五話目 再会⑤
1月16日の更新です。
本日も宜しくお願い致します!
「シエロですって!?今貴方、この方をシエロと呼びましたの?」
「ふや?」
シャドの発した僕の名前を聞いて、クレアさんが叫び、そして、じろじろと僕の顔や体を見回している。
「本当に貴方がシエロ君ですの?だって…あまりにもお顔が違いすぎますわ!!」
「あや?」
「えーっと…」
声をかけられた筈のシャドも僕も、何だかすっかりおいてけぼりだ。
話しかけているとみせかけて、その実こちらの話しを1つも聞いてくれない。
………あっ、フード落ちた。
被っていたフードが落ちた事で、クレアさんの長くて、艶々した真っ黒な髪の毛と、優しくも意思が強そうなエメラルドグリーン色の瞳が露になる。
が、彼女はフードが落ちた事にも気づいていない様子で、尚も僕の顔を見続けている。
ガンつけられてる?と疑問になるくらい見つめられているが、僕が知っている彼女はこんな事をする子ではなかったはずだ。
少なくとも、目を血走らせてまで見つめてくる事は無かった。うん、怖い…。
ん~。でも、確かに今の僕は誰が見ても別人に写っているだろうし、知り合いが見たら余計に混乱するのかな?でも、怖い…。
「え~っと」
「はっ!もっ、申し訳ありません。取り乱しましたわ!で?本当に貴方が?」
「いえ、えっと…、はい。すいません。こんな格好をしていますが、僕はシエロ・コルトです。ご無沙汰してます。クレアさん」
だんだん距離が近付いてきたクレアさんから少し後退りして離れながら、僕は彼女へ向けてペコリとお辞儀をした。
流石にあのままだと、彼女の顔目掛けて頭突きする事になっちゃうからね?
「本当に、シエロ君ですの、ね?」
「はい、シエロです。お会いするのは何年ぶりくらいですかね?6年ぶりくらいになりますか?」
「あ、う、あ?」
さて僕の改めた挨拶を聞いていたクレアさんは、今度は何故か顔を真っ赤に染め、更に人差し指を僕へ向けてあわあわ言い出した。
あれ?またパニックになっちゃった?
これは困ったな~と思いつつ、彼女の顔を僕も見つめ返してみる。…まつ毛長いな。
改めて、彼女は名をシャーロット・クレアと言い、王都の隣に広大な牧草地帯の領地を持つクレア男爵の一人娘だ。
更に彼女は、僕の魔法学校時代のクラスメイトで、実戦実習の時には一緒にパーティーを組んで、共に戦った仲間でもある。
ちなみに、強力な水・氷系魔法の使い手なので、おいたしてお仕置きされない様に注意が必要だ☆
僕自身がされた訳では無いけど、学生時代に僕達と一緒にパーティーを組んでいたルドルフが、彼女に氷漬けの刑に処されていたのを見た時は、背筋がぞぉ~っと寒くなったっけ。
…あいつ何仕出かしたんだろうね?
さて、脱線した話を戻すと、そんな、ある意味家族以外では一番長い時間近くに居た彼女でさえも、僕の変身を見破る事が出来なかったと言うのは普通に術者としては嬉しい。
とは言え、いつまでもこうして見つめあっている訳にもいかないので、僕は軽く周囲を確認すると…。
「シャド、お願い」
「ん。シャド、おねがいしゃれた」
クレアさんが声も出せない程驚いている事を良いことに(?)、僕は再度、シャドに変身を解いてくれる様に頼んだ。
「ん~~」
シャドが気合いを入れると、シャドが出てきた時に立ち上った様な、紫色のモクモクした煙りが現れ出でる。
そして現れた煙りは、ぐるぐるととぐろを巻くように僕の体を包み込んでいき…。
そんな一種異様な光景の中、僕が煙りに包まれながら、チラリとクレアさんの方を伺い見ると、ワナワナ震えながら、まだ僕の顔をみつめていた。
何だかその様子が心配になるレベルだったので、早いとこちゃちゃっと変身を解いてもらう事にする。
「う!わかった~」
正しく以心伝心なシャドは、僕の心を読むと、可愛いお返事と共に僕の体を紫色の煙りに包み込むスピードを上げていった。
僕の視界が紫色に染まる頃、クレアさんの何だかよく分からない悲鳴が聞こえた気がしたけど、僕は聞こえないフリを決め込んだのでした。まる!
本日も、此処までお読み頂きありがとうございました。
また明日も同じ時間に更新出来ると思いますので、宜しくお願い致します。