六十七話目 たまには冒険者らしい活動も②
4月1日の更新です。
皆さん嘘吐きましたか?
本日も宜しくお願い致します
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《side:パスカル・ダイキーリ》
マズイ事になった。
俺達【酒場の宴】の目の前には、サーペントタイガーと言う自分達よりも格上の魔物が、俺達を食い散らかそうと下なめずりしている。
口角を持ち上げて此方を睨み付ける様は、ニヤニヤと笑っている様にも見えた。
「ちっ」
思わず舌打ちが漏れる。
奴さんは、ジリジリと俺達と己との距離を詰めてきているが、こんな距離、サーペントタイガーからしてみたら一瞬で詰められる距離だ。
それをやらないって事は、俺達をおちょくってるか、怯える弱者をいたぶって楽しむクソ野郎かどちらかって事だな。
いや、この場合は寧ろ両方か?こっちは3人で、刃を向けられているのは向こうだ。それでも俺達に勝てるとふんで、ニヤニヤと笑っているのだろう。
まぁ、そんな事はどうだって良い。大事なのは、どう乗り切るか。だ。まさか王都へこいつを連れていく訳にはいかねぇ。
あそこは、王様が住む街でもあるが、俺達の大切な仲間達が暮らす場所でもある。
だから、いくら俺達が追い込まれているから。
助けを呼びたいから。と言って、安易に街までこいつを連れていくのだけは避けたかった。
「ブラン!魔力残量は幾つだ?」
「ファイアボール3発分…」
俺達のパーティ唯一の魔法使い。ブラン・リキューズがフードから顔を覗かせながら、俺の質問に短く答える。
「マジかよ!?お前の魔法で弾幕張って貰ってる隙に、ギルドカード使って誰か助けを呼ぼうと思ってたのに!」
俺の隣で同じ前衛として共に武器を抜いていた盗賊職のスコッチ・スキヴィは、ブランの返答に対してそう喚いた。喚きつつも敵から目を離さないのは、流石に長年冒険者をやっているだけある。
なるほど、そんな手もあったな…。
確かにギルドカードには通信機能がついている為、ギルドにでも連絡すれば誰かしら来てくれるかもしれない。
3発分の魔力しかないんじゃ弾幕こそ張れないが、ギルドカードの【緊急ボタン】を押す時間くらいは稼げる。
そうすれば、ギルド内にいる誰かしらがカードの探索機能を使って助けに来てくれる筈だ。
「ブラン、弾幕は無理だろうがーーー」
早速俺は、目の前の魔物から目を逸らさない様に気を配りながら、手短に今思いついた事を2人に話して聞かせた。
「分かった。」
「それくらいの時間なら、俺も加勢出来そうだな!」
「良しっ!ブラン、助けが来るまでの時間稼ぎの為に、1発分は残しておけよ!?スコッチ、魔力切れなんて起こすなよ?」
「分かってらぁ!」
さぁて、相手はBランクで此方はCランク。
ランクこそ1つしか違わないが、レベルで言えば遥か高みの存在だ。
何度も死線を越えてきた。
それでも何とか1人も欠ける事無く此処まできたと言う自負もある。
決して勝てずとも、俺達に負ける気は無かった。
「よしっ、いまっっっ!?」
では、行くぞ!!
とばかりに俺が声を張り上げた時。
《ギュルギュルギュル》
『グギャアア!??』
「「「は?」」」
突如、サーペントタイガーが蔓に体を巻き取られて悲鳴をあげた。
お気づきの事と思いますが、酒場の宴のメンバーの名前や名字は、お酒の名前です。
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日も同じ時間に更新出来ると思いますので、また宜しくお願い致します