端から何でも受けていたら、いつの間にか【便利屋】だなんて二つ名を付けられていた。


 他のおっさん達は僕の事を名前で呼んでくれるけど、何故かブランさんだけは二つ名の方で僕を呼ぶ。


 嫌な訳じゃないんだけど、まだ慣れてないから違和感が、ね?


「ソラタだったのか!いや、助かったぜ!ありがとな?」


 【酒場の宴】リーダーで、いつも俺の事を気にかけてくれるパスカルのおっちゃんが此方へ駆け寄ってくる。


 僕もつられる様に駆け出していて、おっちゃん達とは丁度間の距離で合流する事になった。


「あっ…。おっちゃん達怪我は無いか?ごめんな?勝手に体が動いちまった。俺、横入りしちまったな?」


「怪我なんかする暇もなかったよ!!いやぁ~助かったぜ!今、どうやってギルドに助けを求めるか皆で考えてたんだ!」


《バシバシ》


「痛て!?痛っ!?」


 笑いながら、スコッチのおっちゃんがバシバシと僕の背中を叩く。良かった。誰にも怪我は無い様だ。


 おっちゃん達がいつも着けている革鎧やローブにも多少の汚れはあるものの、見た目で分かる程の損傷は無い様に見えた。露出している肌にも傷や出血の類いは確認出来なかったので、ちょっとひと安心。



「……あ」


「「「!!??」」」


 ブランさんの漏らした声に、一斉にサーペントタイガーの方へ向き直り、剣を構える。まだ鞘から抜いていなかった僕も、鞘から愛用の剣を抜いて、構えた。



「グギャア、ギニャアァア!」


 見れば、サーペントタイガーが器用に蛇と虎の頭を使い、どうにか蔦から抜け出そうともがいているところだった。


 まだ大丈夫そうだけど、虎の牙が蔓を次々と食い千切っていく。


《ブチ、ブチチ》


「あっ、あぶない…」


 蔦の補強をしようと掌を蔦へ向けて伸ばした時、ブランさんが視線を下の方へと下げてまたポツリと呟いた。


 ?


 不思議に思いながらブランさんの視線を追っていくと、そこには何故か(シエロ)の格好のシエロ(ジェイド)君が居た。


「おいっ!お嬢ちゃんあぶねぇぞ!?」


「金色の薔薇姫…?」


「あれぇ?いつの間に…。後おっちゃん、あいつは男だぞ?」


 パスカルのおっちゃんとブランさんがほぼ同時に言葉を発する。


 僕は、予測不可能な動きをするジェイド君に呆れながらもおっちゃんズに突っ込みを入れた。


 彼の強さはいくら操られている時とは言え知っているので、然程心配はしていないけど、そんな事を知らないおっちゃん達は慌てた様にシエロ(ジェイド君)に駆け寄っていく。


 と。


《シュンッ》


 シエロ(ジェイド君)…面倒臭い!ジェイド君がサーペントタイガーの首めがけて手で振り払う様な動作を見せた。


《ふわっ》


 此方にまで軽く髪がなびく程度の風がそよいでくる。


 おっちゃん達も急な彼の動きに対応出来ず、駆け出そうとしたまま動きを止めた。


《ピッ、ピピ…ハラリ》


 一瞬の静寂の(のち)、サーペントタイガーの首にうっすらと線が入り、首回りに絡み付いていた蔦がハラハラと地面に落ちる。


『グキュッ』


《ブッププ、ブシュー!》


 そして、サーペントタイガーの口からくぐもった様な声が漏れたと思った次の瞬間には、サーペントタイガーの首からは血が噴き出していた。


 それは、余りの勢いの良さに、血飛沫から虹が見える程の勢いだった。



相変わらず口よりも早く手が動くシエロですwww


本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。

明日も18時頃更新致しますので、また宜しくお願い致します


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